表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
75/142

角無しの女王

 岬地区にある最後の小鬼コロニー討伐に向かう。山歩きが最短になる地点まで宿の馬車で送って貰った。あたらが道を選び、愛菜が見張りを見つけ、飛び道具で始末。スイスイとコロニーに辿り着いた。

 小さな洞窟に見えるけど、この前みたいに小さな入口と思った方が良さそうだよね。黒い力の染みた鎧のデカイヤツが2匹で入口を護っていた。

「顔が丸出しだから、魔力なしで狙ってみるわ。」

風香が放ったノーマルの矢は、小鬼の眉間に突き刺さり、一発で仕留めた。もう1匹は洞窟の中に何か伝えると、デカイのがゾロゾロ出て来た。先頭のヤツが黒い剣を振るうと黒い力の塊よ様なモノが飛んで来た。ベルが薙ぎ払うと、黒い塊は、三日月状の刃になり、小鬼達を襲った。半分位が真っ二つになった。残りを数えて5匹。フル装備の鎧は最初の2匹だけで、あとは兜を被って無かったり手や足の防具を着けて無かったりしたので、出ている所を飛び道具で攻め、ダウンした所を浄化してトドメを刺した。

 洞窟の最初空間は、見張り達の待機所の様で、黒い力を浄化すると、さっき後から出て来た奴等が着け損ねた防具が残っていた。剣や刀も浄化して鑑定すると、ほとんどは安物だったけど、ボチボチのお金になりそうなモノも混ざっていて、回収してポーチに仕舞った。

 次の空間とは結界で仕切られていて、愛菜は赤く光らせた東雲で破壊、進んだ先には武装した角無しが待っていた。サイズ的には人間の男性と変わらなくて、愛菜のセンサーを頼りに角無しと判断した。ベルの飛龍が周囲の黒い力を巻き込んで、攻撃に使うので、浄化は楽に済み、鎧の浄化に取り掛かった。ベルの大技で転がっているヤツらから浄化とトドメ。他は結界で牽制しながら白い霧で黒い力を削いで防御力が落ちた所を鎧ごと斬り捨てていた。時間は多少かかっても安全に始末して行って、最後に飛龍が固めた黒い力の塊を浄化してこの空間をクリア。回収した武器は名前の付くレベルじゃ無いけど、結構な値が付く物が多かった。

 愛菜は更に次の空間への結界を破った。

「魔物の気配ゼロですわ!」

交尾スペースらしき空間はもぬけの殻で黒い力の浄化だけで次へ進む。3箇所あって、2つは何か実験でもしていたようなスペースでそこも魔物ゼロ、もう1つは女王の間だろうか?更に厳重な結界を破ると何も無さそうな空間を、スッと浄化した。薄明るくなると、岬の女性達が着る、ハイウエストの長いスカートの女性?メス?

「なぜ妾の子を殺した?」

角無しの女王らしい。オスが2匹、メスを護る様に剣を構えた。

「淑女の前でその格好は感心せんのう。」

ベルは、全裸のオスに苦言を呈したが、今更身支度って訳も無く、黒い力を纏った剣を振るった。黒い力が渦になって攻めて来たけど、ベルが薙ぎ払うと槍の様になって角無しに返り、オス2匹を貫いた。

 メスは愛菜が雷弾で眠らせ、首から下げていた黒い魔石を浄化した。途中感じたのは、このメスの記憶みたいで、食事(エサ)と交尾だけしか感じ取れなかった。魔石を取ると、角無しの女王は見る見るうちに老化し、干乾び、白骨になった。

 辺りを調べると衣装が数着掛けてあった。

「チョエンとか、岬地区から来た薬剤師のお洋服みたいね!」

一応それらも回収して、来たルートを戻った。何事も無く外に出て、遅めのランチ。あらたはビビっていたけど、カトリーヌに空輸してもらって宿に帰った。

 戦利品の換金に行くと、武器、防具、衣装、どれも20年程前に滅んだ、ここから海の方を実質的に支配いていた豪族の物らしく、この豪族が陥落した事が、魔族の勢いになり、戦いが泥沼化したキッカケと考えられている。武器と防具は虫メガネの査定よりどれも高額で買い取ってくれたけど、衣装は二束三文。持ち帰る事にした。

 宿に帰って、持ち帰った衣装の話をすると、村田のジジイがここに来る前に泊まっていた集落が、滅びた豪族の本拠地で今でもその末裔が住んでいるので高く売れるかは微妙だけど、喜んで貰えそうなのが解ったので、そこに持ち込む事にした。のんびりお湯に浸かって美味しい北国料理を味わって明日に備えた。

 翌日、起床は相変わらず日の出の時間でも、のんびり出発。午前は何事もなく進んで、お弁当食べながら午後の確認。あらたの見立てでは、

「近くの3つ集落から遠い中間地点のこの辺が盗賊がいそうな感じやね、隠れる藪とかもありそうやし!」

まだ時間を気にしなくても大丈夫なので、予測エリアを突っ切る予定。

 午後出発して直ぐに、あらたの注意地点に差し掛かった。案の定、怪しい馬車から寄って来て、怪しい男達が降りてきた。黒い力のフル装備が10人程。

「久々に暴れたい気分ですわ!」

愛菜の口調で、シフォンが話しパッと元のサイズになると!他の猫達が続いた。鎧がどうこうってレベルじゃなく、猫パンチで粉砕。戦利品って売りに出せる状態の良いものは皆無で、盗賊達は拘束の必要も無さそうな容態だった。一応浄化して回収した鎧は、鉄くずとしてなら売れるかな?刀は取り敢えず宿賃くらいにはなるかな?馬車はボロボロだし、馬もヨボヨボなので小銭くらいかな?いつものように盗賊の馬車に積み込んで、カトリーヌの指示で馬が付いて来るパターンで出張所迄運んだ。かなり傷んでいて人相が良く解らなかったけど、それなりの報奨金の付いた盗賊で予想以上の金貨が積まれた。コロニーで見付けた衣装は、現在、幻の織物とされているこの地方の特産物だった織物で、文化の復興、伝承に役立つと、織物の組合の幹部が喜んでくれた。魔族との戦以来、困窮している地域なので、衣装はプレゼントにすると、お礼と言って希少価値の高い、岬人参を分けてくれた。お宝の薬のレシピによく登場する素材なので、面白いモノが、作れるかも知れないな。

 村田だか田村のジジイの泊まっていた宿に泊まり、ヤツが博士を名乗るニセモノだと説明すると、小鬼の大量生産を防ぐ研究所をここの集落に建てるからと、出資を求め、多く出資したら小鬼対策で優遇されると聞いて、集落全体で3箱程集めたそうだ。尋問(?)で隠し財産も抑えているので、協会に証文を持って行けば、全額とは行かなくても返して貰えそうなので手続きを勧めた。研究所誘致に便宜を図ると言うので、宿賃を取らなかったらしいので、僕らが肩代わりした。随分贅沢していたようだった。

 お風呂でリラックスして、ご馳走タイム。岬風の料理だけど、辛さがコントロールされていて、とても美味しかった。宿の人に話すと、食べる人に合わせて味を調整してくれているそうで、『岬風』の貼り紙を見て、

「やっぱり、辛いかのな?」

ってちょっと沈みぎみだったのを見て、1番辛くないレベルにしてくれていたらしい。お酒も東国の米の蒸留酒で果汁と炭酸水で割って、料理と共に堪能した。

 翌朝、またのんびり朝湯。ニセモノジジイが泊まった隣の集落へ移動。全く同じ悪事を働いていた様で、同じ様にリカバリした。

 更に翌日。宿は連泊で取っておいて、あらたの居た出張所に向かった。挨拶をして、アパートを引き払う。新の服(メンズふく)を古着屋に持って行って、銅貨2枚。10枚位あったけど、相場が解らないし、虫メガネで見ても鑑定不能なので、あらた本人が、

「ゴミにするよりええよ!」

と納得しているので、売り払った。査定中、他の皆んなは、着替えが全く無くなったあらたのお洋服を物色、それぞれのオススメであらたを着せ替え人形にして遊んだ。取り敢えず普段着回すのに最低限は揃え、ちょっとおめかし用とかも合わせ、金貨2枚で大量購入。

 一通り用を済ませて宿に戻る。明日からの強行日程に備え、しっかり充電した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ