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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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魔鉄鉱採掘

 朝湯を堪能してから朝ごはん。すっかり朝のルーティーンになってしまった。馬車屋が開くのを待って馬車を借りて都に向かう。黒い力の組織は前回の遠征で壊滅的な打撃を与えているし、盗賊もかなり潰しているので、スイスイと目的地に到着した。

 宝飾店には、真っ白のショートボブのおばあさんがいて、年齢的に弥生さんのお友達ってこの人かな?って、

(まどか)さんですか?」

「ええ、そうですよ。もしかして、弥生のお孫さんかね?」

「ハイ!慈子って言います!」

「おや、(きずな)に似ているな。」

「母さんを知ってるんですか?」

「ええ、もちろん。」

 母さんの事を聞かせてくれた。

じいちゃん、ばあちゃん、円さんは、母さんの先生だったそうで、魔王討伐の独身だったじいちゃんとばあちゃんが、母さんのサポートで遠征したらしい。

「あの二人、お似合いだと思ってね、若い頃から紹介しようと思ってたんだけど、二人とも仕事優先で実現しなかったのよね!結婚して剣姫を助けてるって聞いて喜んでいたのよ!」

「つい最近結婚したんですよ!」

「それまで、夫婦()だったの?」

「ハイ、プロポーズまで同席しちゃいました!」

「アララ、義理の叔父さんか叔母さん産まれたら嬉しいわね!取り敢えず、新婚旅行でコッチに来るように伝えて頂戴な。」

水晶玉の枠の事をお願いすると、快く引き受けてくれて、いくつかのデザインから選んで、弥生さんとお揃いにして貰った。素材は金か銀にしようと思っていたけど、

「古の魔窟から西に行った鉱山で魔鉄が採れるのはご存知?」

皆んなはポカンと反応無しだけど、ベルは知っていた様子で、

「シリウスゴールドじゃな?」

円さんはコクリと返事をした。

 魔具に使うと効果がアップする鉱物で色々な金属と混ぜた合金はさまざまな魔具で重宝されている。特に、銀と魔鉄のシリウスゴールドは、金やプラチナを凌ぐ美しさ、耐性、魔力の保持、伝達効率等などがどの金属よりも良いので大人気。但し魔鉄はなかなかのレア物だし、合金にするには強力な結界能力を持った熔鉱炉が必要なので一般に目にする事は殆ど無い位のレア具合い。

 鉱山は馬車ですぐなので、今出たら昼には着ける筈。早速馬車を走らせた。


 円さんに貰った地図と、魔鉄鉱石のメモを見ながら、魔族の森に分け入った。滅多に人が入る場所では無いけど、魔鉄の需要は無くならないので、結構奥まで馬車で進む事が出来て、行き止まりには駐車場っぽいスペースもあった。保存食でお昼を済ませて、その先は獣道を歩いて登る。

「この地図、ええ加減やな!目印、イッコもおおてへんで!」

あらたは、迷子宣言をしながら何故か、メモの時間の半分ちょっとで坑道口に到着した。地図の精度が悪いのか、地図以上のショートカットだったのかは気にしないで置いて、坑道の中を確かめた。入口は鉄製の柵で閉ざされ、ダイヤル式の錠が掛けてあり、合せる数字は看板に書いてあるので、人間は自由に入る事が出来る。柵の下の隙間を見ると、10センチ程度なので大きな魔物や動物は入れないだろうな。愛菜のセンサーにも魔物の反応は無かったので、少し安心して坑道を進んだ。大体メモ通りに進んで行くと、

「ん?分かれ道の立て札、壊れてます!」

って言うか、『壊された』って感じ。

「他のモンに採られんように壊して行ったんじゃろう。」

ベルは立て札の破片を拾って溜め息をついた。

「ちょっと試して見るわね!」

風香は、破片と一緒に落ちていた錆びた鎖を分かれ道の真ん中の仕切り部分に置いてヒールを掛けた。破片と鎖がぼんやり光ると、鎖は左の通路を塞いで、立て札は新品同様になって岩肌に貼り付いた。

『左、毒虫注意!右、急勾配、採掘所付近、足元滑る!』

「ふぇ?」

姉貴が謎の反応で風香を見つめていた。どうやら、ヒールを生き物以外で成功したのを初めて見たらしい。

「ココがコレやったら、コッチがアレやな!」

立て札と地図のメモが一致して、急勾配と足元に注意して採掘所に到着した。

 教室位の空間に薄っすら黒い力が漂っていて、動けなくなる程では無いけど、力仕事はちょっと無理っぽい感じ。浄化してから採掘に取り掛かった。

 魔鉄鉱石で含有率が高い物は濃いグレーとの事なんだけど、それらしき所は既に掘り尽くされていた。虫メガネで覗くと採掘ポイントが解ったので、姉貴が子午棒でガンガン砕いて、拾い集め、虫メガネで選別してチクワを仕込んだ風呂敷に積み上げた。

「カドを持ってくれんかのう。」

ベルの指示で風呂敷を畳むと、最後はハンカチのようになってポーチに仕舞った。

 馬車まで戻るともう暗かったので、また保存食の晩ごはん、テントを張る間に音が料理当番。

「こんな山奥で晩餐や!」

あらたが大喜びする声で、美味しい時間が始まった。


 翌朝、いつものように日の出と共に起きて、おにぎりを齧りながら町に戻った。

「こんなに採って来れたの?しかも質の良いのばかりよ!」

作業場に運ぶと、お弟子さんらしい人達が、熔鉱炉に鉱石を入れて魔鉄を溶かし出す作業を初めてくれた。

「採掘所まで行けたら合格って思っていたの。悪い人に奪われて悪用されたら大変だからね。折角だから、自分達で採って来た分で作るわね!面倒な魔物で大変だったでしょ?」

 猫達のお陰で一度も遭遇していない事は黙っておいた。

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