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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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指導係

 おっちゃんに泣きつかれては仕方がないので、新人の指導係を引き受けた。10日間実習生と魔窟攻略や依頼を処理する。

 初日は3つのパーティーを受け持ち、愛菜とベル、音とあらた、風香と僕がメンバーに混ざって、姉貴が全体を監視する。新人と言っても、『数年芽が出ない若手』なんて僕より年上だし、新卒組も同じ学年で僕等が卒業前からデビューしていたから、ちょっとだけセンパイって状況なので、やり難い感じは否めない。それぞれ馬車を持って居るそうなので、馬車で2時間程の魔窟に潜る事にした。

 どのパーティーの馬車もピカピカの新車で赤黒のツートン、白馬が引いていた。サイズも同じ位なんだけど、僕等が中古で買った価格の5倍は超えていたらしい。1時間程で人気が無くなると、通せんぼの馬車、いかにも悪人面。愛菜達が見ているメンバーが飛び出して応戦した。僕等のパターンが最も安全で効率もいい方なので、ソレをレクチャーする。先ずは結界を張って、、、?結界の担当が、ビビって魔法が使えなくなってしまった。愛菜が東雲で護り、盗賊が飛ばして来た魔力弾をベルが飛竜で薙ぎ払うと、雷弾のシャワーになって盗賊達を痺れさせた。腕の立ちそうな2人を愛菜とベルが相手して雑魚を実習生達に任せた。2人は危なげなく始末して、痺れた雑魚2人対実習生5人は何とかクリア出来た。いつものように処理して魔窟へ向かう。

 少し進むと、愛菜のセンサーに小鬼が引っ掛かった。今度は僕等が見ている男の子だけのパーティーで応戦する。

 充分な結界を張れるメンバーがいないので、6人で斬りかかった。割とあっさり倒して逃げた小鬼を追おうとした。

「深追いせずに、倒した分の処理をします!」

僕の声が聞こえなかったのか、小鬼を追って山道に踏み込むと、数分後、勝鬨が悲鳴に変わった。急いで救出に向かうと、鎧を纏った人間サイズの小鬼が3匹、実習生達は怪我を負い、何とか剣を構えていた。風香が魔力矢であっさり沈め、実習生達には、武器や防具と耳の回収をしてもらった。大怪我では無かったのでメンバーでヒールが出来る子に任せて次に進んだ。

 魔窟に到着。協会の出張所に盗賊を引き渡し、小鬼の耳を提出した。戦利品も買取してくれるので、査定を頼んで潜る事にした。

「あのう、私達、ここで待ってます。」

音とあらたが、見ているパーティーがまさかのリタイア。

「外でアレなら中の怖さが計り知れないわ!」

 僕等のメイド風戦闘服をかなり忠実に再現した衣装の4人は、盗賊や小鬼の処理を手伝っただけで、この仕事は向いていないと悟ったそうだ。無理に誘うより安全で、何より僕等の負担が軽くなるので、馬車で待っていて貰った。外の魔物も心配なので、カトリーヌ達に護衛を頼んでおいた。

 魔窟の中では、剣の指導から始め、浅い階層の弱い魔物で真剣の感覚に慣れて貰う。5階層迄でさっきの武装小鬼位の強さの魔物になったので、各自一対一で闘ってみた。明らかに上達していた。多分、今上達したんじゃなくて、竹刀や木刀で出来ていた事が真剣でも出来るようになったんだろうな。

 6階層からは魔力を飛ばしたり、武器に纏わせたりする練習。僕は教えられないので、姉貴と交代して、安全確保に努めた。10階層を制覇して、最下層の11階層へ降りた。

 最下層は黒い力が充満していたので地面を触って浄化した。薄明るくなると、小鬼のような人間のような、いや猿かな?不思議な魔物が出て来た。身長は僕位かな、やけに長い腕のやけに長い爪を振り上げた、

「風香、結界!皆んなも固まって!」

姉貴は自分も結界を張り、防御体勢。

魔物が爪を振り下ろすと、目には見えないけど、何か力を感じた。結界出て来た防いだけど、男の子が一人、結界に入れて無かった様で、着ていた物が、全て切り刻まれて全裸にリュックサックと言う謎の姿になっていた。愛菜は次を構える暇を与えずに、魔物を斬り伏せていた。

 登りは実習生に任せて、危なげなく地上に帰って来た。明るくなるはずの視界が、猿鬼の巨大な身体で遮られていた。一瞬ビビったけど、爪で抉られた跡と喉笛を喰い千切られた跡を見ると、得意げな表情のカトリーヌ達の『褒めて!』のおねだりオーラの意味が解った。血だらけの口元や両手を拭ってあげると、

「待っていたお姉さんも、頑張ってたよ!」

 あっ忘れてた。急いで馬車を見に行くと、しっかり結界で護られていた。僕等を見て安心したのか、ニッコリ笑うと気を失ってしまった。猿鬼の角を回収して、身体は焼却した。角は報奨金の成果物なので提出、巨大な骨は飾っておくと魔物避けになるので、出張所に寄贈して、代わりにいらない骨とかの残骸処理をお願いした。

 結界の娘をヒールすると、魔術師の仕事を辞めたく無いらしく、辞める3人とは別にパーティーに入りたいと言っていた。魔窟に潜った2つのパーティーもメンバーの能力に偏りが有って、トレードを薦めていた所だったので、結界が使える彼女は貴重な戦力になるはずだ。シャッフルして、6人のパーティー2つにすると、何とかやって行けそうに思えて来た。

 帰りの馬車で辞める3人と話が出来た。彼女達は、残る一人も含め、愛菜の同窓生で、クラスは違ったけど、愛菜の事は知っていて、彼女が出来るのなら私達も!って協会に来たそうだ。話している最中にも、愛菜はセンサーで魔物を見つけ、魔力弾で片付けていた。

三角狼(トリケラウルフ)ですの、単独行動の魔物ですから、ご心配なさらずに!一角(ウノケラ)なら高く売れたのに残念ですわね。」

野犬の駆除もした事が無いって言って、三人は更に縮こまって見えた。

 支部に帰って実習の報告と、三角狼の駆除の手続きをした。実習の方は、三人辞める事になったので、ペナルティーでタダ働き。盗賊、小鬼、魔窟攻略、猿鬼、三角狼で普通の稼ぎの数カ月分になるから、七人で割ってもまあ高額報酬って感じかな?協会のそばの酒屋で2つの新パーティーの結成祝いと3人の送別会に乾杯した。

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