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ブラザーズアローン ~世界に選ばれざる《独り》の兄妹~  作者: flyas
第一章 居場所を求めて
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013 いつも実るとは限らない

「……大丈夫か?」


 そう言ってライアスは簡易ベッドに横たわるマーブルを覗き込んだ。


「うぅ~、サイアクぅ~。何の手柄も無いしぃ~」


 ライアスたちパーティメンバーは自警団本部に戻っていた。


 ナゾの爆発に巻き込まれた一行はどうにか無事だったが、一番近い場所で巻き込まれたマーブルは火傷を負った。ライアスとファブラは吹き飛ばされただけで大きな被害はなかったが、爆風の衝撃で気を失ったマーブルを担いで命からがら帰還するはめになった。


 幸い、マーブルの火傷は大したことはなかったのだが一張羅の戦闘服はボロボロになってしまい、手柄となるはずの盗品も家の中で灰と化してしまった。盗品を押収されないための野盗の罠だったようだ。


 命がけでミッションをこなしたのに泣きっ面に蜂とはこのことだ。そんなこんなで半泣き状態のマーブルに、ファブラとクリンが声をかける。


「もう、助かったからいいじゃない。冒険していればこんなこともあるわよ」

「そうだよ。日頃の行いを良くしていけばいいんだって」


 クリンの言い草にマーブルがガバッと上体を起こした。


「どういう意味よ! ……もう~っ! こんな成りでグラムに会えないよ~!」


 ついにはひっくひっくと泣きじゃくりはじめてしまった。


「……」

(……)


 兄妹はそんなマーブルを気の毒やら馬鹿馬鹿しいやら複雑な気持ちで眺めていた。

 ファブラが気付いたように声をかけてくる。


「ごめんなさい。今日は本当に助かったわ。グラムといると別の戦い方をするけど、あなたのタンクもとても頼もしかったわ」

「そうか? 初めてやったもんだからその感覚もまだつかめていないんだが」


 ライアスが素直な気持ちで応じる。


「ふふ。その動じなさ、タンクに合っているのかもしれないわ。私は野盗に囲まれたあの時、あなたが来てから安心できたわ。マーブルも私も近接は全くできないし、今回の状況だとクリンじゃ成す術がなかったし。本当、あなたで助かったのよ」


 するとクリンがつまらなそうにフンと鼻を鳴らした。


「なぁんだ。それならボクじゃなくてその人とずっと組んでいけばいいのに。ボク、あの事務作業ならずっとできるよ」


 そう言いながら両手を頭の後ろで組む。


「……クリン、いい加減にしておきなさいよ」


 そう言ってファブラが睨み付けた。しかしクリンは悪びれることなく「お手上げ」のジェスチャーをすると、逃げるようにどこかに行ってしまった。

 思わずファブラからため息が漏れる。


「ごめんなさいね。こうしてクリンの世話を焼いているのもマーブルの意思なの。グラムもクリンがあんなわがままだったらいけないって思ってるから、彼の世話をしてグラムを振り向かせようとしているの。……ほんと、グラムとクリンが実の兄弟とは思えないんだけどね」

「そうか……いろいろと事情があるんだな」


 “きょうだい”にもいろいろあるんだな、とライアスが思う。

 いつだって一緒にいなければならない自分たちも人のことはあまり言えないが、兄と妹、支え合う関係なだけマシだろうか。


「まぁ、こっちも経験させてもらってありがとうな」


 それからファブラはまだ泣いていたマーブルをなだめ、「もう大丈夫でしょ」と引き起こすと、ペコリとライアスに会釈をして本部を出ていった。




 部屋に二人になったところで憑依していたフライアが姿を現す。臨時ミッションからようやく解放された兄妹はホッとひと息ついた。

 そして交代していたことを伝えようと、クリンに頼んでいた事務作業の後始末を行うため作業部屋を訪れた。


 すると、昼まで一緒に業務をしていた王都兵がせかせかと作業を行っていた。どうしたことか「まーったく!」などと声を荒げている。


 王都兵は兄妹に気付くとハッとして口を開いた。


「おい、今戻ったのか? 手伝ってくれ。午後から担当したあの小僧、全然仕事できていないぞ。登録名は簡略しすぎて誰かがわからないし、人数が合わないし、今日の分のミッションが達成されたのかどうかもわからん!」

「……はあ?」


 またしても嫌な予感がする。


「もう冒険者らも一仕事終えて解散してしまった。もう明日聞くしかないことが多いんだが、その整理だけでもやっておかないと引継ぎもできない。すまないが、ちょっと来てくれ」


 フライアががっくしとうなだれる。


(はぁあ……)

(あれ……? あいつさっき『ずっとできる』とかなんとか言ってなかったか?)


 事務書類に目を通したフライアがギョッと目を丸くする。


「全然できてない……」

「え、これらを、何? どうやって整理するって……?」


 兄妹で見てもどこから整理したものかわからない。

 すると王都兵は作業の手を止めずに早口で言った。


「とりあえず、君たちがやっていた分までを切り分けて、だ。読み上げていくからこっちのふたつのノートにそれぞれ書き出してくれ」


 まさに踏んだり蹴ったりだ。トラブルばかりのミッションをこなしたにも関わらず、代わりに頼んでいた仕事をまるまるやり直す羽目になるなんて。


「あの野郎……」


 とはいえ、王都兵の慌てぶりを見る限り手伝わないわけにもいかない。ライアスとフライアは渋々事務作業に戻った。


 ふと兄妹は揃って本部の出入り口に視線を向けた。その先にマーブルの姿を思い浮かべる。クリンという問題児を抱えながら、グラムとの恋愛成就を願う彼女が不憫に思えた。


(マーブル……頑張って)

(次は、もしくは次があるなら……クリンは、連れてくるんじゃねえぞ)


 時刻は夜の七時を回っている。

 本部から提供されたパンをかじりながら行う王都兵と兄妹の作業は、夜の十時過ぎまで続いた。


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