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ブラザーズアローン ~世界に選ばれざる《独り》の兄妹~  作者: flyas
第三章 覚悟を決めた先で
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061 海に浮かぶ都

 魔法の都アルニラム。

 

 そこはエレメントの使い手が集う魔法都市である。

 周囲を海に囲まれた島の都で、半鎖国的な体制で独自の文化を浸透させてきた。エレメント使いという神秘的な力に心魅入られた者たちがこぞってこの島へと渡ってくるという。


 その一方で来訪者には寛容で、魔法のみならず観光地としての活動にも力を入れているようだ。魔法で(こしら)えた独特のモニュメントが各地で見られる。


 ノースライフ山脈での戦いを命からがら切り抜けた兄妹は、その日クルサを出向する最後の船に乗り込み、イリューアと共にアルニラムへとたどり着いた。


 先日までの都間争いとは無縁の、穏やかな夜の光景を目の当たりにした一行は、変装のために入れ替えていた着衣をもとに戻し、疲弊した身体を休めるための宿を求めた。


 街中には魔法使いの三角帽子や、パンプキンヘッドを模ったバルーンが浮かび、独特な形状の照明がそれを明るく照らし出している。薄く発光したオブジェが街の至るところに飾られていて、街灯と共に夜の街並みを幻想的に演出している。


 一行はそんな街の様子に舌を巻きながら歩き、なんとかその日の寝床を確保することに成功。宿の受付で無事二部屋の鍵を受け取った。


「はあぁ~、長い一日だった……。よくまぁ、生きて都に戻ってこれたもんだぜ」


 ライアスは深々と安堵のため息を吐いた。


「あの、ライアスさん、部屋の割り当てはどのように?」


 イリューアが問いかける。部屋は小さな一人部屋と大きな二人部屋の二部屋を取っていた。


「んあ? そりゃ、お前、一人がいいんだろ? 大きい二人部屋をもらうぞ」


 ライアスの言葉にフライアもうん、と頷く。


「あ、ああ、よかった……。お気遣い、ありがとうございます」


 イリューアはホッと胸を撫でおろした。


「明日は船で待ち合わせでいいか? それとも、明日一緒に散策するか?」


 兄妹は行くあてのないイリューアを、一旦故郷である緑の都に連れていくことを考えていた。緑の都シェラタン行きの船は翌日の午後二時にアルニラムを出航する。

 ライアスの問いかけに対しイリューアは俯いて黙り込み、やがて遠慮がちに口を開いた。


「……いえ、少し一人で考えても良いですか?」


 その返答にライアスが頷く。


「ああ、全然。俺たちは午後の二時……だっけ? シェラタン行きの船に乗るからな。一緒に渡る決心がついてたらそれに乗るぞ」


 まだ不確定だが、エラセドにも港はあるらしく、この都から渡れる可能性もある。そのまま帰還されるのはあまり面白くないが、彼女には選択を残してあげることにした。


「……はい。少し考えさせてください。では、お疲れさまでした」


 そう言うとイリューアは廊下を進み、静かに一人部屋へと入っていった。

 ライアスは自分の部屋の取っ手に手をかけながら、その後ろ姿をひっそりと見送った。


「……ちょっとは信頼してもらえたのかな?」


 兄の言葉にフライアが小首を傾げる。


「すごく繊細、みたい」

「俺らが言うのもなんだけど。なんか、すんごい気高く振る舞いながら、危うい奴なんだな」


 誇り高いからこそ、その心は傷付きやすいのかもしれない。ライアスは呟くように言って部屋の扉を開いた。




 室内に入るや否やフライアがぼふっ、とベッドに身体を埋めた。うつ伏せのまま気持ちよさそうにため息を吐く。


「ん~~……このまま寝れそ……」

「ああぁ……。さすがに疲れたな。全身がいてぇ……」


 ライアスも倒れこむようにベッドに身体を預ける。



 クルサの奇襲作戦に参加してからアルニラムにたどり着くまで、戦いと緊張の連続だった。兄妹はベッドに身体を預けたまま、しばしの間安息を味わう。


「はぁ~あ……」


 やがてライアスがゴロリと仰向けになり、天井を眺めながら口を開いた。


「それにしても、結局今日はなんだったんだ? 今はエラセド出身のイリューアといるけど?」


 その言葉にフライアも頷く。


「もともとアトリアにいた」


 その不可思議な一日にライアスが首をひねる。


「なんでねじれたんだ? アトリアに協力しようと思って、エラセドと戦って。でもイリューアと出会って……。あいつを見る限りエラセドが絶対悪、ってわけでもなさそうなんだよな」


 どちらも悪ではないとするならば、戦いは何故起こってしまうのだろう。

 フライアも戦いの理由に思いを巡らせる。


「何も言ってなかったけど」


 ライアスは今日の戦いを改めて思い起こした。


「エラセドの連中はアカデミーがどうとかって言ってたっけ?」

「う~ん……」


 フライアが返事ともつかない唸り声を返す。


「ドリューが嘘ついてるとも思えないけど、あいつもあの人数相手じゃ、無茶な作戦だったもんだよなぁ」

「…………」

「おかげで俺たちがえらい目に遭って、イリューアに会って、だからなぁ…………っておい」


 反応がないことに気付いたライアスが身体を起こすと、フライアはブーツすら脱ぐことなく、うつ伏せのまま眠りこけていた。


「おーい、せめて寝支度してからにしろって。起きろって」


 己の覚悟を試したこととはいえ、争いに身を投じ、戦いとそれにまつわる不条理な展開に疲弊しきったライアスとフライア。


 争い戦うその理由に疑問を抱きつつ、あまりにも慌しすぎる兄妹の一日が幕を下ろした。


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