転生者ジャルダーノ・ヴィンチェンホフとキツいウイスキー④
ヴェンガーロッド特務騎士隊に所属するようになってから10年。
ジャルダーノはその10年で数々の功績を打ち立てた。
イオク公爵家の裏切りに端を発する大粛清。教会勢力率いるクザン衆との暗闘。ウェンハイム皇国の侵略軍、その急先鋒たるガリウス辺境伯旗下の諸将の暗殺。国内に忍び込んだ他国密偵の排除。犯罪組織の壊滅。中でも最も力を入れていたのは、国内貴族の不正を暴く潜入任務だろうか。
ジャルダーノが成功させた任務は枚挙に暇がないほどなのだが、それだけ仕事に精力的だったということでもある。国内、国外を問わず、悪徳貴族や犯罪組織を壊滅させることに特に注力したのは、やはり彼らに苦しめられる市井の人々、特に子供たちを少しでも減らす為だ。
このアーレスもまた、やはり地球と同じように陽の当たる場所から日陰に追いやられた人たちに厳しい世界である。自分たちの目の届く場所に困窮している人たちがいるというのに、そこに手を差し伸べようという者が驚くほど少ない。
皆、見て見ぬふりをするのだ。今は自分のことだけで精一杯だから。他人を助ける余裕などない。自分には関係ないから。彼らを助けて何の得があるのか。多くはそんな理由だろう。ここらへんは地球とそう変わるものではない。
だからこそ、ジャルダーノが暗躍するのだ。日陰で苦しむ者たちが1人でも救われるように、日陰に追いやられる者たちが1人でも減るように、と。薄情な者ばかりではない、自分のような者がいたっていい、世の中そう捨てたものじゃない、そう思ってもらいたいのだ、と。
日々、様々な任務を精力的にこなしていくジャルダーノ。
先日は極秘裏に旧王都を訪れた国王の護衛任務に就き、その日のうちに王都へ帰還した国王一行と別れ、ジャルダーノは別の任務の為に旧王都に残った。
今回の任務は、不正を働く貴族の内定調査。その対象は、旧王都の北に領地を持つトミー・マフデン子爵である。
このマフデン子爵、以前から悪い噂の絶えぬ男で、下位貴族だというのに妙に金回りがいいともっぱらの評判なのだ。家門で商売をしている訳でもなく、観光地や鉱山のような領地の特色があったり、儲かる特産品を生産しているという訳でもないのに。
儲けのカラクリは、やはり不正だとのこと。領民に重税を課しておきながらその税をちょろまかして懐に収めたり、禁止されているウェンハイム皇国との貿易に密かに手を出したり、違法と分かりながら奴隷を買って囲うなど、領地では好き放題に振る舞っているのだという。
それでいて情報の隠蔽力には優れ、また、悪党なりに鼻も利くので逃げ足が速く、誰かに尻尾を掴ませるようなヘマをしない。同じ悪党から見れば鑑のような人物だと言えよう。
これまでジャルダーノが相手にしてきた悪党に比べれば些か小者ではあるのだが、それでも野放しにしてよい人物ではない。
それに、この人物については別の筋からも情報が入っている。驚くべきことに、アードヘット帝国が密かに情報を渡してきたのだ。
その情報によると、何でもトミー・マフデンというのは彼の生来の名ではなく、本名はリューリク・レベデフ。アードヘット帝国内のレベデフ伯爵家の当主だったのだが、何でもバーベリ伯爵という人に冤罪を被せて処刑するという事件があり、その冤罪事件において彼はバーベリ伯爵を陥れる企みに一役買っていたのだという。
この冤罪事件に関わった者たちはほぼほぼ処罰されたそうなのだが、レベデフ伯爵だけは調査の手が及ぶ前に家どころか家族も国も捨てて逃亡しており、このカテドラル王国においてトミー・マフデンと名を改め、入り婿という形ではあるが貴族に返り咲き、領地を得て子爵にまで上り詰めたとのこと。
普通、大国がこのような情報を他国に渡すということはない。が、今回は普通はやらないそれをやった。アードヘット帝国としては、それだけこのマフデン子爵に対して腸が煮えくり返る思いをしているということなのだろう。友好国の貴族を自分たちが裁くことは難しい。だから、恥とは自覚しつつもその裁きをカテドラル王国に託す、ということだ。
ジャルダーノの任務は、この情報の精査、及びトミー・マフデン子爵の余罪、その証拠を掴むこと。
マフデン子爵は下位貴族でありながら王都にも、そしてこの旧王都の貴族街にも屋敷を持ち、領地の屋敷ではなく、もっぱら王都か旧王都で過ごしているのだという。何でも、自分の領地であるにも関わらずそこを田舎臭いと嫌い、普段から華やかな都会こそが自分の居場所だと公言しているらしい。彼の妻、マフデン子爵夫人もすっかり夫の考え方に染まり、今では彼女までもが領地に帰らず王都や旧王都の屋敷で過ごしているのだそうだ。
この夫にしてこの妻あり、といったところか。マフデン子爵はあくまで入り婿、領地は彼女の生まれ故郷だというのに、嘆かわしいことである。
マフデン子爵とその周囲の悪評については枚挙に暇がないのだが、ともかく、ジャルダーノは今回、彼の旧王都別邸を調べる為、現地に残った。
こういう、金に並々ならぬ執着がある輩は何処かに必ず不正に関する詳細な帳面を残す。それは1ドルたりとも、いや、1コルたりとも取りこぼしなく懐に収め、どんぶり勘定で他の誰かに美味しい思いをさせたくないからだ。
そして、それが弱点であることも理解していて、決して余人に見られることのないよう秘匿を徹底する。
だが、こういうものを探り出すのは闇に潜む者たちの最も得意とするところ。
今のところ、王都の別邸、そして領地の本宅で不正に関する資料などは見つかっていない。これは同僚のヴェンガーロッド騎士が調べ上げたことなのでまず間違いないだろう。残っているのは旧王都の別宅だけ。
国王と別れた次の日の夜、ジャルダーノは早速、マフデン子爵の別邸に忍び込んだ。
この日、マフデン子爵は他の貴族とラ・ルグレイユというレストランで会食する予定だ。彼の行動パターンは把握しているが、会食の時は必ず帰宅が遅くなるし、権力を誇示するように護衛を何人も引き連れて行くので邸宅の警備も薄くなる。
彼が予定通り邸宅を出てラ・ルグレイユに向かったことを確認してから、ジャルダーノは邸宅に侵入。無論、門番が立っている正門から入るなどという愚は犯さない。邸宅を囲う柵に結界の魔導具が使われていないことは分かっているので、監視の目を盗んで裏口から柵を越えて敷地内に入り、壁を伝って2階廊下の窓を開けて室内に忍び込む。そこまで大きな邸宅ではなく、加えて今宵は子爵の外出に合わせて警備の数も減っているので廊下の巡回はなし。子爵の私室前に、あまりやる気のなさそうな警備兵が1人立っているだけだ。
2階の窓から廊下に侵入し、そのまま天井まで駆け上がり、子爵の部屋前に立つ警備兵に狙いを定める。
「ガバメント……」
ジャルダーノが小さく呟くと、今の今まで何も持っていなかった右掌にサイレンサーが装着された拳銃が現れた。コルト・ファイヤーアームズ社のM1911。コルト・ガバメントの名称で知られるオートマチック拳銃だ。
ジャルダーノが神から授かったギフト『マーダーライセンス』。
このギフトは、ジャルダーノが前世で使っていた仕事道具をこの異世界に召喚するものだ。
ジャルダーノは拳銃ひとつ取っても仕事の内容によって使い分けるのだが、このコルト・ガバメントは通常の拳銃ではなく、麻酔弾を撃ち込む改造拳銃である。
やる気なさそうに欠伸する警備兵の露出した首元に麻酔銃を撃ち込むジャルダーノ。
麻酔弾を喰らった警備兵は低い声で「う……ッ」と呻き、首元を触ったのだが、すぐさま麻酔薬が身体に回り、意識を失い倒れてしまう。
ジャルダーノは天井から降りて子爵の私室のドアに手をかける。が、ドアノブが回らない。
「チッ、やはり施錠しているか……」
コルト・ガバメントを消し、今度はピッキングツールを召喚する。地球の複雑怪奇な構造の鍵穴に比べれば、この異世界の単純な鍵穴など破るのは造作もないことだが、それでも手間は手間。舌打ちのひとつもしたくなるというものだ。
ほんの数秒カチャカチャとやって、問題なく鍵を開け、子爵の私室の中に入るジャルダーノ。そして、誰かに見つからぬよう、廊下で倒れている警備兵を室内に運び込み、部屋の隅の方に転がしておく。彼は麻酔薬が効いているので、無理矢理起こしでもしない限り、明日の朝まで夢の中だろう。
そして念の為、部屋の内側からまた施錠。
さて、改めて室内を観察する。
鍵付きの執務机に本棚、ベッド、小机を挟んでソファが2つ、そして執務机の後ろに金属製の大きな据え置き型金庫。
最も怪しいのが金庫。その次が執務机と本棚といったところか。
簡単なピッキングならば先の通りジャルダーノでも可能だが、複雑なロック機構を備える金庫を破るとなれば、これは本職の金庫破りでなければ難しい。
マフデン子爵の金庫、見れば錠前が2つ付いたダブルロック式のものらしいが、流石に鍵などはこの部屋に残されていないだろう。鼻が利く男なので、鍵を近くに置いていくような間抜けではない筈。今も本人が持ち歩いているに違いない。
だが、この金庫は恐らく侵入者対策のフェイクだろう。中に書類や金が入っていることはあるかもしれないが、恐らくはジャルダーノのような者に見つかって腹が痛む類のものではない。マフデン子爵が本当に隠しておきたいもの、その在処についてはあらかじめ当たりをつけてある。
事前に入手していたマフデン子爵邸の設計図があるのだが、その図面に妙な空間があるのだ。子爵の私室、その隣に存在する空間なのだが、そこへ入る為の出入口が何処にもなく、窓すらもなく、完全に意味のないデッドスペースになっていた。
間違いない、隠し部屋だ。分かり易い金庫や机ではなく、何かを隠すのならここしかない。図面を見てすぐ、ジャルダーノの勘がそう告げてきた。
このデッドスペース、位置的には部屋の本棚の裏である。
本棚を詳細に観察してみると、ほぼ全ての本が同じサイズで統一されているのに、案の定、背の低い、或いは背の高い本が何冊か紛れていた。それらの本を全て本棚から抜き取ると、仕掛けが作動して本棚が横の空きスペースにずれ、隠し部屋への入り口が露になる。
「古典的なものだな……」
一瞬、まるで貴族が存在した時代を描いたミステリー小説のようだなとジャルダーノは思ったのだが、ここは実際に貴族が存在する旧態然とした異世界。それを考えれば、このような仕掛けもさもありなんといったところか。
まあ、それはいいとして、ともかく露になった秘密の入り口を通って隠し部屋へ入る。
すると、広さにして2畳分くらいの小さな部屋、その中央に南京錠で施錠されただけの古めかしい、小さな金庫が置かれていた。
「あった、こいつだな……」
ややこしいダイヤルや異なる複数の鍵などは使われていない、シンプルな造りの金庫。仰々しさなどは欠片も感じないが、それだけに普段から使われているのだろうな、というある種の説得力を感じさせる。
「PSS……」
ここでまたピッキングツールを使うような面倒なことはしない。
ジャルダーノは消音拳銃、PSSを召喚する。
このPSSという拳銃、実は銃本体ではなく弾丸の方に消音機能が採用されており、サイレンサーがなくても音が響かない構造になっているのだ。装弾数は6発と少ないものの、正面切った戦闘に使う訳ではないので、ジャルダーノのような裏の世界の仕事人には重宝されている。
ジャルダーノは躊躇なく南京錠に弾丸を撃ち込んで破壊し、力業で金庫を開けた。
「ふむ……」
内部に収められていたのは、全て書類だ。金や宝石の類は一切ない。そういうものはきっと表の大きな金庫の中にあるのだろう。
ともかく、その書類を手に取り、今度はペンライトを召喚して内容を閲覧する。
「やはり裏帳簿か」
そこには、マフデン子爵が不正によって得た蓄財の内容がありありと記されていた。ご丁寧に子爵家の判まで押してある。重税、給料のピンハネ、密貿易。中でも特に見逃せないのが、ウェンハイム皇国貴族、ソグム・ウェンハイム・ガリウス辺境伯とのやり取りの記録。これは何と、カテドラル王国に来る前から続いているようで、最も古い記録だと、少なくとも15年前から情報を売り買いしているようだった。
ソグム・ウェンハイム・ガリウス辺境伯といえば、先王の兄にして侵略戦争の急先鋒。この男に対しては、カテドラル王国も戦時中に何度も煮え湯を飲まされている。
「こいつ、金の為に国まで売っていやがったか……」
ジャルダーノがこのアーレスに転生する前、ヴェンガーロッドの先達によって彼の国と内通していた者たちは随分と摘発された筈なのだが、こんな形でまだ出てくるとは。
物証としてこの書類は全て押収するのだが、それとは別に、不測の事態に備えて書類を読み込み、内容を頭に刻み付けていく。こういう複雑にして膨大な情報を記憶していくのもまた、裏の世界に生きる者にとって必須の技能である。
と、ジャルダーノが書類を読み込んでいる最中、不意に、
「全く! ジョナサンの奴は何処へ行ったのだ! 私が留守にするからと、警備をサボりおって! あんな奴はクビにしてやる!!」
という、憤慨した様子の男のダミ声がドアを越えて廊下の方から聞こえてきた。
間違いない。この声は屋敷の主、マフデン子爵のものだ。
まさか、こんなに早く戻って来るとは想定外だが、恐らくは会食に際し何か忘れものでもしたのだろう。独り言の内容から察するに、ジョナサンというのは先ほど麻酔銃で眠らせた警備兵に違いない。
鍵穴に鍵を挿しているのだろう、ドアからガチャガチャと音が聞こえる。
部屋に窓はあるものの、今からでは脱出も間に合わないし、無理に窓から外に出ると、表の警備兵に気付かれてしまう。そうなれば追手がかかることは必至だ。
ジャルダーノは咄嗟にペンライトを消して書類を懐に収めると、ガイ・フォークスのマスクを召喚して顔を隠す。
ジャルダーノがマスクで顔を隠すのとほぼ同時に、ガチャリと音を立てて鍵が開き、マフデン子爵が室内に入って来た。
「全く、給金分の仕事も出来んのか、あいつは! 私は金をドブに…………なッ! ジョナサン!?」
文句を言いながら入室したマフデン子爵だが、部屋の隅で倒れている警備兵を見つけたのだろう、驚いた声を上げる。
それと同時に隠し部屋から躍り出たジャルダーノは、驚愕するマフデン子爵の両肘、両膝の関節をPSSで正確に、しかし一瞬で撃ち抜いた。
「ぎゃッ!?」
明かりもついていない、月明かりだけが差し込む夜の闇の中、マフデン子爵はくぐもった声を上げてその場に倒れ込んだ。別に致命傷ではないが、これでしばらくは立ち上がることも出来ないだろう。
事前の調査で分かっていた情報の中に、マフデン子爵は『爆炎魔法』のギフトを使う、というものがあった。ダンジョンを探索したこともなく、ギフトを使う訓練もしたことのない男だと分かってはいるのだが、万が一にも抵抗されては厄介だ。彼にはこの場で殺されなかっただけマシと思ってもらうしかない。
「うぐうううぅ……ッ! な、何なのだ、一体……」
と、マフデン子爵が苦痛に悶える中、ジャルダーノは彼に歩み寄ってその頭部に銃口を突き付ける。
「動くな。そして喋るな。喋れば殺す」
そうは言うが、無論、殺しはしない。あくまで脅し文句だ。
裁きは法に則った形で。暗殺任務、或いはターゲットの生死を問わぬものならばまた別なのだが、今回の任務、ジャルダーノは彼を法的に裁く為の証拠集めをしているに過ぎない。法廷に立たせる為には、彼が生きていて口を利けなければならない。物的証拠が残っておらず、彼の口から語られねば明らかにならない余罪もある筈。殺せば本末転倒である。
「き……貴様、な、何も……ぎゃッ!!」
マフデン子爵の言葉の途中で、ジャルダーノは彼の手の甲を撃ち抜いた。
「喋るなと言った。次に余計なことを言えば心臓を貫く。分かったな? 分かったなら無言で頷け」
「…………ッ!」
激痛に涙を流し、無様に失禁しながら頷くマフデン子爵。
「俺が誰かは言えないが、身に覚えはあるだろう?」
マフデン子爵は明確な悪党だ。今日に到るまでの彼の栄華は、大なり小なり人を害することで得たものである。そのこと自体は、本人にも自覚がある筈。いや、自覚がないなどとは言わせない。それだけのことを、この男はしてきたのだ。
「わ……私には、何のことだか…………」
しかし、マフデン子爵は恐怖に震えながらも首を横に振って見せた。この期に及んでシラを切るこの神経、図太いと言うべきか、変に肝が据わっているとでも言うべきか。典型的な悪党なだけあって往生際が悪い。
ジャルダーノはその様子を鼻で笑ってから、口を開いてこう告げる。
「リューリク・レベデフ」
「!!」
ジャルダーノに言われた瞬間、驚愕に目を見開くマフデン子爵。
恐らくはまだ誰にもバレていないと思っていたのだろう、彼は明らかに狼狽したようで、今度は顔面にダラダラと脂汗を掻き始めた。
「従妹の夫の妹、だったか? アードヘット帝国からカテドラル王国の辺境伯家に嫁いでいたな。よくそんな細い細い繋がりを辿って、子爵まで返り咲いたものだ。流石の手腕だよ。人間というのは口八丁でここまでやれるものなのだな」
「な……何故、そのことを…………」
「一度死にでもしない限り、過去はいくらでも追いかけてくるぞ、トミー・マフデン子爵? お前は方々に恨みを買い過ぎた。今までは上手く逃げ果せてきたようだが、遂に罰せられる時が来たんだよ」
そう、ジャルダーノのように本当に死を経なければ。
言いながら、ジャルダーノは懐から先ほど押収した書類を1枚取り出し、彼に見せる。
「もう証拠は押さえた。まあ、もう内容も覚えたから、これがなくとも終わりだがな、お前は」
ジャルダーノがそう告げても、しかし子爵は何も言わない。
「………………」
「俺が部屋を出たら、後は助けを呼ぶなり好きにしろ。ただ、追手を差し向けて来るのならば殺すし、逃げようとしても無駄だ。この屋敷はすでに見張られている。もう何処にも逃げ場はないぞ。せいぜい今から覚悟を決めておくんだな、マフデン子爵」
言ってから、ジャルダーノは彼に背を向けて歩き出した。ここにもう用はない。必要なものは手に入れたし、後はこれを司直の手に渡すだけだ。
この時、ジャルダーノは気付いていなかった。最後の最後に詰めを誤ったことを。ジャルダーノの背に向けてマフデン子爵が醜悪な笑みを向けていたことを。
部屋を出る為、ジャルダーノが歩き始めたその瞬間である。
スーツの内側に入れていた書類がいきなり燃え上がり、ジャルダーノの懐で小爆発を起こした。
※西村西からのお願い※
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