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暑い真夏に冷たいアイスが来たぞ!!

12月24日、新たに1件のレビューをいただきました。ありがとうございました!

 茹でた後に氷水で締められ、水気を切ってから上にかつお節を載せた、シンプルなほうれん草のおひたし。

 鮮やかな緑を湛えたほうれん草のおひたしに舌鼓を打ちながら、文哉は自室で晩酌を楽しんでいた。


「うん。美味いよ、シャオリンちゃん」


 緊張した面持ちのまま、文哉の横で待機していたシャオリンだが、その言葉を聞くと、嬉しそうに口元に微笑を浮かべる。


「ほうれん草の茹で具合も申し分なし。煮込み過ぎるとクタクタになって食感が死んでしまうところだけど、これはちゃんとシャキシャキ。でも、生煮えじゃなくてしっかり火は通ってる。この茹で具合を覚えておいて」


「はい!」


「今日もありがとうね、シャオリンちゃん。洗いものは俺がやっとくから、お風呂入っておいで」


「はい、ありがとうございます!」


 シャオリンは嬉しそうな顔のまま頭を下げると、まるでスキップでもしているかのように軽い足取りで風呂場に向かった。


 彼女が文哉の晩酌用おつまみを作るようになってから、かれこれ半月ほど。

 最初は食材を切るのもぎこちなくて、常人であれば確実に指先を切っているような手付きだったのだが、最近は慣れてきたこともあって、始めの頃ほどおぼつかない手付きを見せることはなくなった。

 それと、これは蛇足なのだが、彼女は魔族の中でも龍人族というとりわけ肉体が頑強な種族なので、並の包丁で硬い鱗に覆われた指先を傷つけることは出来ない。


 ルテリアは先ほど風呂を上がって、今は居間のテレビで文哉が趣味で揃えていたアニメのブルーレイを見ている。ベルサイユの宮殿で薔薇が咲くような華々しいアニメだ。フランス人の彼女によると、故郷が舞台のアニメは必見であるらしい。


 風呂上りのアイスを食べながら、じーっとアニメを見るルテリア。

 アイスといえば、だ。つい先日のこと、文哉のギフト『名代辻そば異世界店』のレベルが上がった。

 そう、今回のレベルアップで、遂に文哉の名代辻そば異世界店に、初のデザートメニュー、アイスが追加されたのだ。

 今回のレベルアップ、詳細は以下の通り。






***********************************


ギフト:名代辻そば異世界店レベル15の詳細


名代辻そばの店舗を召喚するギフト。

店舗の造形は夏川文哉が勤めていた店舗に準拠する。

店内は聖域化され、夏川文哉に対し敵意や悪意を抱く者は入ることが出来ない。

食材や備品は店内に常に補充され、尽きることはない。

最初は基本メニューであるかけそばともりそばの食材しかない。

来客が増えるごとにギフトのレベルが上がり、提供可能なメニューが増えていく。

神の厚意によって2階が追加されており、居住スペースとなっている。

心の中でギフト名を唱えることで店舗が召喚される。

召喚した店舗を撤去する場合もギフト名を唱える。


今回のレベルアップで追加されたメニュー:紅生姜アイス、クールッシュ冷やしたぬきそば


次のレベルアップ:来客20000人(現在来客1人達成)

次のレベルアップで追加されるメニュー:レモンサワー


************************************






 季節は夏真っ盛り。その暑い暑~い夏に、冷たいアイスのメニューが追加されたのだ。

 ひとつはちょっと変わり種ではあるが、そこまで外れてはいないカップのラクトアイス。

 もうひとつは変わり種も変わり種、甘くて冷たいアイスとそばを組み合わせた珍そばである。


 まず言及すべきは、真っ当なアイスであるところの紅生姜アイスだ。

 これは円柱形のカップに入っているもので、ベースはバニラアイスである。そこに粒状に刻まれた紅生姜を混ぜ込み、恐らくは紅生姜を漬けた汁も入れ込んでいる。それが証拠に、アイスはほんのりと桜色に色付いているのだ。

 アイス自体は甘さもくどくなくさっぱりとした味わい。しかしながらそこに紅生姜の刺激と食感が加わり、それがアクセントとなって何ともスプーンが進むようになっている。実に考えられたアイスだ。

 また、カップには文哉も知る有名なテレビゲーム『虎が如く』のキャラクターたちが描かれているのだが、これは恐らく、その『虎が如く』の最新作とコラボした商品なのだろう。ナンバリングが8となっているから、文哉の死後にリリースされたものと見て間違いない。文哉が地球で死ぬ前にテレビのコマーシャルで見た『虎が如く』のナンバリングは7だった筈だ。

 この紅生姜アイスには、お客様方がそばや丼を食べた後の活躍を期待している。


 さて、問題はもうひとつの新メニュー、クールッシュ冷やしたぬきそばだ。

 これは、名代辻そばの既存メニューである冷したぬきそばに、クールッシュというバニラアイスを付随したものとなる。ちなみにアイスのサイズは通常のものではなく、それよりも半分くらいのミニサイズだ。

 このクールッシュというアイスは棒やカップに入ったものではなく、スクリューキャップで閉じられたパックに入ったもので、飲み口からチューチューと吸うものとなっている。

 お客様が自らクールッシュをそばの器に絞り入れることで、このクールッシュ冷やしたぬきそばは完成するのだ。

 見た目は間違いなくゲテモノ。しかしながら味は良し。

 あくまでも地球のことではあるが、世の中には醤油アイスやみたらし風アイスといったものもある。バニラアイスというものは不思議なことに和風のしょっぱい味付けと調和するのだ。

 このように珍奇なものを考案するのは、間違いなく前世における文哉の悪友、珍そばマニア堂本修二の仕業だろうが、しかし確かに味は美味いのだ、このクールッシュ冷やしたぬきそばも戦力として期待すべきだろう。


 そして、である。次に追加されるメニュー、レモンサワーだ。

 ここに来て、まさかの新たなアルコール。それも居酒屋における定番中の定番、レモンサワーである。

 甲類焼酎を炭酸水で割り、そこにたっぷりとレモンを絞ったレモンサワー。真夏に飲めばさぞ爽快であろうが、レベルアップのことを考えれば、提供は秋か初冬のこととなるだろう。

 このレモンサワーなのだが、恐らくは厨房で作るのではなく、缶のものを提供する形になると、文哉はそう睨んでいる。

 何故なら、名代辻そばで提供されていたレモンサワーは、もれなく某有名メーカー製造の缶のものだったからだ。文哉の死後に厨房で作る生絞りレモンサワーなど提供されるようになっていれば別なのだろうが、まず缶と見て間違いない。

 文哉もこのレモンサワーをグビグビと喉を鳴らしながら飲むのが今から楽しみだ。


 またも珍そばが加わったものの、文哉の『名代辻そば異世界店』の戦力は確実に増強されつつある。

 お客様たちはこの夏、きっと冷たく甘いアイスを喜んでくれることだろう。


 来店したお客様方の笑顔を想像しながら、文哉はシャオリンが作ってくれたほうれん草のおひたしに舌鼓を打った。


という訳で、今年の年越しそばは期せずしてレベルアップ回となりました。

今年は拙作『名代辻そば異世界店』にも色々と動きがありました。

書籍版2巻の発売、コミックス1巻及び2巻の発売、更には次にくるライトノベル大賞へのノミネート。

名代辻そば異世界店の物語はこれからも続きます。

読者の皆様におかれましては、来年も引き続き拙作『名代辻そば異世界店』をご愛顧の程、何卒よろしくお願い致します。


それでは皆様、良いお年を。

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