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ブラザーズアローン ~世界に選ばれざる《独り》の兄妹~  作者: flyas
第二章 シェラタンの外へ
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047 再びドリューを探して

 翌日、兄妹はまたクルサのミッション案内所に訪れた。


 既に多くの冒険者が集っていたが、一昨日の防衛戦の時のような騒然とした雰囲気はない。エラセドが占拠するキャンプ地への突入を前にして、ミッション掲示板には通常の案件が並んでいるし、集まった冒険者たちも平静そのものだ。


「そりゃあ、奇襲を仕掛けるってのに、ミッションで公開してるわけもないか」

「大きな声で言わないほうが……」


 思ったことをそのまま口にする兄の袖をフライアが引っ張る。

 ライアスは「おっと」と口をつぐみ、それから声を潜めて言葉を続けた。


「……それで、奇襲するって言ってもそれなりに人はいるだろ? どうやって募集するつもりなんだ? いつからって言ってたっけ?」


 フライアが人差し指を顎に当て、昨日の会話を思い出す。


「えっと……明日の朝五時」

「それなら、作戦を指示するにも何も今日しかないよなぁ。どこで受け付けるんだ?」


 ライアスが案内所を見回すも当てにできそうな人はいない。

 兄妹は困ったように顔を見合わせる。昨日ドリューから説明を受けた時に作戦の詳細も確認しておけばよかった。


「……あきらめる?」


 ボソッと呟く妹に対し、ライアスは両手を広げやれやれとジェスチャーしてみせた。


「集合場所がわからないからっていう理由で撤退するのもどうだ? 只々情けねえじゃねえかよ」


 昨晩あれだけの覚悟をしたあとで簡単に引き返すわけにはいかない。

 だが、冒険者たちの様子を窺ってみるも、皆何事もなかったかのように通常ミッションの受注手続きを行っている。兄妹は途方に暮れてしまった。


 しばらく案内所の隅っこでどうしたものかと立ち尽くし、ぼうっと行き交う人々を眺めた。ライアスは腕組みしたまま小さく息を吐いた。


「本当にクルサは表向き奇襲することを隠し通そうとしてるみたいだよな。けど、奇襲だろ? どこからかエラセドの隙を突けるところを探して、そこに何人か伏兵を潜ませたりするわけだろ。いったいどこに隠して、いつ動きはじめるんだ?」


 周囲に聞こえないよう小さく呟くように言った。

 するとフライアは「そういえば」と懐からメモ帳を取り出した。そしてミッション掲示板とメモ帳を交互に見る。


「えーと……、やっぱりないみたい」

「何が?」


 妹に続いてライアスもミッション掲示板に目を向ける。

 モンスター討伐に資源の採集ミッション、市民のお手伝いといった雑務的なものまで、それなりに多くの内容が張り出されている。

 フライアは兄にメモ帳を開いて見せた。


「これ。丸付けたとこ」


 メモ帳には不器用な言葉で途切れ途切れ、覚え書きがされていた。

 アウトプットが苦手な妹の暗号のようなメモを、兄のライアスが解読していく。


「なになに……メモにあるのが山岳トロールの退治、鉱山調査、クルサキノコの採集依頼、エラセド兵見張り調査、に丸が付いていて。で……今掲示板にでているのは岩石砕きの巨大蟹の討伐とアトリアに続く街道のパトロール、屋台向けの海鮮素材の調達、と」


 言わんとすることに気付いたライアスがうむと頷く。


「要は……エラセドに近いところへ行くミッションがばっさりなくなっていると。これはいつの話だ?」


 するとフライアは珍しく自信ありげな笑みを浮かべた。


「おとといの戦いの前。ミッション、中止してたでしょ?」


 エラセドの侵攻を食い止める防衛戦の時、ミッション掲示板には『非常事態につき、受付中止』という張り紙がされていた。

 そのことをライアスもおぼろげに思い出す。


「あ、ああ……そうだったかな」

「してたの。中止の張り紙の下にこれ、書いてあったの」


 メモ帳に記してあるミッションは、張り紙の後ろに掲示されていたものをフライアが書き留めたものだった。

 ライアスがなるほど、と手を打つ。


「……ほう! じゃあこれらはエラセドと全面的に衝突するまではあったわけだ。となると、やっぱり掲示板を通しても、一般の冒険者にはエラセドに接近してほしくないわけだな」


 そこまで気付いてから、あれ? と言葉を止める。


「……って、たぶん、今の状況じゃ当たり前な気もするけどな」

「……うん」


 兄妹は揃って首を横に振った。


 キャンプ地への奇襲に関わらず、エラセドに攻め込まれた時点でそういう配慮がされて当然なことに気が付く。自信ありげに発見を披露したフライアは途端に赤面して俯いた。ライアスが切り替えよう、と口を開く。


「なら、ちょっと外に出てみるか?」


 思えばこの二日間、自分たちは一度も町の外に出ていない。

 クルサに入った時はアトリアからの一本道を辿ってきただけだし、町の周囲の様子はまったくと言っていいほど把握できていない。


 兄妹は頷き合い、案内所を後にした。


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