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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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結婚式

  いろんなお喋りをしていると、ノックの音がして、ドアを開けるとじいちゃんが葡萄酒とチーズを持って来ていた。

「ちー、頼みがあるんじゃ。」

モジモジしているのが可愛く見えた。

「あ、うん、僕の部屋に行く?」

「いや、ここで良いさ。良かったら皆んなにも聞いて欲しいしのう。」

じいちゃんは、昔話を始めた。


 東国のとある密室、王妃が男女二人に密命を下した。

「剣姫の事をお願いします。魔王討伐の力になってあげて下さい。あの娘は、王子との結婚を嫌がっていますから、無理に連れ戻す事はありません。私もあの娘がプリンセスになってくれるのが1番ですが、本人の意志を尊重します。もし、他国で暮らす事を選ぶようでしたら、生活が軌道に乗るまで支えてあげて欲しい。」

武術の指南役を退いたばかりの西田(にしだ) 主水(もんど)と魔術の指南役、(おか) 弥生(やよい)、後のじいちゃんとばあちゃん。二人とも実力者の上、独身だったので白羽の矢が立ったようだ。

 母さんがここで暮らす事になって、大家夫婦として母さんを助け、その延長で僕を育ててくれたそうだ。因みにアパートは、王妃様からのプレゼントで、豪邸でもお城でも望む物が与えられたけど、母さんがひっそり暮らせる様地味なアパートにしたそうだ。

「それでな、王妃に呼ばれた時が、ばあさんとの初対面だったんじゃが、一目惚れしちゃってのう、お勤めを済ませたらプロポーズしようと思ってての、今がその時だと思ってのう。今までは夫婦()じゃったからのう。」

じいちゃんは、婚約指輪を買いに行きたいと言って、何を買ったらいいかの相談だった。早速、明日見に行く事にして、じいちゃんは帰って行った。

 さて、作戦会議。3月の誕生石の藍石に決まり、サイズは姉貴に任せた。見て触れば確実に解るそうだ。で、結婚式も開こうと計画した。

「ウエディングドレスを着せるなら、アノ薬が必要ですわ!」

愛菜の案に皆んな賛成して早速取り掛かった。

「あとコレも作りたいんだ!」

レシピを見て貰うと、

「うん、必要ね!こっちの方が効き目が現れるのに時間が掛かりそうだから、優先しましょ!」

コレって言うのは育毛剤で変身しても、以前のヘアスタイルはそのままで、何時もヅラか帽子のベルに作ろうと思っていた物で、アノ薬っていうのは勿論若返りの薬。若返ったじいちゃんにも必要だよね。岬人参が手に入ったので、材料はオーケー。早速壺にセットした。

 カトリーヌと部屋に帰ってベッドに潜ると、あっという間に眠ってしまったらしい。


 翌朝、薬壺に出来ている液体を半分取り出して、残りに追加の材料を入れた。取り出した方は水で薄めて頭皮に塗って使う。ばあちゃんも髪のボリュームが無くなっているで一緒に試して貰った。

 ばあちゃんの髪は白髪も真っ黒な艶髪になり、じいちゃんのピカピカの頭皮は、青々と剃り上げた坊主頭みたいになり、ベルの変身以降、生えて来ていた産毛は、しっかりとした髪に育っていた。


 効き目が予想通りだったので、おっちゃんに会いに行った。『面倒な事』って言うのは、初心者や、なかなかランクの上がらない魔術師達が、大勢移籍してきたそうだ。

「支部長様の人徳ですな!」

って冷やかしたら、

「なんでもなあ、各支部のお荷物Fランカーを集めて、F+++(エフマックス)パーティにしてガンガン稼ぐ様にしたって噂と、支部の近くに、魔術師に誂えた様な新築で家賃も手頃なアパートが有るって話を聞きつけた連中がアレだ!」

ソレって僕等のせい?遠征までの間、研修を手伝う事になってしまった。


 夕方には薬壺で飲み薬が出来上がっていたので、朝晩飲んで貰う。

 3日程で、じいちゃんは角刈り位に伸び、ばあちゃんは若いお姉さん達と変わらないツヤフワになり、ベルはヅラの時邪魔臭い長さに伸びていた。その間に指輪や結婚式の準備をしておいた。

「えっ?ここで?どこかロマンティックな所とかがいいかもです!」

「いや、ここがいいんじゃ。」

じいちゃんは、決戦の舞台に食堂の厨房を選んだ。

藍石の指輪の小箱を差し出して、

「弥生さん、儂と結婚して下さい!」

一瞬驚いたばあちゃんは、

「はい、勿論、喜んで!」

目を潤ませて受取り、薬指に嵌めた。

一斉に拍手で祝福して、お祝いの乾杯。

泡葡萄酒には、若返りの薬を混ぜてある。

「キッチンは僕等が片付けるから、姉貴と一緒に結婚指輪選んで来て!」

戸惑うばあちゃんを押し出し、姉貴が強引に、連れ出して行った。

 ばあちゃんが居ないうちに道場を式場に変身。畳をどけて板の間に、どけた畳を積んでステージに。ちょっと飾り付けをして、カトリーヌと猫達は、天使風の真っ白ワンピで近所に案内状を配って回った。

 魔石商から帰って来たじいちゃんとばあちゃんは、いつも掛けていた老眼鏡は無くなっていて、曲がった腰もピンと伸びていた。

「なんか、嬉しいせいか若返ったみたいな気分だよ!」

薬の事はナイショなんだよね!


 翌朝、姉貴と一緒にドレスを持って管理人室をノックした。自分の変身に気付いていないばあちゃんをそのまま拉致してお風呂の脱衣所に連れて行った。30台半ばの積もりでの処方だったけど、ちょっと効きすぎかな?20台後半かな?って位に見えた。脱衣所の鏡は隠してあり、3人でおにぎりを食べてから、花嫁さんのドレスアップに取り掛かった。髪をアップに結うと、

「ばあさんの髪をそんなに引っ張ったら抜けちまうよ!」

お化粧をすると、

「皺に塗りこんでも仕方がないよ、白粉(おしろい)勿体ないよ!」

声も若返ってるのに、自分では気付いて無いみたい。ヴェールを掛けてお嫁さんの出来上がり。

 合図をすると、タキシード姿のじいちゃんが現れ、鏡を隠していた布を取り払った。

「あら、おじいさん?初老の貴方に一目惚れしたのに、その年齢で会っていたら、人生変わっていたかもね。」

自分の変身にはまだ気付いて居ない。

「ばあちゃん、鏡!」

ばあちゃんは鏡の中の自分に驚いていた。

 道場に移動して、神父さんのお話と指輪の交換、誓いのキス。簡易的だけど荘厳な雰囲気の中滞りなく式を済ませた。

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