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新従業員チャップくん、期待しています!

 ルテリアが自身のツテを使って連れて来た青年、チャップ。何でも彼の実家は食堂を営んでおり、ダンジョン探索者ギルドの職員になる前はその実家で料理の修行をしていたのだという。ダンジョン内の事故で両足を失ったというから若干不安だったのだが、魔法の義足があるから日常生活は問題ないとのこと。流石、ファンタジーの異世界である。


 チャップ青年は将来的には独立して自分の店を持ちたいとのことで、両足を失ってギルドを退職した後はその為に修行出来る店を探していたそうだ。文哉は当初、チェーン店でも修行になるのだろうかと不安だったが、試しに出してみた冷しきつねそばを食べ終わるや、彼は土下座せんばかりの勢いで深々と頭を下げ、何卒弟子にしてくださいと頼み込んできた。彼曰く、冷しきつねそばを食べて自分との隔絶したレベルの違いを知り、衝撃を受けると共に甚く感動したのだという。自分もいつかこんな斬新な料理を作ってみたい、自分が作った料理を皆に美味しいと言ってもらいたいと、そう熱弁していた。


 熱意溢れる青年、チャップは早速翌日から辻そばで働き始めてくれた。実家の食堂で働いていたというだけあって、彼の働きぶりは実に見事、異世界の流儀ではない辻そば式の運営形態にも難なく適応し、初日から接客に配膳にとテキパキ動いてくれた。

 また、将来は料理人希望と言うだけあって厨房の方にも頻繁に出入りし、少しの時間があれば文哉の仕事を観察し、あれこれと質問をしてきた。そういうチャップの意欲的な姿勢は文哉にとっても好ましく、いずれは仕事を覚えてもらって厨房にも立ってもらおうと思って懇切丁寧に指導している。今はまだそばを茹でても伸びたり生煮えだったりするのだが、もうしばらく修行すれば、かけそばくらいは任せられるようになるのではなかろうか。


 ホールについてはルテリアに一日の長があるが、調理に関してはやはりチャップの方が才能を感じさせてくれる。店内での役割分担がはっきりしてきたというところだろうか。


 彼もルテリア同様、通いで店に来ることになったのだが、3食まかないを付けるという話にはいたく喜んでいた。チャップによると、食費が浮くことよりも、辻そばの料理を食べて研究する機会を得られるのが嬉しいらしい。

 独立後にどのような形態の食堂を出すのかはまだ決まっていないのだが、どうなるにしろ、名代辻そばで学んだことを活かした店にしたいのだという。料理の基本となる出汁については特に興味を引かれているようで、昆布や鰹節だけでなく、野菜や動物の骨からも出汁が取れることを教えると、チャップは目を輝かせて文哉の言ったこと一言一句を洩らさずメモしていたくらいだ。

 彼が将来開く店はきっとそば屋ではないのだろう。この異世界にはそもそもそばが存在していないので仕方がないことだが、しかし彼が辻そばの魂を受け継ぎ、また、それを次代にも継承してくれれば幸いだ。


 ともかく、ルテリアと2人だけではそろそろ店を回すのもキツくなっていたので、このタイミングでチャップが加わってくれたことにより、店はまたスムーズに回るようになってきた。このままチャップが成長すればホールと厨房の両方で活躍出来る万能な従業員になってくれるだろう。看板娘ルテリアと並び立つチャップの姿が脳裏に浮かぶようで微笑ましい。

 ギフトが次のレベルに上がり、メニューにビールが追加されればそれでも苦しくなるかもしれないが、その時はもう1人従業員を雇ってもいいかもしれない。


 名代辻そば異世界店はまだまだ成長する。旧王都に名代辻そば在りと、そう言われる日もそう遠くはないだろう。

 若いチャップ同様、文哉もまだまだ意欲が衰えることはない。目指すは旧王都で一番愛される店だ。


※西村西からのお願い※


ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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