活動準備
「もう遅いから、うちに泊まって!」
協会の支部のエリアは、だいたい中学校の学区2、3個分なので、3人はこれから帰るとなると長い夜道をテクテク歩く事になる、ばあちゃんがまだ起きていたら、朝ごはんにもありつけるかもしれないからね!
「ちーのお友達ね、あらら別嬪さん揃いね、いいよ、いいよ!朝はいつものご飯しかないけど、胃袋には文句言わせないよ!舌は保証出来ないけどね!部屋はちーの部屋でいいのかい?」
「うん、寝袋とか貰ったから使って見ようと思って!」
アパートの一室と思えばせいぜい2人で一杯って感じだけど、テントの収容人数の換算なら僕の部屋でも4人は余裕で入れそうだ。6畳間をほぼ6畳で使えるくらいに家具が無いので、寝袋ならまだまだ何人も泊まれそうだ。
「検討する必要有りますの?」
愛菜が呆れた表情で聞き返した。どこの支部に登録するかを話題にした事への反応だった。
「お荷物扱いされいた支部には戻りたくないわ。」
結局、全員一致で僕のホーム支部で活動を始める事になった。
住む所も、いちいち通うより、こっちに引っ越す事を考えた。今のアパートは空き部屋は、僕が赤ん坊の時に両親と住んでいたちょっと広い部屋が空いているので、相談してみる事にした。サプライズの連続で嬉しいけど大変な一日を終えて、ぐっすりと眠った。
窮屈な寝袋で疲れが取れて無いんじゃないかと気にしていたけど、皆んなスッキリ目を覚ました。
「僕の煎餅布団より、寝心地良かったです!」
他の3人も同様な感想で、大家のばあちゃんの朝ごはんを食べに向かった。
「おやおや、ばあちゃんの心が読めるのかね?しばらく空き部屋だったから、掃除やなんかは自分達でやっとくれよ。」
ばあちゃんも同じ事を考えていたみたいで、ふた部屋あるので工夫して4人で暮らせばいいとばあちゃんも思っていたそうで、その通りにする事になった。
今日は、協会の手続きを済ませ、引っ越しの準備を相談したところ、皆んな僕と変らない荷物の量らしいので、馬車を借りて、3件のアパートを梯子して、引っ越しを済ませてしまう事にした。
協会に行き、パーティー登録の手続きを済ませ、魔術師証明書を発行してもらった。学校に提出すると、基本的に登校しなくても出席日数の心配は無くなる。4人とも成績的にも問題無いので、卒業式にだけ出れば良い筈だ。
風香、音、愛菜の順で支部、アパート、学校を回る。
支部では他支部移籍の報告をするが、正式に登録している訳じゃ無いので、ちょっとした挨拶程度。
「慈子だったら、挨拶だけで何日も掛かりそうね!」
受付嬢に事情を説明し、『ハイ判りました。』サッサと行けよって雰囲気の返事を貰ってきた風香はちょっと自虐的に笑っていた。
アパートで荷物を積み込む、少ない荷物をサクサク運んで、大家のおばさんに挨拶。敷金とかないし、日割り計算なんて面倒な事はしない習慣なので、ここでも『では、さようなら。』鍵を返して終了。
学校に証明書を提出。セクハラ担任に卒業してからでもいいんじゃないかと必要以上の至近距離で説得され、応接室に通された。ソファに座ると座面が膝より低いため、スカートが覗けそうな姿勢になった、担任は計算していた様で正面に座って覗き込む。風香は出されたお饅頭を結界で握りつぶして、飲み薬位に圧縮して、
「学校ではずっとFランクだったけど、協会のベテラン魔術師さんに1日指導して頂いてEにランクアップしたんです。スボンの膨らんだ所、お邪魔そうですから、圧縮致しましょうか?」
担任は、風香の結界のせいでは無く縮み上がり、ズボンの不自然は膨らみも落ち着いていた、引きつった笑顔で送り出してくれたそうた。
音のいた支部でも同じような感じで、アパートでも機械的に鍵を返して終了。学校では、ハキハキとまでは行かないが、直接聞き取れる会話が出来るようになっていて、先生が驚いていた。
「あんなに苦労してもコミュニケーション取れなかった貴女をこんなに短期間で変えられるのって奇跡ね!パーティーのメンバーさんかしら?大切にして下さいね!この書類は学校に来なくても良いモノで来ちゃダメって事じゃないのよ、卒業式まであんまりないけど、いつでも歓迎よ!」
円満にさよなら出来たようだった。
愛菜のケースは、あからさまに出て行けオーラがメラメラ。流石に本人も凹んでいるので、サッサと退散した。
そして、皆んなで住むアパートに荷物を運んだ。荷解きの間に僕は自分の学校に届けを提出に行き、明日からのパーティー始動の準備が整った。
「ちょっと物置に来てくれんか?」
大家のじいちゃんと物置に行くと、分解した家具のパーツらしき物が有った。二段ベッド2台分のパーツとの事で、
「要るんなら、勝手に持ってっていいよ。ただ組立て方は判らんから、自分達でなんとかせい。」
早速運び出して奥の6畳間に組立て、手前の部屋をリビング・ダイニングに出来た。6畳だと布団3組で限界だから、手前1人は落ち着かなくて困ると思っていたのでちょうど良かった。
お陰で収納も多少確保出来たので、協会のお姉さんから貰ったお下がりで僕には大人過ぎる物や大き過ぎて着ていない物を3人に着せてみた。
「僕より似合います!」
なんとなく上手く分けて、おめかしして食堂に出かけた。協会の有る商店街にお酒を出さない食堂が有って、女の子にとって、とても治安が良いので、夜外食する時は、大抵はそこに行っている。
お店に入ると、お下がりをくれたお姉さん達がちょうど来ていて、4人で分けた事を伝え、改めてお礼を言うと、お姉さん達も喜んでくれて、僕には似合わなさそうでタンスの肥やしになっているものがまだあるので、また持って来てくれるそうだ。楽しくごはんを食べていると、厨房に僕らのデビューの話が聞こえたようで!お祝いにデザートをサービスしてくれた。アパートに帰り交替でお風呂に入って、早寝をして、明日に備えた。