105 長い闘技の終幕
闘技場の出入口。
事情聴取が終わって闘技場を後にすると、日はすっかり落ちて外は夜の暗さに変わっていた。近隣の広場や商店街では夜の賑わいが見て取れる。
そんな夜の街を遠目に、兄妹はしばし佇んでいた。思えばこうした娯楽都市の歓楽街を歩いたことがない。
せっかく来たのだし、一度くらいは楽しんでみてもいいかもしれない――。
頭の片隅でそんなふうに考えたが、実際に足は向かなかった。全身が疲れ切っていた。
「……ウェイさんとこに戻るか」
「うん。心配させちゃったね」
ぽつりとライアスが呟き、フライアも頷く。
兄妹はとぼとぼ道を歩き、マーシュの宿へと向かう。
歩くほどに華やかさは渋さに変わっていく。すっかり馴染んだその店先にたどり着くと、先に向かい側の道場へと足を運んだ。
兄妹が戸口を開くとウェイが「待っていた」とばかりに駆け寄ってきた。かなり心配していたようだ。
顔を合わせ、兄妹は誓約書の登録不備について尋ねた。まずは無事を伝えて安心させたい気持ちはあるが、トラブルの火種がその誓約書だったのだから訊かずにはいられない。
すると、ウェイは。
「あああああああああああああああああああああああっっっ!!」
道場の敷地内に轟く叫びにフライアが思わず耳を塞いだ。
それからウェイは額を抑えるとそのままがっくりと項垂れた。
「すまん‼ そうだった! 規約は知っていたが、ついうっかり君たちに伝え損ねてしまった!」
そう嘆いてから顔を上げる。
「せっかくここまで一緒にやってくれたと言うのに、無駄足を踏ませてしまったな……。すまない!」
必死に詫びるその姿に悪気はない。それを見届けてからライアスは口を開いた。
「……いや、いいよ。それでも、こっちはいろいろと当初の目的を調査させてもらった」
「お? それは何か収穫でもあったのか」
きょとん、と聞き返すウェイに対しライアスが頷く。
「ああ。その、ちょっと俺たちからも言えないところがあってさ。また闘技場の本部から連絡を出すってヴィクターさんから言われた」
ウェイは顎に手をやった。
「そうか。その割に随分と長くかかったのだな」
ライアスはまたひとつため息を吐く。
「ああ、正直なところ、だいぶ疲れちまった。また明日話せたらいいな」
「そうか。構わんぞ。せっかくだから祝賀会を開こうと妻にも伝えておいたんだが、私の不覚だ。今日の分は無料にするよう妻に言っておくよ」
兄妹がひどく疲弊していることに、ウェイも勘付いたようだった。
「そうか? なら……お言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
ライアスは素直に礼を言った。貯金を切り崩して資金に充てている自分たちにとってありがたい話だ。
それから引き返し、向かい側の宿に入ると「お帰り!」と威勢のいい声が迎えてくれた。既にテーブルにはいつもよりひとしお豪華なご馳走が並べられている。
疲れ果てた兄妹はマーシュの料理に舌つづみを打ち、消耗した身体を癒し始めた。




