薬草採取
初出勤?4人揃って協会に出かけた。Fランクパーティーが出来る仕事は、魔物や悪人と戦ったりする事は無いので、鎧は着けず、まあ、登山遠足程度の装備だった。今日は薬草の採取。出来る仕事をキッチリ熟して行けばパーティーランクF+とかF++、F+++と+が1つ付くと上のランクの仕事を受けられるようになる。僕がEに上がるのが手っ取り早いんだけど、あんまり自信無いから、実績で上がって行く事にしている。
さて、出発。薬草採取で特殊な物は協会が認めた薬剤師の同行が必要になる。その人のペースに合わせなきゃならないし、万が一危険が迫ったら守らなければならない。その辺が面倒なので人気は無く、普通よりは多めに支払って貰える。今日の薬剤師さんは、僕らとそう歳が離れていない若い女性だった。
「前回、ベテランさんが連れて行ってくれたけど、こんなにキツイ坂無かったわよ!」
僕は下請けで何度も行った場所なので、一番安全で時間の掛からないコースを選んだんだけど、薬剤師のチョエンさんは平坦な道じゃ無いとイヤだと駄々をこねるので、少し遠回りなのと、途中の洞窟に、たまに大きめの魔物が住み着いている事が有るので注意が必要だ。念の為その説明をすると、
「そんな脅しなんかじゃ騙されないわよ!そのルートで行きましょう!」
説得する時間を考えたら、サッサとルートを変えたほうが良さそうだ。季節的に魔物が住み着いている可能性は低いからからご要望に応えた。
しばらく歩くと、雪解けで増水した小川をロープ伝いに渡ったり、ぬかるんだ道で靴は勿論、ズボンの膝上まで泥んこになっていた。岩場迄歩くと、泥が乾いて来たので、チョエンさんは不愉快そうに泥を払っていた。
「嫌な臭いです、魔獣かも知れないので気を付けて下さい!」
臭いとは逆の方から、もっと嫌な唸りが聞こえた。
「挟まれました!風香は結界を!音は後ろのヤツに矢を射て挑発して下さい!愛菜は射程距離に入るまでがまんしてトドメを刺して下さいね!チョエンさんは風香の後ろでじっとしてて下さいね、安全ですから!」
「「「了解!」」」
「僕は、前のヤツを合流させないように誘導するんで、1頭やっつけてから、僕のサポートお願いします!」
僕は岩に隠れながら前の1頭に近付いて、矢を放った。矢は音の魔法を纏わせあり、分厚い毛皮を貫いてかなりのダメージを与えた。前足の付け根に刺さりスピードを奪った。岩場を登りながら逃げて、脇腹にもう一本射込んだ。ジリジリと動く程度まで自由を奪ったが、魔法を纏わせた矢はお終いなので、トドメは難しい。普通の矢でダメージを与えられるまで引き寄せてから顔面を狙った。当たっても痒いとも思わないようで、ジリジリは止まらない。至近距離で何とか目を射抜いた。岩場の斜面を転げ落ち、唸っている。もう1頭に愛菜のトドメが撃ち込まれたのを確かめ、風香の結界に逃げ込んだ。
「もう1頭もこの先で転がってるから、魔力が回復したら、もう一発お願いね!」
「そんな、呑気な事言ってていいのかしら?すぐにでも撃てるわよ!」
「無理して無い?」
愛菜は頷くと、結界を飛び出た。チョエンさんを風香に任せ、音と一緒に愛菜を追った。もう1頭はまだノビていたので愛菜はしっかり仕事を済ませた。馬ほどのサイズの狼の魔物で、普段は単独行動だが繁殖期だけつがいで行動する。報奨金の対象になる有害獣なので、取り敢えず結界で保管しておいた。
魔物に肝を冷やしたのか、チョエンさんは不機嫌さを増して、薬草の群生地を目指した。サクサクとノルマを収穫して一旦協会に戻り、依頼完了の報告とチョエンさんを送り届け、魔物の回収に再出発。荷車を借りて長靴に履き替えた。
今朝のルートをもう一度辿る。音の強化魔法で、何とか荷車に乗せて運び出した。何とか1頭運び込むと、
「こっこれ自分達で運んできたの?運搬業者に頼めば良かったのに!」
受付嬢が驚くと、おっちゃんが飛んできた。もう1頭は業者に頼む事にして、1頭分の報奨金の申請をした。
「Bランクの魔物だから、F++かな?手続きにはちょっと掛かるけどな。」
「薬剤師のチョエンさん大丈夫でした?いきなり、こんなの見てもちゃんと歩けたからビックリだったんだ、ホッとして寝込んだりしてないかと思って!」
「ああ、機嫌は悪そうだったけど、明るいうちから酒場に行ってたぜ、気分転換かな?」
なんか、心配して損したな。取り敢えず、薬草の分の報酬を貰って協会のお風呂でのんびり。昨日の食堂に寄って帰った。
翌日も薬草採り。ただ今日は薬剤師無し。報酬は少ないけど、お荷物が少ないのでラクな仕事だ。ちょっと高い所迄登らなきゃならないけどね。帰り道、野生化した鶏に襲われたけど、しっかり今夜のご飯になって貰う。10羽ほど締め、下処理してから持ち帰った。食堂に持ち込むと、買取ってくれたり、調理してくれるので今夜のディナーは鶏の半身揚げかな?
協会に帰ると、昨日の狼の分が精算されていて、金貨52枚、パーティーランクがF++に昇格していた。明日からはDランク相当の仕事を受けられる。どんな依頼が有るのかワクワクしながら食堂に向かった。持ち込んだ鶏の買取り分でちょっとゴージャスなディナーになった。