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ひねくれ領主の幸福譚 性格が悪くても辺境開拓できますうぅ!【書籍化】  作者: エノキスルメ
第一章 大森林の開拓地

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第18話 金策を練り練り

「山地の調査?」


「そう。北に行ったところにあるレスティオ山地で」


 新領民たちが居住地に来て2週間ほど。ノエインはユーリやエドガーなど領の中心人物たちを集めて自身の考えを話していた。


 レスティオ山地は、ロードベルク王国の北に蓋をするようにそびえ立っている大山地だ。大陸南部と北部の行き来を阻むように山々が並んでいて、当然アールクヴィスト領のあるベゼル大森林の北にもそびえている。


「前に言ってた金策のためか?」


「うん。冬までにお金稼ぎの方法を見つけて、家を建てられるようにしたいんだよね、できれば」


「それはまあ、確かにそうだな」


 エドガーたち新領民があのボロ布のようなテントで冬を越すのは厳しいとユーリも分かっている。ノエインが彼らのためにもちゃんとした家屋を建てる資金を確保したいという話は以前にも聞いていた。


「だから、レスティオ山地の麓で何かの鉱脈でも見つかればと思ってね。この居住地からなら、森の中を歩いても半日かからない程度の距離だし」


「それは分かったが……調査に行くとしたら誰にやらせる?」


「僕が直接行こうと思ったんだけど、駄目かな?」


 そう言ったノエインに、ユーリは微妙な顔を返した。


「ノエイン様じゃ体力が持たないんじゃないか? 山地の麓まで森の中を何キロも歩いて、さらに険しい山地を歩き回って調査しないといけないんだぞ」


「うーん……ベゼル大森林に来て体力は増えたつもりだし、どうしても疲れたらゴーレムに自分をかつがせればと思ってたけど」


「……いや、やめといた方がいいだろう。一応は未知の場所に行くわけだし、他に森や山を歩くのに慣れてる奴がいるんだ。わざわざ領主が無理して出張ることはない」


「ノエイン様が怪我でもしたら大変です。私たち領民のためにも、今回は他の者に任せてください」


 ユーリに合わせてエドガーもそう言う。


「分かった、今回は僕は控えるよ。それじゃあ人選は……」


「とりあえず俺は行かせてくれ。俺の『遠話』を使えば居住地と調査隊で直接連絡を取り合える。ここからレスティオ山地の麓まで遠話が届くかは微妙だが、少なくとも山地のかなり近くまでは大丈夫なはずだ」


 真っ先にユーリがそう名乗り出た。


「他にも従士連中から何人か……ラドレーとバートあたりを連れていきたい。ベゼル大森林の奥の方に進むわけじゃないから、戦力的にはそれで十分だろう」


「いいよ。用心するに越したことはない。3人だけじゃ人手が足りないだろうから、他にも何人か同行してもらおう」


「それじゃあ、元難民の中から力自慢の男連中を何人か選んで行かせます」


「ありがとうエドガー。そしたら人選は任せるよ」


・・・・・


 話し合いから数日後、ユーリをリーダーに据えた調査隊の出発の日が来た。


 人員はユーリとラドレーとバート、それに元難民の中からエドガーが推薦したリックとダントという大柄な青年2人だ。


「それじゃあユーリ、それに皆も、とにかく無理はせずにね。少しでも厳しいと思ったら引き返して。定期的な連絡も欠かさずにね」


「ああ。日に2回は『遠話』で状況を報告する。遅くとも4日後には一度帰ってくる」


「きっと何か見つけて来ますぜ」


「とにかく普通の岩肌とは違う部分を探せばいいんですよね?」


「そうだね。レスティオ山地は鉱脈が多いことで知られてるから、何か見つかる可能性は高いと思うよ」


 ロードベルク王国の北端の貴族領はどこもレスティオ山地に接しているので、それぞれ鉱山での資源採掘が盛んだ。アールクヴィスト領と接している山地でも何かしらの鉱脈はあるだろう。


「じゃあ行ってくる。期待して待っててくれ」


「うん。気をつけてね」


 居住地を北に出て森へと踏み入っていくユーリたちを、居残り組で見送る。


「……いい鉱脈が見つかるといいですね」


「隣のケーニッツ子爵領にも銅鉱山や鉄鉱山があったはずだし、うちの山地も期待できるよ」


「金でも見つかれば大儲けでさあ」


「あはは、そうだね。他にも銀かダイヤモンドか、何か他の宝石類か……岩塩鉱なんかもいいなあ。一気にお金持ちになれるよ」


「ふふっ。どれもまだ皮算用ですけどね」


 エドガー、ペンス、マイとそんな話をしながら、ノエインは居住地での開拓作業に戻った。


・・・・・


 ゴブリンやグラトニーラビットなどの弱い魔物と2回ほど遭遇したものの、特に危ない場面もなくユーリたちは行程の半ばほどまで進んだ。


「よし、一旦休憩にするぞ。ラドレーは俺と交代で周囲を見張れ」


「へい、お頭」


「馬鹿、もう傭兵じゃねえんだ。お頭じゃなくて従士長と呼べ」


「へい、すいやせん従士長」


 3か月以上経っても以前の癖が抜けないラドレーに苦笑しながら、ユーリは近くの岩に腰を下ろして革袋に入った水をがぶ飲みする。


「リック、ダント、バテてないか?」


「はい、これくらいは全然平気ですよ」


「故郷の村では薪拾いや魔物対策の見回りなんかでよく森の中を歩き回ってましたから」


 元難民の青年たちは2人とも元気にそう答えた。体力自慢なだけではなく、開拓村出身で森に慣れていることも大きな強みになっているようだ。


「バート、ここまでの目印も問題なくつけてるな?」


「はい。一定間隔で途中の木に目印を刻んでます。昼間なら見失うこともありませんよ」


「よし、それでいい。レスティオ山地まではあと半分くらいだ。残りの行程も落ち着いて進むぞ」


 こうして調子の確認も兼ねて調査隊の人員それぞれに声をかけると、ユーリは定期連絡のために『遠話』をノエインにつなぐ。


「ノエイン様、俺だ」


『んおっ!? ああ、ユーリか』


「はは、ビビったか?」


『急に頭の中に声が聞こえるのはなかなか慣れないね。そっちの調子はどう? 問題は起きてない?』


「ああ。何の問題もない。レスティオ山地まであと半分のところに来てる。山地に着いたら時間の許す範囲で調査を始めて、夜にはまた連絡する」


『うん。くれぐれも気をつけてね』


 ノエインへの定時連絡を終え、その後しばらく休んだユーリは、調査隊の面々に出発の指示を出して再び歩き出した。


 それから2時間もかからずにレスティオ山地の麓にたどり着く。


「従士長、『遠話』は通じますか?」


「……いや、無理だな。ぎりぎり繋がりそうで繋がらん。定期連絡のときは少し戻らないとな」


 バートに尋ねられたユーリは、距離的に『遠話』が通じないことを確認してそう答える。


「だが、キャンプはこの麓に張ろう。その方が調査が楽だ。俺はリックとバートを連れて早速近くを調べてみるから、ラドレーとダントはテントの設営を頼む」


「へい、任せてくだせえ」


「分かりました」


 隊を2つに分けたユーリは、調査班の先頭に立って険しい岩山のようなレスティオ山地に踏み入った。

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