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boyside
春の匂いがする。
歩きながらふと思った。
何処かへ向かっている訳ではなくただ下を見て歩いていた。
『ヒュー』
何処からか風が吹いた。
顔を上げると『季節書店』の看板が目に入った。
俺はつられるようにそこに足を踏み入れた。
一瞬で俺は暖かい雰囲気に包まれた。
せっかく書店に来たので今月発売された『流れ星』という本を買おうと思った。
新刊コーナーに行こうとしたとき、本棚を見上げる一人の女性が目に入った。
彼女は不思議な、なんとも言えない雰囲気を纏っていた。
でも、何故かとても苦しそうに見えて。
気付いたら体が動いていた。
『とんっ』
「はいこれ。」
振り向いた彼女は少し驚いた顔をした後、
「ありがとうございます。」
と丁寧にお礼を言ってきた。
帰り際に彼女は微笑んだ。その笑みはとても儚くて。
────これが彼女との出会いだった。