幻想錬金術とお姉様
ファンタジー異世界貴族学園名物、婚約破棄風の書き出しから失礼します。
なお本文中はガールズラブ成分で進行し、あとがきの蛇足部分にTS要素が潜んでおります。
その要素が苦手な方には、回避をおすすめ致します。
あと主人公の口調のブレは、心理的な動きの表れと見ていただけると嬉しいです。
「神より頂いた才能を我が国の未来の為に磨くこの学園だが、今ここで言わねばならない事がある」
とある殿方が、よく通る声を出しながら演壇に立ちました。
本来ならば司会の教師の方か、学園長が立つべきであるはずの場所にです。
――――あと、才能についても少し触れておきましょう。
才能とはこの世界の知性を持つ全種族の人類が、神より授かる特別な力です。
満12歳で基本的に授かります。 が、その時に授かれない方も少数ですが存在します。
だからと言ってそれは神に認められていない命では決してありません。
気が付くと才能を得ていて、その才能は12歳で自動的に得られる才能より突出した素晴らしいものが多いので、羨まれます。
その才能を磨くのを民より率先してやってみせよう、才能を得られていない者は早く得られるよう助けると言うのも、学園の目的です――――
「ユウリツプル公爵家のオネイシアン嬢! 私の前に!」
我がオーコマルン国の王太子たるモーテンマオテ殿下が、この国の貴族の子供達が通うことになっている貴族学園にて、その学園一番の大きなイベントとなる卒業式で暴挙に出ました。
お姉s……いえ、オネイシアン様は王太子殿下の婚約者であり、ふたり並ぶとそれはもう眼福と呼んで良い光景でした。
特にオネイシアン様。
オネイシアン様が殿方であったならば……と嘆く女性があとを絶たないほどに凛々しいお方です。
高貴さがそのまま表れたような金髪にその実直さをそのまま表した様な真っ直ぐな髪質が素晴らしく、後ろ手にまとめて垂らした髪型はもう、まるで私達を虜にする芳香でも振り撒いているかの様で視線を釘付けにしてくる項もたまりません。
もちろんいつまででも見つめ続けて、息が続く限りずっとずっと深いところまで潜りたくなるような海を思わせるマリンブルーで切れ長の瞳だって最高です。
その美しい海の周りに咲き乱れる目の覚めるような、純粋無垢な白百合の園にも見える思わずため息がもれるきめ細かい白い肌。
そして美の女神様だって認めるであろう整った鼻梁にも見惚れます。
見惚れると言えば何度吸い付いても全く飽きない、どんな人間であろうと魅了される唇に、ほっそりとしていてそれが高潔な乙女ぶりを示すかの様に引き締まった顎もまたお美しい。
ああ、今は堂々と王太子殿下に応えて演壇へ登る姿を遠目からでしか拝見できませんが、少し目を閉じればほら。 ああ、あぁ……。
……ふう。 なんとか冷静になれました。
あのお姿は本当に凶器もかくやです。 視界におさめるだけで私の心はどこか遠い所へ連れ去られそうになるのは、何とかなりませんかね?
さっきもとても危険でしたし、今は想いに耽るべき時ではありませんものね。 反省反省。
………………すみません。 さきほどの妄想とは別の意味で、冷静になりきれていない私がいます。
なぜなら、オネイシアン様が王太子殿下と見詰め合っているからです。
さっきの態度から、オネイシアン様をわざわざ演壇へ呼び出して、生徒達の面前で貶める気なのでしょう。
そう思うと、手に持った特別製の扇子に力が入ります。
この扇子は周囲の狭い範囲に消音効果を生み出し、扇子自体を強化して壊れにくくした物。
これが無かったら、多分私の歯軋り音が周囲に漏れていた事でしょう。
……なぜそこまでオネイシアン様を想っているのに、飛び出さないのか。 ですか?
それは事前に言われていたから。
オネイシアン様から、何があっても大丈夫だから、見届けて欲しいと頼まれましたので。
この子爵家の三女と言う、ほぼ平民みたいな私ごときに、直接。 内密な話として。
それが無かったら、今まで錬金術で作ってきた作品を使ってオネイシアン様を拐い、この式を無かった事に致しますのに。
そう気持ちが昂っておりますので、演壇の下で何か騒いでいる小娘と、それを取り押さえている殿下の側近達なんて気にしている場合ではありません。
「私とユウリツプル公爵令嬢との婚約は、みな知っていると思う」
おや? いつもは家名で呼んでいなかったですのに。
この疑問は他の方々も抱かれたのでしょう。 不穏な空気が漂っております。
「だが実は、その婚約は公爵家公認による偽装であったと、ここで宣言する」
なんと!? これは驚くべき真実です。 この扇子が無かったら、奇声を周囲に聞かれていた事でしょう。
……あ、やっぱり私以外にも奇声を上げた令嬢がおりますね。
小さく「きゃ」だけで口を閉ざせたみたいで、絶叫するなんてトンだ失態にはならなくて済んだご令嬢が。
「ユウリツプル公爵家は代々才能でもないのに、同性から不思議と好意を持たれる事が多い家系なのは、みなも知っているだろう」
はい。 それはもう。 実体験をもってして。
他のご令嬢……だけでなく、苦笑混じりに頷く令息も多いですね。
これは令息がたの婚約者がオネイシアン様にお熱を上げて苦労したと見れば良いのでしょうか。
「その類稀な容姿でもって、外見だけで私に寄ってくるご令嬢を減らすのが目的だった」
なるほど。 それはそれは強力な選別方法です。
実際にお二人が並んで歩いていると、ご令嬢がたが凄い勢いで惹き付けられて、集まってきましたから。
しかもその割合はオネイシアン様が9で殿下が1。 オネイシアン様の圧勝。
「そして、それでも私に寄り付き、私の心を射止めて王太子妃の座を奪おうとする野心を持つ令嬢や家を炙り出す。 それが目的であった」
それはまあ、オネイシアン様はその目的を達成するには、とても好都合な人材ですからね。
「そして、そこまでする必要が有る理由が、真の婚約者が隣国の王女だからである」
なるほど。
国際問題にすぐなりますからね。 そりゃあ何としてでも、何とかしないとと思いますよね。
納得はします。
しますが、国の都合でお姉様……おっと。 オネイシアン様を都合よく使うなんて、私は絶対に許しません。
「その権力欲に憑りつかれた考え無し達はすでに全員捕捉が済んだので、この式の後に対応を行うので、覚悟しておくように」
ええ、ええ。 必要だから、仕方なく。
そんな言葉でお姉様を使うんじゃねえですよ。
実家の子爵領へ卒業式後に直ぐ様帰って、子供が作れなくなる薬でも作って、送りつけてやろうか。
「では、かなり時間を使ってしまったが、卒業式を始めよう」
…………あ、演壇の下の騒いでいた小娘は、女性の騎士に拘束されて退場処分となったみたいです。
~~~~~~
ちょっと良いですか?
私、なんだか現実が信じられません。
だって私、卒業式が終わったら子爵家へ帰る予定だったんですよ?
なのに今、どこに居ると思いますか?
これ、ユウリツプル公爵家の馬車です。
それにお姉様と一緒に乗って、ユウリツプル公爵領の領都へ向かっているんです。
なんだか帰る準備で荷物をまとめて、最終確認をしている所に女性騎士さんが訪ねてきて、王命ですとかって書類を渡されたのです。
その王命がなんと、
ユウリツプル公爵家のオネイシアンと婚約せよ
信じられますか? 普通信じられませんて。
公爵家と子爵家ですよ?
しかも同性ですよ?
なんでこんな事態に? と頭が混乱して仕方がないですよ?
とか言いながらお姉様の腕にしっかりと抱きついて、お姉様から香って来るうっとりする空気をこれでもかと吸っておりますが。
しかもその恥ずかしい姿をお姉様にしっかり悟られていて、苦笑なされている感覚もあるのですが……!
「口数が少ないが、どうした? いつものマリーらしくない」
「は、はははは、ハイ!スミマセン!!!」
「公爵領の領都まで、まだ一週間はあるんだから、緊張するのは早いぞ?」
「いやいやいやいや! そう言われましても!!」
このお姉様、口調が最高でしょう?
これはお姉様の才能。 【男前】の才能からです。
ビックリしますよね。 あの公爵家の血筋で、こんな同性キラーな才能。
公爵家の歴史でも、一番の逸材だったとお姉様から直接言われました。
「全く……そんなのは在学中に交わした秘密のキスなんかより、緊張しないだろうに」
「あ! アレは卑怯です! 一人放課後に残って錬金術の練習をしていたら、こっそりやって来て後ろから……っ!!」
「あの時のキミは可愛らしかったよ」
「~~~!! ~~~~?!? ~~~~~~っ!!!?」
羞恥に悶える私を見て、朗らかかつ美しく笑うお姉様。
卑怯です! 卑怯過ぎますよ、このお姉様は!!
「この【男前】お姉様が!」
「…………う~ん。 いつも思っているけど、同学年だったのになぜ私がお姉様なんだい?」
「お姉様にはお姉様が相応しいから、お姉様なんです!」
…………あー、はい。 白状します。
お姉様と、元々恋人です。 いえ、でした。
学園生活をしている間だけの、火遊びとして。 ちょっとした生活の刺激として。
お姉様にその約束で、卒業したらそれまでの関係として。
あの時も、お姉様とはそれを前提として、恋愛ごっこをしてみないか? と誘われました。
ええ、ええ。 ごっこでした。
でも、私は本気で恋人だったんです。
子爵の三女なんて存在が。 良くてそこらの平民の大きな商家へ嫁げれば良いくらいの、夢を持てない程度の私が。
在学中だけでも素敵な夢を見られるならと、本気になりましたよ。
本気で、それでいて大火傷しないよう、節度を持って。
許されていたのは、抱き締め会う事と軽い口付けと、手を繋いでお喋りする事だけでしたし。
その先は、絶対に許されませんでしたし、踏み込もうとすれば強く拒否されましたから。
拒否をされたら心の悲鳴がそれはもう酷くて、二度と踏み込まないと自分に誓った程でした。
…………あ~。 その辺の現実を思い起こしていたら、少し気が沈んで、代わりに確かめたい内容に踏み込む度胸が出てきました。
何て言うのでしょうね? お排泄物度胸とでも言うのでしょうか?
「ところで、なんでお姉様と私が婚約なんて事になったのですか?」
これです。 これを訊きたかったのです。 ずっと。
それを訊ねた結果、お姉様が軽く天を仰ぎました。
それから私に向かってこう言ったのです。
「元々、偽物の婚約でもらう報酬は、公爵家に隣接した国の直轄地を予定していたんだ」
これは衝撃です。 私は直轄地の代わりに差し出された、と。
いやでも、そんな大層なモノの代わりとするには、私の価値が高くつき過ぎます。
「理解できないって顔だね? 一応キミの子爵家へは、公爵家と王家の両方から謝礼としてお金を届ける事になっているから、問題は起きないよ」
いえいえ。 違いますって。
私の価値ですって。 まさか焦らしてます?
「うん、分かってるよ。 キミは、我が公爵家に必要な存在だと思ったから、キミを選んだ。 もちろん当主であるお父様から許可を頂いた上でね」
「家に、必要……ですか?」
今の私は納得半分、受け入れがたい気持ち半分です。
こう言うとなれば、つまり私の事を。
「そう。 キミが公言する【錬金術】とはまた違う特別な才能だと予測をつけて、囲い込みたかった。 つまりキミに好意を持っている訳ではないんだ。 本当に、ごめん」
…………やっぱりか。
言いづらく思って下さったのでしょうか? だからわざと、子爵家へお金を送るなんて、興味の無い話をしたのでしょうか?
それと、どうやらバレバレだったみたいですね。
私の才能は【幻想錬金術】で、普通の錬金術と比べて特殊なモノ。
素材から概念を抽出し、それを加工する。 なんとも幻想的な錬金術の才能。
実家からは子爵なんて立場の低さから、有用性がバレたら権力で囲われて、一生を働いて終わらされるぞと脅されていました。
なので放課後にこっそり錬金術の復習とか言って才能を磨いていたのです。 一緒に過ごすお姉様の才能は錬金術と関係無いし、まずバレないだろうと思っていたのですが。
見事にバレていた様ですね。
まあ生涯を使って愛し抜きたい人なので、バレたところでなんとも無いのですが。
「乙女心をひどく踏みにじる様な、最低な事をしている自覚があるよ。 ごめんなさい。 気が済むまで、何度も謝るから」
そう言って、深く私ごときに頭を下げるお姉様。
でも、でもなんですよ。 これが。
頭を下げるお姉様に向けて、私の気持ちを宣言してやりましょう。
「もう謝らないで下さいませ。 私にとっては、むしろお姉様と婚約者になれる事実の方が嬉しいのです。 心を踏みにじられた? そんなの関係ありません」
「でも……」
でも、なんですか?
「まさか、私がこの程度でショックを受けるとでも? お姉様への私の愛が、曇るとでも?」
「いや、でもね?」
なんだかお姉様が狼狽えておりますが、そんなの知りません。
「私がお姉様をお慕いしておりますの! そして私は、お姉様に全てを捧げる覚悟で嫁入りすると決めていますのよ? なのでお姉様は私を好きに使って下さいまし!!」
「あはは……愛が重いね? と言うかその口上、私より【男前】じゃないか」
「えっ!?」
お姉様より男前? そんなのあり得ませんわ!
だって私はお慕いしているお方の妻として……。
「……あ」
お姉様だって、女性。
もしかしたら、お姉様も。
「まあその辺は後で。 今のところは私の妻と堂々と名乗れる関係になった事を、純粋に喜んでくれたのが嬉しかった。 それで良いかな?」
これからの長い人生ですものね。
今は後回しにしても、問題はありませんわよね。 きっと。
「ええ! お姉様、これからも私を可愛がって下さいませ!!」
「…………んん~。 やっぱりお姉様が何とも。 せめて愛称でネーシャとかシャニーとか、呼んで欲しくもあるんだが」
「何を言っていますの! お姉様は、お姉様! 一緒の床で、お姉様を求める。 この、えもいわれぬ背徳感こそ魅力だと思いませんか?」
「いや、流石に毎回は……」
蛇足
才能
満12歳で神から授かる。
この授かった感覚が特別で、自分が12歳になったんだなと年齢を初めて知る平民も案外多いとか。
その才能に関係する能力が身に付きやすい。
多種多様な才能が存在し、いくら授かってもその才能を磨かなければ何も意味がない。
まれに満12歳で才能を授かれない者もいるが、それらは後で素晴らしい才能を授かるパターンが多い。
例外は才能が授かれなかったと腐ってなにもしなかった場合。
有名な後出し才能に【努力】が有る。 普通の才能の人より10倍以上早く、あらゆる能力が身に付く。
他には【好き物】が超有名。 【努力】ほど範囲は広く無いが、才能所持者が趣味とするものの範囲で、【努力】より更に10倍以上早く身に付く。 本当にズルいのが、多趣味な【好き物】 かなり広い範囲の能力が恐ろしいほど速く成長する一種の化け物化する。
特殊な才能
異才や鬼才と呼んでも構わない、マリーみたいな普通の才能とは少し違う名称を持つ才能。
目的へのアプローチに、通常の手段以外にも特殊な才能を持っている者だけが、その世界の常識から外れた道を用意されている様なモノ。
貴族学園
才能が授かれるのは基本12歳なので、13歳になる年の頭から貴族の子女に入学する義務がある。
卒業は16歳になる年で、この国の貴族の間では卒業をもって一人前の貴族として扱われる様になる風潮がある。
なので、問題を起こして退学なんてなったら、一人前になれなかった半端者として貴族の間でバカにされたりする。
マリー
マリーは愛称で正式にはマルローニェ。 元ネタは某錬金術ゲームの初代。 実際の外見は、2代目の方が近い。
子爵の三女。 特にお金を持っている家でもないので、自活するなら自領の平民向けの錬金術教師になれる程度だった。
だがユウリツプル公爵令嬢の目にとまり、口説かれたらあっさり完全陥落。
学園卒業後に公爵令嬢がお持ち帰りしてくれると聞けば、そりゃあもう挙動不審な変質者の出来上がり。
最終的には公爵令嬢との子供を10人産む位には愛が暴走を続けた。
当人は【幻想錬金術】と言う特殊な才能を授かっており、普通の錬金術では作れないモノも作れる。
幻想錬金術
普通の錬金術で回復ポーションを作りたければ、薬草の傷を治す効果を抽出して~なんでやるが、幻想錬金術は違う。
薬草の持つ“薬効”とか“回復効果”とかの概念を薬草から取り出し、水とかの媒体へその概念へ移せばポーションとなる。
効果を強めたければ“強い効果”や“強化”の概念を足してやればいい。
つまり男性の特徴となる物を採取して“男性”の概念を抽出、他から“変身”の概念を持ってきて混ぜ合わせれば、男性化薬の完成となる。
性別の特徴の採取と言っても、ナニを切り取るヤベー話じゃなくて、ソレから出てくるネバネバした物とかが対象。
女性化薬も同様に作れる。
なんだったら、バストサイズや形状を変化させる薬だって、その概念を抽出出来れば問題なく作れる。
マリーもオネイシアン以上に胸を大きくして魅了してみせたが「手の平にぴったりおさまる大きさも可愛らしくて好みだった」と言われたので、泣く泣く元の大きさに戻している。
一番ヤバそうな概念抽出方法は、音楽記号が書かれた紙。
《とても強く》とか《だんだん強く》とかで効果を強化する概念が採れるし、逆に《とても弱く》とかなら弱体化効果を引き出せる。
最悪小節の区切り線だけで《区切る》が抽出出来れば、《命》と《区切る》の概念を混ぜてしまえば即死アイテムさえ作れるかもってなモンで。
無理でも《終わり》の記号があるし。
マリーの扇子
便利な概念を色々入れた、丈夫な万能扇子のはずだった。
卒業式開始前の演説でオネイシアンが悲しい結末とならずに済んでほっとして、手にこもった力をゆるめたところ、扇子から悲鳴が上がった。
なんかギシギシ言っていて、扇子の開閉もぎこちない。
開閉で一番負担が大きい止め金も、壊れかけていた。 南無。
オネイシアン・ユウリツプル
ユウリツプル公爵の次女オネイシアン。 百合ップルのお姉様。 俗に言うイケメン系女子。
ユウリツプル公爵家は代々、無暗矢鱈と同性にモテる血筋。
その血を悪用して公爵家の悲願が達成出来るかも知れない、マリーをモノにした。
偽装だとしても王族から婚約解消された手前、経歴に無視できない大きな傷を持つため本家から飛び出し、公爵家から男爵位をもらい、分家としてその男爵領で領主をして過ごす。
過ごす間に領地の発展で子爵、マリーが大功績をあげて伯爵へ出世した。
本人もマリーとの間に2人子供を産んでいる。
公爵家の悲願
同性にモテすぎ問題の解決。
同性にいくら好かれても、子供が出来なきゃ家が続かないので。
それの一時的解決として、オネイシアンはマリーに性転換薬を作ってもらう気でいた。
が、一時的な解決ではなく、完全な解決法をマリーが示した。
公爵家悲願の完全解決
マリーとオネイシアンが婚姻を結んだ年に、永続的な性転換薬が完成。
マリーとオネイシアンの夫婦生活の刺激として、3年位はそれで良かったが、マンネリ。 ついでにイチイチ薬を作るのも手間。
なので男性であり女性でもある、両方の性別の特徴を備えた、両性になれる薬を作り出す。
男女のどっちに好かれようが、子供を産める第三の性別が誕生した瞬間である。
これを知った公爵家は大興奮。
悩みを抱える公爵家は喜んで手を出した。
公爵家秘蔵の超厄物
オネイシアンの実家に、マリーが挨拶しに来た時に置いていった土産たち。
《とても沢山入る》《空気みたいに軽い》《丈夫で長持ち》の概念を強化しまくってブチ込んだ運搬袋とか。
《綺麗になる》とか《綺麗にする》とか《いつも綺麗なまま》とかの概念を強化された掃除・洗濯用の道具とか。
《毒抜き》《病気知らず》《元気になる》の概念を詰めた水瓶とか。
世に出したら本気でヤベーブツが盛り沢山。
マリー達にも、屋敷から絶対に出すなと厳命した。
なお出すなとは言ったが使うなとは言っていないので、両方の屋敷では部外者には絶対秘密にして、とても便利に使われている。
第三の性別
遺伝子的に与える影響はかなり強いようで、親の片方が両性なら子供は7割で両性となる。
両方の親が両性なら、間違いなく両性の子供が産まれる。
なお男性を素体とする両性の場合は体格に問題があるのか、出産の行為に適性が悪く出産時に高い死亡リスクを伴うのが報告されている。
両性が世に生まれてから20年。
気付けばユウリツプル公爵領の貴族も含めた領民はほぼ全て両性となり、国内の違う領地でも性別の割合で両性がおよそ2割になるほど、浸透してきている。
他国にもわずかだが、両性がぽつぽつと産まれるようになってきているとか。
オネイシアンの領地
他の場所では居場所の無い同性愛者が、公爵家の事情もあって助けてくれる(居場所がある)かも知れないとして、集まって出来た訳アリ村が有るだけの領地だった。
そこを実験場ーーもちろんキチンと説明して協力を求めた上でーーにして、公爵家悲願の達成を目指していた。
男性化薬を作るには、マリーもオネイシアンも女性なので、必ず男性の協力が必要となる。 そう言った意味でも、協力をお願いする必要があった。
最初の性転換薬でも満足感する住民が居たが、やはり本命の両性化薬は強かった。
元々の外見に極めて近い状態で子供を産める幸せは、性転換より強い魅力がある様だ。
ちなみに村の発展は、ほぼマリーの力。
幻想錬金術で都合の良い作物になるよう種を加工した。
だがマリーに管理能力はほぼ無いので、管理運営は間違いなくオネイシアンの能力があってこそ。
オーコマルン国モーテンマオテ王太子
モテモテでOh困る~ん。
なお実際はオネイシアンの方が女性にモテており、悲しい思いをしていた模様。
【運営】の才能を得ており、そりゃあもう国内の様々な所から期待された名君候補であるのが、救い。
本当の婚約者である隣国の王女とは恙無く結ばれ、両国とのより良い結び付きを得て、交流が増えた結果新しい技術開発などに繋がり、国はより発展した。
王女とは良い戦友として、生涯をともにした。
恋はせずとも、ちゃんとした愛は婚姻後に発生した様子。
演壇の下にいた小娘
最後の最後まで、王太子の正妃の立場に意欲を見せた男爵令嬢の女生徒。
オネイシアンに虐められたと、あの手この手で王太子に訴え続けたヒロイン気取りのお花畑。
もちろん裏を取り、小娘の虚言だと見抜かれている。
ーー調査の途中、むしろオネイシアンに虐められたいと熱く願うご令嬢が思ったより出てきたと、調査した者は口の端を引きつらせて語っていた。
才能は【主役】で、役なんだから普通は芝居の演技の主役だと思うだろうに、なぜか人生の主役になる才能だと思い込んだ模様。
この小娘は嘘で公爵令嬢……ひいては公爵を貶めようとした事実で不敬罪。 すなわち死罪。
男爵も家としての責任で罰金刑。 払い終えるまでの数十年、小娘への悪態と共に平民と変わらない生活を続ける。
王太子の側近達
順風満帆。
王太子の側近として、時には王太子を支え時には足りない王太子の考え方を補い、時には暴走しかける王太子を叱って止める良き側近を勤めあげる。
王太子が王になっても変わらぬ忠誠を捧げ続ける。
その忠臣っぷりから、一部界隈で誤解されるのはお約束。
マリーとオネイシアンの子供達
二人は家の維持に残し、一人はユウリツプル本家へ。 もう一人、マリーの実家へ。 それ以外のは主にユウリツプル公爵の分家や市井へ。
それぞれキチンと納得の上で、しかも満足のいく生を送ったらしい。
ユウリツプル本家へ嫁いだ子の産んだ子供が、王家の婚約者に選ばれる。
理由は両性の公爵家の人間だと、全部の性別から慕われるので。
その子供が王家に入れば、全方位から好かれて支持されて、国が磐石になるだろうと画策しての事だった。
卒業後に公爵家へ向かう馬車に乗る御者や従者達
そりゃあもう、色々と複雑な状況だってのに、無駄にラブラブオーラと極大覚悟オーラを放出する主人公に大困惑。
マジでどう扱えば良いのやら。
つーかトンでもねーお嬢様を捕まえてきて、何してくれてんのよウチのお姫様も。
と、主人一族の娘+1を連れて領地へ戻るまで、あらゆるモノを持て余していたそうな。