登鯉
ちょこっと東国へ行ってみる。古の魔窟のトンネルでヒョイと行ける。東国の魔窟からは乗り合いの馬車で行けるみたい。誰か代表で皆んなの分を持って行っても良かったけど、魔窟を攻めてトレーニングする事にして皆んなで出掛けた。
馬車を北国の魔窟入口に預けて潜った。今回はあらたと登鯉をどう活かすかをメインに考えながら戦ってみる。突いた時に伸びたり、振り下ろした時に巨大化したり、不思議な能力を持っているのは間違い無いんだけど、他の皆んなの武器が凄すぎなので、ただの物理攻撃って感じなので、効率の良い使い方を考えようって言うのが今回のミッション。
魔力攻撃が効かない時の物理攻撃が一番の本領発揮かな?猫達が元のサイズになってメガトン猫パンチでねじ伏せるってのも手っ取り早いけど、狭い場所だったりの時は登鯉の出番かな?
9階層で東国に移動、そこから下へ向った。普通の剣としての切れ味も、なかなかのモノで、結構苦戦しそうな剛毛系とか鎧の様な殻付の魔物をサクっと斬っていた。
「あらたも実践で伸びるタイプね!」
姉貴は笑うけど、『も』って僕の事かな?まあ気にしないでおこうね!
特訓の方は、登鯉も凄いけど、あらたの腕も出会った頃と比べて、格段に上がっている。男性に混ざってトレーニングしていた身体能力に加え、キレって言うのかな?動きがキビキビした感じなのと、防御時の身のこなしがキレイだった。相手の攻撃を読み切った身のこなしは、
「狙われそうな気がするんや、雰囲気っちゅうかな?知らんけど。」
あらたの勘らしい。
深くなるに連れ、魔物が強力になり、サイズもデカくなってくる。普段なら結界の中から飛び道具で片付けるんだけど、結界は魔物の拘束を優先して、あらたをサポート、20階層を越えた辺りからは、黒い力を纏った魔物が現れ、今回のミッションで想定した戦闘が実現した。結界と飛び道具でサポート、僕は虫メガネであらたと登鯉を観察する。
「いつの間にか、Aランクです!」
出会った時Eランクだったので、思いっ切りの急成長。普段魔法使う機会無いようなのに、不思議だけど、愛菜達はFからAだから驚く事も無いのかな?
戦闘が始まって、登鯉に注目した。2メーター越えの牛人に跳びかかり、振り下ろされた登鯉は柄かぼんやり、魔力を発し、剣先にまで漲ると、刃渡りが3メーター程になって、牛人は2つになっていた。使い手の魔力が必要なのは当然なんだけど、結構な魔力を消費するように感じた。これだけ消費し続けたら、ランクアップしてもおかしく無いよね。
更に潜って、
「飛び道具試してみたら?」
姉貴の提案で、あらたは魔力弾にトライした。姉貴と音は正拳を突くように飛ばして、愛菜とベルは片手の人差し指をピストルみたいに構えて、風香は両手でピストルみたいにして飛ばす。あらたは、どのスタイルでも飛ばなかった。
「なんか、手のひらが、熱っうなってきおった!」
「じゃあ、手のひらを相手に向けて飛ばすイメージ持って!」
あらたは、姉貴のアドバイスを試すけど、手のひらが光るだけだった。
「剣に移せる?」
あらたは登鯉に魔力を移すと、登鯉が輝いた。ソレを飛ばそうと頑張っているけど全然飛び出さない。練習しているうちに魔物がゾロゾロと現れた。
「取り込み中や、邪魔せんといて!」
あらたは、輝いた登鯉で魔物を斬りつけると、一匹は剣で斬り、その剣圧で後ろの数匹も倒してしまった。残り2匹は逃げ出したので、姉貴と愛菜が魔力弾で追撃ち。あっさり倒したけど、すぐに復活した。復活に味をしめたのか、再び襲って来た。
「ひつこいヤッちゃな!」
あらたは一匹を斬り伏せ、もう一匹は姉貴達が飛び道具で始末。クリアかな?って思ったけど、また復活。
「ええ加減にせえや!」
あらたが突くと、登鯉の周りからボロボロと崩れていった。復活をさせないダメージでやっつける効果なのかも知れない。
剣圧で倒した攻撃を再現しようとしたけど上手くいかなかったので、魔力を溜めて斬るスタイルを活かすフォーメーションを考える事にした。そのまま潜って37階層。待っていたのは三ツ首だった。
「あらた、さっきの攻撃で両側の首落として!」
真ん中の首を落とすのがセオリーなんだけど、姉貴の指示は両側だった。結界と飛び道具で足留めして、あらたは登鯉を光らせてササッと2つの首を落した。初めて戦った時、首が増えて苦戦したけど、今回は増えるどころか、再生もせず、傷口からジワジワと身体を蝕んで残っていた真ん中の首も落ちてしまった。
「登鯉の傷はどうやら再生を防いだり、傷が連鎖したりするみたいね!」
最下層に降りて一休み。あらたの特訓と実験の結果を話し合って、基本的には今まで通り、デカイヤツとか、再生して面倒なヤツのトドメを刺す担当になってもらった。
「パパーンって飛び道具でやっつけたら、気分ええやろな!」
っていう事で、魔力弾の練習は続ける事にして、地上を目指した。
サクサクと片付けて地上に出た。出張所に寄って、あらたの魔力測定をして、Aランクの仮認定してもらって、宿を取ってのんびり。明日は都の宝飾店に向かうには、乗り合いの馬車で行くつもりだったんだけど、1日に3本しか無かったりして時間の融通が効かないので結局、馬車を借りる事にした。カトリーヌが引いてくれると言うので、馬車だけ借りて、都に向かった。




