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ブラザーズアローン ~世界に選ばれざる《独り》の兄妹~  作者: flyas
第二章 シェラタンの外へ
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024 勇者との力試し

 二人がかりでどこまで通用するのか?

 旅立つ前からずっと感じていた違和感と勇者の誘いに駆られて、兄妹はアヴァランと対峙する覚悟を決めた。


 兄妹にとっての「二人がかり」は他の人たちとは少し違う。これまで二人はその力に幾度となく救われてきた。この世界で唯一、ライアスとフライアだけが行使できる、誰にも真似ができない「二人だけの二人がかり」だ。




 言われた通り勇者であるアヴァランの部屋を訪れた兄妹は、すぐさま中庭へと案内された。必ず来る、と確信でもしていたかのようだった。


「よく来てくれたな、まずはその勇気を讃える。心配するな。これはどこにでもある練習用の剣。聖剣で打ち倒したりはしないさ」


 確かに、地面を突くアヴァランの剣からはコンコン、と鈍い音がする。彼の一言では納得できず、ライアスは目を凝らしてその剣を見つめたが、その鈍い光沢はシェラタンでも見覚えがある。


「それは……ブロードソード?」

「おう。青銅の、どこでも出回っている安価なやつだ」


 そこまでを確認して、宮殿の中庭でライアスとアヴァランは対峙する。

 少し距離を取り、腰から剣を構えると、アヴァランの嬉しそうな顔が見えた。


「……本当に、試していいんだな?」

「ああ。全力で構わない。だが……妹は、どうしたんだい?」


 そう言ってチラリと辺りを確認する。しかしもちろんフライアの姿はない。


「陰で見てるさ。痛い目には遭いたくないって」


 噓ではなかった。陰で見ているというのも痛い目に遭わずにすむというのも、兄に憑依したフライアからすれば本当のことだ。

 アヴァランは少し不思議そうな顔をしたが、やがて「そうか」と言い、剣を構えた。


「では、いざ参る!」

「お、おう!」




 その重厚な鎧姿とは裏腹に、勇者の攻撃は速かった。


 地面を蹴るや否や剣が目の前に迫り、ライアスは慌てて身を翻す。まるで一陣の疾風だ。躱したかと思えば勇者は身体を捻りすぐさまライアスに襲い掛かる。

 体勢を崩し「避けられない」と思ったその刹那、氷壁が現れ勇者の進路を遮断、行動を遮られたアヴァランはステップを踏むように退いた。


(いいぞ! 裏を取る!)


 その隙に体勢を整えたライアスが勇者に突進。ほぼ同時に氷弾が放たれる。剣がアヴァランの顔を僅かに掠めた。

 アヴァランがバックステップで距離をとる。詠唱なく発動された氷魔法に面食らったのか、首を傾げると気合いを入れなおすように再び剣を構えた。


「ほうっ! 面白い……!」


 一瞬、白い歯を見せたアヴァランだが兄妹はそんなことを気にしない。もう一度仕切り直しだ、と二人でまた息を合わせる。


(いいよっ!)

(よし、今の形で……!)

「ハッッ!!」




(あ、あれ?)


 だがその後、兄妹の奇襲が徐々に通用しなくなる。虚をついて発動したはずの魔法がいなされ、二人がかりで攻撃を増やしているのに有利が取れない。

 剣技においては明らかにライアスよりアヴァランの方が上だ。それを補い、隙を突くためにフライアが援護するのにそれすら対応される。


「そうらっ!」


 なぜだ? 散々翻弄したはずで体力も奪ったはずなのに身のこなしもまだ軽い。またライアスの剣が空を切る。

 兄妹で、手を抜いていないことはわかっている。なのに当たらない。戸惑いと焦りで脂汗が零れ始めた。


 戦いはジリ貧状態に陥り、兄妹は段々と追い詰められていく。


「閃光剣!」


 アヴァランが剣を払うと同時に眩い光が閃き、恐るべき速さでライアスの眼前に迫った。

 身体を地面に放り出し、転げるようにして間一髪で直撃を避ける。


(あっぶね。今の、光属性か?)

(こんなの、見たことない……!)


 あり得ない攻撃に兄妹が揃って目を見開く。


「なかなかいい動きだ、次は……!」


 アヴァランの追撃を前に、ライアスは咄嗟に妹に指示を送った。


(もう一回、あれだろ!)

(氷盾!)


 アヴァランから再び閃光が放たれ、しかし氷壁にぶつかり飛散する。

 フライアの魔法でかろうじて追撃を躱したライアスは、反撃に転じるべくギュッと剣を握り込んだ。


「からの……!」


 猛撃を加えるべく、地面を蹴りアヴァランに肉薄する。その刹那、眼前の虚空に光の印形が刻まれた。


「む⁉」


 その光に弾かれるように剣が阻まれ驚きの声を上げるライアス。アヴァランが両手に握った剣越しに、貫くような鋭い視線を向けてくる。


「光破!」


 叫ばれると同時に光の印形から衝撃波が放出され、ライアスの身体を吹き飛ばした。

風に飛ばされる紙屑のようにゴロゴロと地面を転がり、五メートル以上飛ばされた辺りでようやく足を踏ん張った。


(ぐうぅ……な、なんでだ? なんであんな早く対応できるんだ?)


 これまで多くの敵を翻弄してきた兄妹の連携が通じない。


(それに、光だけでここまでできるなんて)


 フライアも光属性のエレメントを持つが、回復や補助以外の魔法を扱ったことがない。というより、攻撃や防御に特化した魔法があるなんて聞いたこともない。


 ライアスは冷たい脂汗を額に滲ませながら、打開策を捻りだすべく頭をフル回転させる。


(なら、手を変えるか……超電磁で不意に近付けて氷盾を……!)


 しかしその声音は苦悶に満ちている。気付いたフライアが慌てふためくように兄を制した。


(ま、待って! 無茶しないで!)


 相手は未知の力を扱う上に、兄妹の連携すらも通じない。これ以上は危険だ。

 しかしそんなフライアの恐れをよそに、ライアスは決して戦いを諦めようとしない。兄妹の連携はみるみるうちに崩れはじめた。


(止まって! だめっ!)

「くっそお!」


 超電磁はアヴァランの腕に命中したものの、磁力を剣に断ち切られてしまった。引き付けることはできたがほんの一瞬で、フライアも氷盾を発動できていない。咄嗟に剣で打ち込むも、いとも簡単に払い除けられ、逆にカウンターを打ち込まれてしまった。


「守りが甘くなってきたぞ。そらっ!」


 アヴァランの怒涛の連撃がはじまる。

 右斜め斬り降ろしから手首を返し、斬り上げへと繋げる連続攻撃。続けざまに頭部を標的とした左面、右面からの剣撃が打ち込まれる。


「ぐぎぃぃ!」


 どうにか受けてはいるものの、ガードしきれずにどんどん後退していく。フライアが慌てて氷魔法を放つも無駄撃ちに近い。簡単に躱されてしまい、クールダウンが足りずに次の魔法も発動できない。

 反撃に転じようと必死に剣を振るうも、もはや悪あがきだ。


 アヴァランはライアスの剣をあっさりと絡めとると、剣を無造作に薙ぎ付けた。


「ぐっ……!」


 斬り払われた肩口から血が滴り、堪らずに傷口を押さえてしゃがみ込む。


「く……いや、まだ……」


 押さえる手から血が溢れ出た。しかしライアスはなおも目をギラつかせる。




 立ち上がろうとした瞬間、目の前にフライアが姿を現した。


「だめ! もう無茶したらっ……!」


 急に出現したフライアにアヴァランが目を瞠る。兄を止めるために憑依を解いてしまったのだ。


「おいっ、フライアっ!」


 ライアスは声を張り上げた。


 これまで憑依術を人前で見せたことはない。というより、決して見せないようにしてきた。こんな《人外の力》を知られてしまえば、自分たちがどう扱われるか分かったものじゃない。


「……動かないで。止めるから」


 しかしフライアはそんな兄に構わず、アヴァランから引き離して座らせ、光魔法での回復を施しはじめた。


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