068 神官アウラの救済
フェルディナントが去った後、兄妹はギルドの立ち上げについてアウラと具体的な話をした。
王都に前例がない以上慎重に事を運ばなければならないらしく、兄妹もそれを承知した上でおおよその条件はのむつもりでいた。
まずはギルドを作る、それが新たなスタートとなる。
「長いこと付き合わせてしまってすいませんでした」
丁寧に頭を下げるアウラに対し、ライアスは戸惑うように首を横に振った。
「いや、むしろ希望を通してくれてありがとう、なんだが」
アウラが顔を上げ、改めて兄妹とイリューアの顔を見やる。
「おさらいさせていただきますが、あなた方は王都に属すギルトとして日々起こる課題や問題への解決に乗り出してくださる。それでよいのですね?」
ライアスが応じる。
「ああ。ただ、誰がやるか、どのようにやるかはこっちで決めさせてほしい」
アウラは穏やかに笑い、そして頷いた。
「道徳的に適う範囲で、それを容認しましょう。それと、先ほどフェルディナントが話していたように、当面の間は軍人としての報酬としては除外され、より少ない傭兵としての手当てとなってしまうこと、これも良いでしょうか?」
「……報酬ってそんなに違うのか?」
やや訝しげに腕組みをしてライアスは尋ねた。
「これは……あまり大きな声では言えませんが、傭兵としての手当ては軍人の半分程度です」
「はんぶん……」
申し訳なさそうにアウラが言うと、フライアが切なそうに眉尻を下げた。
ライアスも不満そうだが、気持ちを切り替えるように意思を口にした。
「そうか……でも、いい。ちょっと、自分で思ったようにやってみたい」
フライアもうん、と頷く。それからライアスは気になっていたことを問いかけた。
「あと、アウラさん。さっきフライアに確認したってのは?」
するとアウラはやや決まりが悪そうな笑顔を見せた。
「はい、アヴァランから聞きました。あなた方は不思議な力を持っていて、兄妹で力を持ち合わせている、と。どうやら、アヴァランはあなた方に興味を持っているようですね」
その説明に兄妹はやっぱりそうか、と顔を見合わせる。
自分たち兄妹が互いに憑依できることを勇者に知られ、それがアウラにも伝わっていたらしい。勇者に口止めをしていた兄妹は憮然とする。
「んー……、なんとも複雑な気持ちだな。あんまり広められたくはなかったけど。まぁ、どっちにしてもあれか、登録にはちゃんと身分を明かさなきゃいけないんだっけ?」
「ふふ、そういうことですね」
不満そうにしながら渋々納得するライアス。その様子にアウラが表情をほころばせ、フライアも諦めるように頷く。
「仕方ないよね」
「じゃあ、そういうわけだ、よろしく頼む」
それに応えるようにライアスも頷く。
すると兄妹に続くように、イリューアも甲冑を鳴らして勢いよく前に歩み出た。
「私からも、よろしくお願いいたします!」
アウラに向かって深々と頭を下げる。
不安そうに成り行きを見守っていたイリューアも声を上げたことで、アウラはホッとするように表情を緩めた。
「よかった……。では、そうなるとギルドとしてとどまるための場所が必要ということですよね?」
その問いかけにライアスは困ったように頭を掻く。
「あ、ああ。あいにく、俺たちは家もないからな。倉庫に使っていたような小部屋でもいい」
アウラが穏やかに笑ってみせる。
「はい、最初は不便をおかけすると思いますが、少しの間、それでご辛抱をしてもらえれば」
「助かる。俺ら二人は当面そこで寝泊りできればとりあえずいいからな」
胸をなでおろすライアスを見て、アウラは少し可笑しそうに言った。
「ええ。……そこまで欲を求めない方も初めてかもしれません」
王都を治める神官ともなれば、欲深い人間と接する機会も多いのだろう。
ライアスはううん、と考え込むように顎に手を当てる。
「最初のひどさに慣れたからかもしれないな。さすがにもう野盗に怯えながら生活するのは勘弁だけど」
シェラタンの郊外にぽつん、と建てられた小屋を思い出す。フライアもうんうん、と頷いた。
そんな兄妹をアウラは改めて見やり、目を細めた。
「そうでしたね。では皆さん。これから、よろしくお願いいたします」




