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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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姉貴の帰省

 目を覚ますと、カトリーヌが居なかった。人型になって2人で寝る時は、起きる寸前までしっかりハグしている事がほとんどなので、ちょっとビックリ。昨夜はお風呂に入らなかったから、先に入っているのかな?ん?窓開いてたかな?

 お風呂にも食堂にも居なくて、起きてきた皆んなに聞いても誰も見ていなかった。

「脱皮かのう?」

竜は脱皮の時元の姿に戻るので、広いスペースを確保する為に、何処かに飛んで行ったと言うのがベルの推測だった。

 不安な時間を過ごし、折角の弥生さんのご飯も味が解らないまま呑み込んでお昼前、

「カトリーヌの気配ですわ!」

愛菜のセンサーが反応した。急いで外に出ると、一回り大きくなった白竜が大空に浮いていた。

「脱皮やったんや!人型になったら、ウチより成長してへんか心配やな。」

改めて、平坦な部分を確認して、プッと笑った。

「今、笑うとこやで!マジで心配されたらウチかて凹むわ!」 

今度は遠慮なく笑うと、カトリーヌは人型になって着地した。変身した姿は何も変わっていないように見えた。

「コレ、馬車に使える筈だよ!」

抜け殻の一部かな?鱗らしいモノを束にしていた。


「ゴメンね心配かけて!急いで外に出ないと、おうち壊したり、慈子を潰したりするところだったの。」

ランチを食べながら、脱皮の報告。持ち帰った鱗は、馬車にセットして防御や結界の連動に使えるらしい。今回乗って来た馬車にセットして、それぞれ魔窟の入口に預けておけば、トンネル移動の時に便利って事で、早速馬車屋さんに行った。

 馬車屋さんに行くと、銀の馬車が沢山売れているようで、僕等を見つけたオジサンが飛んできた。

「お陰様で商売繁盛だよ!今日はどうしたんだい?」

赤黒の馬車3台にカトリーヌの鱗を付けて、古の魔窟に置いておく計画を話した。

「ウチの新型だな、お安い御用だ!明日の朝には出来てるぜ!」

「新型って銀じゃないの?」

「色違いだよ、型は一緒!」

結構、商売上手なのかな?宣伝費だってタダで付けてくれるっていうので、お言葉に甘えて、その代わりに馬車で使うアイテムをプレゼント。虫メガネで選別済みなので、凄く喜んでもらえた。


 三国の魔窟は、北国の西側ブロックの7箇所だけになり、次の遠征でコンプリートの予定。

 先ずは馬車2台で北の魔窟に行って、1台預けて、魔窟攻略に向かう。その後一旦西国に行って魔窟に馬車を預けてトンネルで北国。1台は預けたままにして、東国に行った時に預けておいた銀の馬車で帰ってくる。それから円さんを送る時に東国の魔窟に1台預けておけば、トンネルを使って、どの魔窟から出ても馬車に不自由しない配備が出来る。帰りは宿に泊まっての移動でそんなに疲れてもいないので、馬車屋さんの帰りに買い出しを済ませて、明日から東ブロックを攻めることにした。


 翌朝、馬車を引き取り、東に乗っていく1台は師匠にアパートまで運んで貰って、北の魔窟へ向かった。常時置いて置いておく事になるので、相談してみたら、月極で銀貨3枚との事。遠征中のもう一台分は負けてくれたので、1年分先払いの割引で金貨3枚のお支払い。そこから東ブロックを回る。

 

 大きなジグザグを描いて、毎日1箇所ずつ攻略。どこもかなり昔に最下層まで攻略済み。4日目を終えて、魔窟での収穫は微々たる物。赤黒の盗賊狩り(・・・・)仕様のお陰なのか、こんなに長く、盗賊に会わないのも珍しいよね。

 次の魔窟へは繊維の集落を通過する。前回、西国から帰るときには、『永吉の郷で、エリカの郷じゃない』って寄らなかったんだよね。

「流石のアタシでも心の準備ってのが要るのよ!」

今回は実家に挨拶するとちょっとイヤそうにしていた。

 魔犬騒動のない集落は、桑畑や綿花畑、羊の牧場と、製糸工場や織物工房で賑わっていた。姉貴は、就職の面接にでも行くようなカチッとしたスーツ姿で手綱を取って実家に向かった。

「え?ここって長老のおウチ?」

前の時は魔犬対策でバリケード張っていたからちょっと解らなかったけど、庭を見ると間違いないね!

 庭の手入れをしていたおばあさんは、先頭で挨拶しようとしていた姉貴をスルーして、魔犬退治の時の4人に飛びつくように歓迎してくれた。

「母さん、アタシ、永吉。永吉だったエリカです。」

「えっ?そういえば花永に似てるわね!」

 おばあさんは、応接間に案内してくれて、長老が迎えてくれた。姉貴は変身の経緯を話すと、

「女の格好なんかして、何が良いのか理解出来んが、お前がそれでいいなら仕方無いな。家は永次(えいじ)が継いで安泰だ。」

お説教覚悟って言うか、会って貰えない事まで想定していた姉貴はホッとしたようで、今までに見た中で、1番可愛く見えた。

「ただな、重大な事情でも無い限り、関心出来る魔法じゃ無いぞ。心の性別に身体を合わせるのは治療と思って良かろう。副作用の老化対策で若返るのもその一貫だが、衣装が似合わんと若返る魔法は人としてどうかと思うがな。」

確かに、長老の言う通りだよね。反省していると、変身前のエリカさんからオバサン要素を抜いた様なオジサンと、その奥様?それから僕等位の女の子が現れた。

「兄さん?」

「そうだけど、今の姿に合わせた呼び方にしてくれない?」

「私、『エリカちゃん』でいい?ホントは叔母さんと姪だけど、従姉妹の方が自然よね?」

と、花永(はなえ)ちゃん。

それじゃあと、永次さんと奥様の美佳(みか)さんも『エリカちゃん』で、決定。逆は『おじさん』『おばさん』『花永ちゃん』との事。姉貴の心につっかえていたモノがすっとして、また泊めて貰ってリフレッシュ。残りの魔窟へ鋭気を養った。

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