表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
68/142

人として

 休憩の時、馬車のメンバーを入れ替え、盗賊の馬車に、姉貴とベルと僕の3人になった。

「ちー、あの3人どうしたい?」

姉貴が真剣な眼差しで僕を捉える。

「どうって?本人達の自由じゃん!」

「自由ってなんじゃ?あの子ら、どうやって生計を立てる?出来る仕事は1つしか無いはずじや。」

って事は、カラダを売って生きるしか無いって事だよね。理性が無い今の状態なら本人達は苦じゃ無いのかもしれないけど、そんなことはさせたくない。選択肢の中にあって、キチンと理解して選ぶんなら仕方が無いかも知れないけど、やっぱりイヤだ。

「言葉と最低限の知識を覚えるまで、僕らで面倒見ようよ!」

「それって、いつまで?その間に魔王が復活しちゃうかも知れないわよ!あたしもつい、連れて来ちゃったけど、角無しのメスって処分したほうが、あの子達苦労しなかったと思うわ。」

確かにやっとトイレを覚えただけで、不通のペットの方が遥かにお利口さんだ、僕は何も出来ない自分に腹が立った、考えれば考える程、訳が解らなくなって、気が付いたら姉貴の胸で号泣していた。

 結局、じいさんの取り調べや次の準備、それと日之出国のひかりさんに発注している、ベルの戦闘服が届く事なんかを考慮して1週間、彼女達の引き取り手を探す時間を作った。


「カトリーヌ、お名前どうしよう?」

「ここで暮らすんなら、この土地の人に馴染んだ名前がいいよ!ベル、考えてよ!」

「それもそうじゃのう。ところで儂の名前の時、何か言おうとしてやめたじゃろう?」

「ああ、あれね?『ベル』って竜の言葉で美しいって意味なの・・・」

「それは黙っていてくれて助かった、意味を知ったら、そう名乗るのは気が引けるわい!」

「あとね、猫達の名前が皆んな、竜の言葉なの、猫と一緒ってどうかなって思ったの。」

「元々、小鳥の名じゃ、猫達の仲間になれて嬉しいくらいじゃ!」

色んな事を話して、土地のことばで、パダ(海)、ハヌル(空)、ユク(陸)に決まった。3人は『名前』という考え方は理解したようで、呼ぶと返事をしてくれるようになった。言葉も数は少ないけど、喋る言葉はハッキリしていた。

 宿に一緒泊まって、色々話しかけたり、お洋服を着せたりして、最低限の知識を習得させる。3日目には洋服の脱ぎ着、顔を洗う、歯磨き、が出来るようになり、自分達を含め、僕達の名前を把握したようだった。なんとかスプーンを使えるようになり、一緒に食堂デビュー。

 1番困ったのは、(小鬼の行動なので敢えてこう言うと)オスを見ると交尾を求める姿勢になる事だった。常に監視して、寝転がる前に確保。何度か繰り返すとダメだって解ったみたい。その代わり、お布団の中での欲求不満解消は盛大にやっていた。毎晩聞いて少しは慣れたけど、言葉を覚えたせいか、小鬼の鳴き声だったのが人間らしくなって来て、また寝不足になってしまった。

 4日目、日之出国からの荷物が届く予定。ベルのメイド服姿が見られる筈。ベルは小鬼を捕獲する時、自らを囮にする為、女装していたので、普段着は抵抗無く着ているけど、コレは大丈夫かな?まあ、実用性を考えたら文句は言わないよね?きっと可愛いよね!

「お届け物です!」

ん?早い?朝の船で運送業者さん経由で午後から夕方って聞いていたのにどうしたの?

「来ちゃった!」

宿に現れたのは、土方三姉妹、じゃなくて親子だね!蛍先生とお母さんとママ。

「慈子ちゃんゴメンね!ママ、悪ノリしちゃって、メイド服で魔窟なんて浮き過ぎて困ったでしょ?」

ひかりさんはウインクしてペロっと舌を出していた。一応反省との事だけど、満面の笑みで取り出したベルの衣装を本人に当ててうっとり。

「どうじゃ、似合うであろう?」

ベルは、どうやら鹿雄博士の人格で、幼い頃に死に別れたお姉さんの面影を褒めているようだ。

「新作も着て見て!(みちる)(ほたる)の厳しい検閲をクリアするの大変だったのよ!」

僕等の分も用意してくれていて、新作に袖を通した。と言ってもノースリーブだけどね。甘甘フリフリのメイド服と比べると、戦闘服って感じかな?飽くまでも比べると(・・・・)。プリーツのミニは、タップリフレアとエプロンに比べるとスッキリだし、フリルやレースがかなり減っている。代わりに、胸元の露出が増えたかな?風香や姉貴は溢れて来ないか気になっちゃう。僕が気になったのはガーターベルト。靴下が太腿の半分より少し下迄で、スカートの裾はまだかなり上なので、靴下を留める部分がしっかり出ちゃうんだよね。下着がはみ出ているイメージで恥ずかしいんだけど、ひかりさんは、

「今度のデザインのポイントなの!」

出ていてオーケーとの事。


 保護している3人の事を相談すると、

「4、5歳位まで若返る事って出来そう?もうちょい下かな?」

あの薬の恩恵を受けている満さんは、今の知能に肉体年齢を合わせて、しっかり躾けていけばキチンとしたレディに育つって意見。

「解らないけど、出来る気がするです!」

更に、病院で引き取って同世代の子供達と過ごさせて、他の子供の影響を受けさせてはと、提案してくれた。年齢が見当付かないけど、結構オバサンにも見えるし、お菓子をねだる仕草は子供のようにも見える。満先生は、3人の歳はバラバラで20台後半から30台半ばって読んでいた。取り敢えず中を取って30歳?鹿雄博士が飲んだ分をつくって3等分すればいい線かな?

 薬が出来上がると、満先生は半分にして、それを3等分したものを飲ませた、彼女達の感想は聞けないので、翌朝の容姿の変化を待った。

 朝になり、様子を見に行くと、ユクは僕等と同世代に見え、ハヌルはハタチ位?パダはもうちょい上って所かな?満先生は分量を違えて4つに分け、パダから順に多い物から飲ませた。

 日中はそれぞれ用事を済ませる。女医さん達は、一応本来の(・・?)目的の薬草とかの買付けに行き僕等は協会に行ってジョンホの取り調べの報告を聞いたり、残っているコロニー潰しの準備。ひかりさんが残って3人の面倒を見てくれていた。

 夕方、宿に戻ると、3人は平仮名の読み書きが出来るようになっていた。会話の方もビックリするほど語彙が増えていた。

「何か教えるには、先ずは言葉がしっかり伝わらなきゃね!」

ひかりさんは、蛍先生を医者に育てる為、幼児教育からしっかり研究して実践したそうだ。

 更に翌朝、小学校低学年位になった3人に5等分した薬を飲ませ、残りを自分と満さんで飲んだ。ニッコリ笑って、

「明日からは姉妹なんて言わせないわ!」

同級生に見える計算らしい。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ