旧友
「何で解らないんだ!小鬼を制するには小鬼なんだ!」
小鬼の被害を撲滅する為、協会の専門家が集まっていた。メンバーには若かりし日の文京研究員も参加していた。小鬼を使役して、小鬼を退治する案を主張するキム研究員は、孤立する会議を飛び出してしまった。彼は文京鹿雄の幼馴染でもあり、親友で、小鬼研究の同志でありライバルだった。
主張が通らず、協会と袂を分かち独自の研究を進めていたらしい。
「さっきの奴、お前が造ったのか?」
「かわいい我が子を殺された俺に聞くのか?」
どうやら、このじいさんが、アイツを造ったんだ!
「知能以外は自信作だっのに、半世紀ぶりに会ったと思ったら、また邪魔しやがって!」
小鬼使役案内に真っ向反対していたのが文京さん、つまりベルの若い頃。ん?文京博士の若い頃。じいさんにとっては追い出された気分だろう。
「想い出話しをしに来たわけじゃ無いよな?」
「そりゃ、お主がこんな所に居ると思わんて。で、何がしたいんじゃ?小鬼退治って訳では無かろう?」
「なあ、鹿雄、小鬼ってどうやって出来ているか知ってるよな?ほとんどは人間の母親から産まれるんだ、つまり小鬼は人間の子孫なんだよ!厄介者扱いは、人間の勝手な都合じゃねえか?お前もそのカラダなら俺の孫を産んで見るか?」
今度は僕らを眺めて、
「お嬢ちゃんの遠足かな?おじさんの息子達のお嫁さんに丁度いいな、お義父と呼びなさい。」
そう言うと、奥の部屋に声を掛けた。
「おお、息子達!花嫁が来てくれたぞ、早いもの勝ちだ、好きな娘を選べ!」
奥からゾロゾロと合成魔物が現れた。さっきのとは違い見かけはほぼ人間だ。後で調べると50パーセント以上が人間の遺伝子なのでそんなものなんだね。
いつものパターンで風香の結界の中から飛び道具で片付ける。姉貴は結界でじいさんを捕まえ、お兄さん達に預け、奥の部屋に踏み込んだ。僕もあとに続いて、合成魔物とか角無しとか区別は解らないけど片っ端から斬り倒して進む、突き当たると檻があり、全裸の角無しのメスが3匹。
「これで最後ね!」
子午棒を構えた姉貴は、攻撃を躊躇った。
「ちー、虫メガネで調べて!」
「あっ、はい!えっ?に、人間です!」
姉貴は檻を叩き壊し3人を助け出した。
「攫われて来たの?」
「・・・・・」
「どこか痛い?」
「・・・・・」
「おなか空いてる?」
「・・・・・」
何を聞いても、上の空。取り敢えずポーチから保存食を出して渡すと匂いを嗅いで、食料だと判ると、包装紙のまま噛り付いた。他の二人が奪い取ろうとするので、慌ててもう2つ出して配った。
「袋から出して食べなよ。」
全く耳に入って行かないみたい。足枷を壊して、前の部屋に戻った。じいさんが言う『息子達』は骸になり、お兄さん達が調査していた。
「コレの出番じゃ!」
ベルはポケットからハンカチを出して、パッと広げると、四畳半位のシートになった。お兄さん達がそこに骸を並べると、
「角を合わせて貰えるかのう。」
1箇所を自分て持つと、お兄さん達が同じように持って四つ角を合わせるとハンカチでお饅頭を1つ包んだ位になって、軽く潰して元の畳んだハンカチになってポケットに仕舞った。
一段落して助けた女性達に、お洋服を着てもらおうと、姉貴が取り敢えずって3着ポーチから出したけど、匂いを嗅いで、ちょっと舐めてポイ捨て。急に立ち上がってお兄さん達に駆け寄って、仰向けに寝転がると脚を広げて、小鬼のメスが交尾の時に出す鳴き声を上げた。
「食欲と性欲だけで生きるよう調教されとるんじゃな、言葉も無視してるんじゃ無くて、理解しとらん可能性が高いな。先ずは餌付けじゃ。」
お兄さん達に振られると丸くなって怯えていた。後から解った事だけど、交尾をしないって事は、廃棄処分を意味するそうだ。今度は、お菓子を袋から出してから配った。美味しいのかどうかは解らなかったけと、取り敢えず落ち着いたみたい。
他に部屋は無いか?残っている魔物は居ないか?捕まっている人間は居ないか?慎重に調べて、来た道を戻った。魔窟の場合、階層の魔物を全滅させても、もう一度通ったらまた元通りって謎の現象が当たり前なんだけど、ここは往路で片付けたままの状態で、バトル無しで外まで戻った。
ベルはじいさんに『ウソ発見器』のような魔法を掛けた。他に巣は無いかを聞いて、ここと、先に潰したコロニーだけだったので協会に戻る。馬車の所迄、カトリーヌが空路でピストン輸送。4往復で完了。じいさんは拘束しておけばいいけど、助けた女性達はやっと服を着てくれたのと、馬車のシートにある程度はジッとしていられるようになった位で移動中何が起こるか想像も付かないけど、縛り付けて置くのも気が引けるので野良犬を拾った位の意気込みで餌付けと躾を頑張った。一応飼い犬程度まで、意思疎通が出来るようになったので、皆んなでもご飯を食べた。箸やスプーンは使えないけど、他の人のを狙ったりはしないので一安心。3張りのテントに一人ずつ、僕らが2人ずつ付いて、お兄さん達は馬車でお泊り。かなり疲れているので、即爆睡かと思ったけど、保護した女性達は、満たされていない欲求を解消する為、自身で快楽を味わっていた、気になる鳴き声が延々と続いて、気が付くと朝になっていた。交代で見張りをしてくれていたお兄さん達の方がちゃんと休めた顔をしていた。
定員オーバーの馬車で無理やり南端の町を目指す。カトリーヌは馬になってお兄さんを載せて、あとの二人は馭者席。じいさんは荷台。オスを視界に入れないようにして、保護した女性を食欲だけでコントロール。まあ順調にランチタイム。休憩もほとんどせずに再スタートしようと思ったら、丁度良さそうな馬車2台に乗った盗賊が登場。サクサク片付け、拘束した盗賊達を1台に積み込んでもう1台に分乗、ゆったりの旅になった。




