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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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再開

 夕方アパートに着くと円さんは真っ直ぐ管理人室に飛び込んだ。

「弥生、西田さん!ご結婚おめでとうございます!」

出迎えた、じいち、、師匠と弥生さんは懐かしいお客さんを大歓迎する顔と、色々ツッコまれる覚悟の表情が入り組んだ不思議な感じ。円さんは、

「50年前だったかしら?絶対お似合いだから紹介するって言ったのに、仕事優先とか言って断ったよね?ほぼほぼ無視だったよね?いつからそうなった訳?」

興味津々の視線で弥生さんを貫いた、

「円がそうなっちゃったら、正直に話すしかないよね、晩ごはん食べながらにしようね。」

 水晶玉で円さんと一緒な事なんかを伝えていたので、準備万端だった。

福移(ふくい)、お久しぶりだね!」

「西田さん!50年前に私の言う事聞いて、弥生に会ってたら良かったって思うでしょ?」

円さんはターゲットを師匠に変えたみたい。

 おばあち、、弥生さんの料理と僕等が持って来たお土産でテーブルを埋め尽くし、いろんな所のいろんなお酒で乾杯した。

「で?順を追って聞かせて下さいね!」

円さんにロックされた師匠は、視線で弥生さんにSOSを送っていたけど、弥生さんは反応無し。自分で話すよりは良いと思っているのかな?師匠は仕方が無さそうにぽつりぽつりと、懐かしい話しを始めた。

「初めて会ったのは、王妃に呼ばれて絆のお供を言いつかった時じゃ、それまではお互い、南国や日の出国での勤務ですれ違っていてのう。」

「初対面の印象は?」

師匠は赤面しながら、

「いい歳をして恥ずかしいが一目惚れじゃ。福移の言うとおりの女性だった。若い頃素直に紹介してもらえば良かったと思ったよ。」

円さんは、視線で『弥生はどうなの?』と、聞いたみたいで、『以下同文』的な回答に満足して話しを進めた。15年以上会っていない筈なのに目と目で意思疎通出来るなんて驚きだね。

「王妃様がな、絆が王室なんて望んでないって気づいていてな、それまでの功績のご褒美に、王子から開放してくれたんじゃ。隠れ家にな、建て替え前のボロアパート貰って、ひっそり暮らすつもりが、戦の傷でちーを残して逝っちまったんだ。」

「それで、夫婦役(・・・)を延長していた訳ね?その間って、夫婦でスル事はどうしてたの?」

・・・沈黙のあと、師匠は質問の意味をやっと理解して、

「王妃様の勅命を遂行しながら、そんなコト出来る訳無いじゃろう!ちーと川の字で寝た時以外は、同衾だってしなかったからな!」

「ふーん、慈子ちゃんが一人前になって、ようやく解禁したのね?」

師匠は更に赤くなって頷くと、馬の様子がなんとか言って、逃走してしまった。

「私が言った通り、世界で2番目にイイ男だったでしょ?あっ、ウチのは早死しちゃったから、その分減点して1位タイでもいいわよ!」

 円さんは楽しそうに笑って、弥生さんと懐かしい話で大はしゃぎ。母さんの事も色々教えてくれた。伝説の様に聞いた話しだと、『癒やしの剣姫』は絶世の美女と言う事になっているので、その辺を聞いてみた。

「そうね、伝説化されて少し誇張されてるけど、キレイな娘だったね。慈子ちゃん、よく似てるわよ!」

「ぼぼぼ、僕がですか?」

緊張して聞き返すと、

「母子なんだから驚かなくていいでしょ?絆が小さい頃と、今のちーが似てるのよ、きっともっとキレイになるわよ!」

どうやらノビシロを期待してくれているみたい。

「見かけも似てるけど、剣の腕前のほうが強く遺伝しているみたいね。」

 円さんが教えていた、小学生(相当)の母さんの武勇伝と、僕がおっちゃんの所で下請けとして暴れていた話と通じるモノがあって大爆笑。物心ついた頃には母さんはいなかったので、暴れん坊の性格は、後天性じゃ無さそうだから、やっぱり遺伝なんだね。

「じゃあ、慈子ちゃんも魔王が封印された魔窟に乗り込む時には、お腹に助っ人入れて行くのかしら?」

ん?えっ!意味が解ったら耳が熱くなった。

「ぼ、僕、そんな相手居ませんから!」

円さんは、

「じゃあ、これからね!」

更に楽しそうに笑っていた。楽しいお喋りが続いていると、こっそり戻って来た師匠に、

「もうイジメませんよ、慈子ちゃんが早く叔父さんか叔母さんが見たいって待ち焦がれているからね、邪魔しない様にするわ!あと、福移は旧姓だからね、半世紀程前から、中沼ですけど。」

師匠は、居心地悪そうに、冷した麦酒を呷った。

「ああ、すまんな。中沼だったな。あいつを思い出すよな。」

あいつ(・・・)とは、もちろん円さんのご主人で、中沼 (たすく)さん。魔族との戦の大功労者なんだけど、僕の両親と同じ様に、戦の傷が癒えずに亡くなったそうだ。

「あいつが居なかったら、魔族領に攻めるどころか、東国は乗っ取られていただろうな。」

師匠はポツリと思い出話をすると、円さんは、

「ねっ!世界一のイイ男でしょ?」

少し意識したような明るさでよろこんでいた。

 積もる話を寝落ちするまでって勢いだと思ったけど、サッと引き上げてミーティングルームの小上がりの炬燵を片付けて布団を敷いて、

「しばらく厄介になるよ!ここのお風呂、温泉なんだってね!」

バタバタと降りて行った。

 部屋に帰るとカトリーヌが僕のベッドでスヤスヤ。お風呂に誘おうと思ってたけど、気持ち良さそうな寝顔を見てると、僕も眠たくなってそのままベッドに潜った。

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