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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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ノワール

 西国へは魔窟トンネルを使う、北の魔窟まで馬車で行って魔窟経由で西に行く。馬車はタダで預かって貰えるけど、馬は世話を見ないとならないから、結構な金額なので、カトリーヌに引いて貰って、馬車だけ預かって貰う。西に行ってからは、馬車をレンタル。カトリーヌが気に入ってくれれば馬車だけ借りればいいんだけど、引きたくないって言い出すかもしれないので、馬も一緒に借りておいた。

 ナベさんの支部に挨拶して、革製品を作っているお姉さんの店に行って、ベルとあらたのウエストポーチを頼んで、グルリ西国を巡る。南国の国境付近は前回クリアしているので、割と近場に纏まっているのでドンドン潜れる。東国のトライアングル程じゃ無いけど、上手く回れば移動と攻略で一日って感じなのが殆どなので、アパートの工事が落ち着く頃には制覇する積もり。

 基本的なパターンは、魔窟のある集落に泊まって、早朝から潜って夕方迄に攻略。次の集落に移動して一泊して朝から魔窟。遠かったり、魔窟の規模が、大きかったりすると、その分の時間は掛かっても予定通りサクッと制覇した。

 移動中もまあ予定通りで3日に1度ペースで盗賊に遭遇した。厄介な黒い力の鎧を着けたヤツ等がいなかったので、ビリビリ、じゃなくて、雷弾て眠らせて、危なげなく始末した。

 魔窟の最下層のお宝は、とうの昔に誰かの物になっていたし、その他魔石やアイテムも地味な収穫だった。盗賊からの戦利品もまあボチボチって感じ。17日間掛けてコンプリート、ナベさんの支部に報告に行った。

「『盗賊狩り』の噂が膨らんで良かったんじゃないか?」

「アタシ達には何のメリットも無いけどね。」

「そう言わんでくれよ!」

「世直しって奴じゃな、悪く無いじゃろう。」

「自分は、世の中の為に役立てて嬉しい。」

「ウチも!」

皆んなある程度は、達成感があるようだし、がめつく稼がなくても心配無いくらいの蓄えはあるので、経験を積んだ上に、世のため人のためになれたのって嬉しいよね!ナベさんは四季の姉さん達を送りに来たときの宿を取っていてくれて、お風呂でリラックスして上がると、ご馳走が待っていた。

「最近流行りの泡葡萄酒だ、エリカには物足りないかも知れないけど、試してくれ!」

ナベさんがコルクを抜いてくれた。シュワシュワっと泡が弾ける白葡萄酒!

「ジュースみたいで、今まで飲んだお酒の中で1番好きかもです!」

ナベさんの予想はハズレて、姉貴も気に入っていたみたい。皆んなも好きみたい。ベルもこっそり?飲んで親指を立てていた。

 翌日、ベルとあらたのポーチを受取りに行くと、

「エリカさん?」

革職人のお姉さんは、変身した姉貴に気付いて驚いた。

「以前からお色気たっぷりでしたけど、こんなに清楚な姿なのに、どうしてそんなに艶が滲み出るでしょう?」

「あら、コレでも控えめですのよ、最初変身の時は、サキュバスの化身かと思いましたわ!」

愛菜は色気でどんな男も手玉に取るという悪魔に例えると、風香と音も納得の様子だった。永吉(エリカと名乗ってはいたが)を知るお姉さんに変身の経緯を話すと、なぜか納得だった。予備も含め3つのポーチを受取って、古の魔窟に向かった。

 馬車と馬を返して精算。初めてここに来たときにガイドしてくれたお兄さんがいて、視線が風香にロックしてしまい、お釣りの銅貨を金貨と間違えた。

「こんなに貰って大丈夫?」

お兄さんが正気に戻ったので、銅貨と取替えた。

 9階層迄潜れば、北へのトンネルが有るけれど、あらたの経験の為と、東雲の学習の為に下迄降りる事にしている。皆んな戦力アップしているし、姉貴、ベル、あらたが加わって居るので、他の魔窟並みにサクサクと潜り、20階層でランチ。更に潜って36階層、黒猫達のお母さんが居た37階層の入口は、また蜘蛛の巣が張られ、蜘蛛の魔物が待機していた。風香が矢を撃ち込んで、あっさり駆除。中に入ると、鬼?二足歩行の5メートルはある人型で、腕が3対ある。上の両手で巨大な斧を構え、下の両手にはそれぞれ刀を装備、中の両手は空いていたので、バランスを取ったり掴んだりするんじゃないかな

「任せて!」

いつもは音の影に隠れているプランタンが、先陣を切った。後に続いた3匹も、風香が怪我をした時よのような本気モード。刀を躱して爪で抉る。目まぐるしいヒットアンドアウェイで六臂の鬼は傷だらけ、上段に構えた斧は、振り下ろすチャンスさえ与えなかった。黒猫達の勢いに出遅れていたシフォンとショコラが加勢してそれぞれ腕を支配した。身動き取れなくなった所を愛梨が東雲でトドメを刺した。

 轟音と共に崩れ落ちた鬼は巨大な魔石と、小さな檻になった。魔石を回収して檻に近付くと、先に黒猫達が飛び付いていた。中には黒猫がいて檻を壊すと、出て来た黒猫は、人型に変身した。うちの4匹も人型になり争う様に抱きついた。

「この子達の母です。子供達を世話してくれてありがとうございます。それから眼を直して頂き重ねて感謝いたします。」

出産直後に仔猫達を奪われ、六臂の鬼に捕まって、ここに監禁されていたそうだ。僕等がここから出た時に一緒に脱出したけど、魂が鬼の元にあったので呼び戻されていたらしい。

「これのお陰で吸収されずに済みました。」

掌に、魔石が現れた。魔窟を出た時に呑み込んでいた魔石かな?

「あっ僕等、勝手にお名前付けてたんですけど、本名っていうか、お母さんの付けたお名前の方が・・・、」

「いえ、考えているうちに奪われてしまったから、お名前はまだでした。」

4匹の名前を伝えると、

「これからも是非その名でお願いします。私も『クロ』と呼ばれていましたが、今日から『ノワール』と名乗る事にします。」

ノワールは魔石を返そうとしたけど、断って持っていて貰うように言うと、猫が顔を洗う仕草のように拳で自分の頬を擦ると長い長いヒゲが抜けてきて、

「弓をこちらへ。」

風香が黄昏を渡すと弦にヒゲを重ねると眩く光り融合した。

「私は郷に帰ります。子供達をよろしくお願いします。」

パッと宙返りして元のサイズになると、更にもう一度宙返りすると消えてしまった。

 もう1つ降りて4匹の居た階層に到着。魔物は居なく、黒猫達はお気に入りの公園で遊ぶ子供のように遊んでいた。

「ご飯にするから、小さくなって!」

風香の声でおとなしく戻って来た。

 最下層に降りて晩ごはん。テントを張って一泊する。日課になっていた風香争奪戦は交代制になったようで、今夜はエテが風香、オートヌがベル、イヴェールがあらたの寝袋らしい。

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