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第一話 girlside
───これはとある一冊の本の物語───
桜が咲き誇る季節。
暖かい雰囲気に囲まれている季節書店。
私は本棚の整理を終え、“いつもの本棚”を見上げていた。
私の表情は冴えない。心が苦しい……でもそれが当たり前になった。
一冊の本を取ろうとすると、
『とんっ』
誰かの手に触れてしまった。
「すみません!」
「別に大丈夫。はいこれ。」
そう言って渡されたのは私が取ろうとしていた本だった。
「ありがとうございます。」
「ああ。」
彼はそれだけ言って別の本棚に向かって行った。
店番をしていて暫くすると彼がやって来た。
「これ買います。」
渡された本は今月発売された『流れ星』という本で私も購入した本だった。
「ありがとうございました。」
爽やかに揺れる黒髪の彼が深く印象に残った。