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カルトの闇と、光

作者: エリ

作者自身の体験に基づいた作品になっています。

”私達は、神様の子どもです。

神様は、人類の親なのです!”


冴子が、世間から「カルト」と呼ばれるこの集団に入ったのは、19歳の頃だった。

忘れもしない、昭和57年9月8日。


彼女は、山上さんという見ず知らずの女性に誘われるがまま、ビデオセンターという場所に連れて行かれた。

そこで見せられたビデオの内容には、正直言って全くついていけなかった。

あんな内容に、反応する人はいるんだろうかというくらい、ある意味”難しい”内容だった。

視聴している間、実のところ、殆ど寝ていた。

でも、ちゃんと見ていたという振りをしなければならないような雰囲気だった。

(そういう雰囲気を助長していると言うのか)


そして、もっと喜ばれるのは、それを見て、”感動しました!”と言うことだった。

勿論、内容がまったく理解も出来なければ、どういう趣旨でこれを見せられているかも分からないので、冴子としても感動のしようがなかった。

でも、何となく雰囲気で、その場に順応しようとしていた。

(何故かはわからないけれど)


それは最初は、若者の「サークル活動」を装っていた。

しかし、時間が経って見ると、実は宗教であることが判明した。

正直、驚いた。

これは詐欺じゃないのか、と。


そのタイミングで、通うのを止めておけば、それが一番よかったのである。

だらだらと、通い続けてしまったのが間違いだったと、今となっては思う。

決断力が乏しい。


40年近く経った今、考えて見ると、自身の優柔不断な性格が起因していたのではないかと思うようになった。

子どもの頃から、いい子ちゃんで育った彼女は、分からなくても、何となく分かったようなふりをするのが得意な子どもだった。


「ええかっこしい」のも、得意である。

自業自得だろう。


そして、この集団の中で、何と結婚もした。

勿論、”そういう雰囲気の中”で「させられた」と言っていいだろう。

洗脳の、最もいやらしいものだ。


”どこの国の人がいい?”

と聞かれたら、

”〇〇国の人”

と答えるのが優等生。


冴子は、勿論その優柔不断な性格が災いしてか、あくまでも優等生を装った。


”もし、障害があっても、神様の為に、受け入れるのが望ましいのよ”

こんなアドバイスにも、


”はい”

と答えるのが、『冴子流』だった。


それから一か月もしないうちに、相手のプロフィールと写真が冴子の元に届けられた。

そして、ついに家庭を持つ段階になった。


教育を担当する家庭局という部署の職員から、


”大丈夫ですか?この男性と本当に結婚しても。

これ以降は、あなたの責任です。

私達家庭局は、一切責任を持ちませんから”


と、突っ放された。


そこでも、冴子は

”ハイ”

と言った。


夫になった人は、冴子の好みとは程遠い人だった。

でも、その集団の中では、”このような人と結婚させてもらいたいと言うのが、信仰がある人なのだ”という常識が触れ回っていて、それ以外の希望条件なんて、ありえないという雰囲気だった。

これも、いわゆるカルト洗脳の一部だったと思われる。


なので、冴子もそのような条件でと、希望を出した。


それが、まさかあんな酷い夫と結婚させられるとは…。


夫となった人は、外国人。

その外国に、冴子は嫁ぐことになった。

家も捨て、親も捨てて・・・だ。


最初は軽い気持ちで、”いつでも帰って来れるから”なんて考えていた。

本当に浅はかな考えであった。

その地に骨を埋める覚悟でないといけなかったのかも知れない。


夫になった人は、一見したところ、農業従事者のようだった。

最初は言葉がまったく通じないので、推測するのが精いっぱいだった。

夫の実兄が近くに住んでいて、その人が夫と冴子が住む家を買ってくれたようだった。

家と言っても、田舎の掘っ立て小屋っぽい家だったけれど。


その兄の元で、夫は働いているようだった。

スイカのハウスが何個かあって、その三分の一ほどを、彼の持ち分とされているようだった。

勿論それも推測だったけれど。


結婚するまで、何もしたことがない、実に頼りない男だった。

冴子が田んぼで見たのは、ちょっと仕事をしただけで、”腰が痛い”と言って、冴子を置き去りにして、バイクでさっさと家に戻ってしまう夫の姿だった。


外国まで来て、置いてきぼりにされて、どれほど心細かったか。

そして、夫と言う人は、信じられない言葉を口にした。


”本当は、俺は、母ちゃんが亡くなった時、後を追って自殺しようと思っていたんだ”


この男は、何を血迷っているんだろうと、冴子は呆れ果ててものが言えなかった。

新婚の奥さんに、そんなバカなことを伝える夫が、この世界のどこに存在するのだろうと。


それから程なくして、冴子は妊娠した。

男の子が産まれた。


この国では、”男の子を生まないと、三行半(みくだりはん)を叩きつけられる”と聞いていたので、とりあえず男の子だったので、安どのため息をついた。

本当に、時代錯誤もいいところだ。


そんな時代遅れで保守的な環境に苛まれ(さいなまれ)ながら、生きて来たこの40年だった。












皆さんも、くれぐれもカルトにはご注意ください。

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