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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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小鬼のコロニー

 布団に入ったら、

「慈子?どちらかはタイプじゃありませんの?」

「えっ?タイプとか考えて見てないよ、ただ、あの戦力で捕まっちゃうのは弱すぎだよね。」

「ちー、それを言ったら、選択肢に残るのラッシーみたいな人達位になっちゃうわよ!」

姉貴は一応は心配してくれているみたいなんだけど、隙きを見せたらイジってくるんだろうな。

「そう言う愛菜はどうなの?」

「少なくとも、あの男は無いわね、強いて上げれば、小柄でおとなしくしてた方かしら?」

音をロックオンしていた人だな?音にも聞くと、

「自分は、優しそうで気の効く太めの方ですね。」

あらら、またハズレ、その人なら風香に魅入ってたよね?

「わたしは、地図の説明していた人が、いいかな、熱血漢って感じがいいわ!」

3人とも打ち合わせたように、カップル成立しなかった。姉貴は、折角の機会なので、『好きな人』『好かれてる人』との距離のとり方を勉強するように言った。何をどうしていいのかサッパリ解らないので正直に姉貴に相談すると、

「ちーはその前に、自分が美少女だっていう事をちゃんと自覚しなさい!」

「姉貴はどうなの?自分だってちゃんと自覚してる?」

「アタシはしっかり自覚してるわ、自分でも驚く位の美しさよ!でもね、ちょっと前までオッサンだったのよ、相手の方に申訳無いわ。」

ちょっと暗く返答していた。その後は恋バナに花を咲かせ、日が変わって暫くしてからやっと眠ったらしい。


 翌日、日が昇るとやっぱり癖で起きてしまった。朝湯に浸かって、食堂が開くのを待って朝ごはん。のんびり支部に向かった。

 おっちゃん達と、黒い力専門の人達はそれぞれ地元に帰るそうで、小鬼狩りは、僕らと小鬼専門家、それと博士がメンバーだった。

「えっ?博士、戦えるんですか?」

(わし)か?」

 小鬼退治に貢献し続けているキッカケとかを、話してくれた。


 70年程前、鹿雄少年が幼い頃のお話。

「姉さん、集落の結界が解けているみたいです!」

集落の異変に気付いて、急いで家に帰ると、二人暮しの姉が小鬼達に犯されていた。剣が得意の鹿雄は小鬼達を斬り捨て、姉の命は助かった。ただ当時は、小鬼の生態が今以上に解っていなかったので、人間の女性が小鬼の子を孕む事や、胎児が母体を喰って産まれてくる事は一般的に知られていなかった。鹿雄はこの後、姉の仇で自身の甥である小鬼を殺す事になる。そんな体験から、小鬼退治と研究に人生を捧げたそうだ。

「こうやってな、ミルクを温めると小鬼が寄って来るんじゃ!」

女装してウイッグを被ると、あまり不自然じゃ無いオバサンに変身した。

「昔は自毛で賄っていたんじゃがな、薄くなっちまった!」

モミアゲと後頭部にわずかに残ったシラガを見せて大笑い。

「囮が必要なら、僕らがいますからムリしないで下さい!」

「イヤ、儂の花道じゃ、好きにさせとくれ!」

 討伐の予定と、簡単な作戦会議をして、お昼を食べてから出発した。


 地図上、コロニーに1番近いと思われる場所に馬車を隠し山道に踏み入る。ドンドン進んで獣道を辿り、沢伝いに登ると滝を発見。滝裏に洞窟の入口があり、そこがコロニーになっているそうだ。愛菜はセンサーで見張りを見つけると、魔力弾でさっさと始末した。滝の上げる水飛沫で清々しい気分だったけど滝に近付くと黒い力の雰囲気が漂って来た。

「先ずはおびき出して、数を減らそう」

博士は火を起こし、缶の蓋を開けて温める。洞窟からゾロゾロと小鬼が出てきて、博士を取り囲んで二重結界を張った。姉貴が外側に出られない結界を、内側に中に入れない結界を風香が張って、その間に溜まった小鬼をザクザクと始末していく。結界と結界の間のスペースはあっという間に小鬼の壁になり、分厚い小鬼の壁から愛菜センサーに引っかる魔物の反応が無くなるまで斬り続けた。10分程で片付け、死骸を纏めて焼き払う。

「耳は回収しないの?」

お兄さん達は驚いて居たけど、中の討伐を優先したほうが得策だろう。そんな説明をしながら洞窟に向かった。

 洞窟の中は、黒い力が充満していて早速浄化した。薄明るくなると、巨大な小鬼が現れた。黒い力の防具を纏っていたので姉貴と風香が結界で動きを鈍らせ、愛菜は白い霧で装具を浄化。音か槍で攻める。僕がこっそり背後を取って、直接防具に触って浄化、黒い力が薄まって来ると、音の槍が本領発揮し、小鬼の兜が中身入りのまま転がった。

 デカイ奴が護っていたのは繁殖場で、攫ってきた人間の女性が繋がれていた。3人居たけど、1人は白骨化、1人は何とか人間だって判る程度に腐敗、もう一人は最近、胎児に喰い殺されたようだ。博士の説で言うと、魔族の混血比率が高い小鬼を孕んでしまったのだろう。博士は二人を火葬し、白骨死体の骨を拾い集めた。あとの二人も骨壷に収めて撤収の準備。

「まだ奥がありますよ!」

風香が指差す隅っこには、何かの力を感じた。

「通せんぼのつもりかしら?」

愛菜は東雲を赤く光らせると、何の抵抗も無く結界を解いた。

 奥のスペースには、女王なのかな?3匹いるから王女とかかも?交尾中が3組みと順番待ちの小鬼、黒小鬼、角無しが数匹。武装していなかったので、飛び道具で瞬殺。黒小鬼は魔力を吸収して効き目がないので、僕が担当する。慌てて武器を取ろうと伸ばした手を斬ってサクッと首を落としてお終い。女王的なメス3匹は博士が始末してくれた。

 他に通路や小部屋なんかが無いか確かめて、洞窟を出た。

「これで思い残す事も無くなったな。」

ボソッと縁起の悪い事を漏らす博士に、

「これから死ぬみたいな事を言わないで下さい!」

博士は真面目な顔で、

「充分長生きした。それに儂の生まれ育った集落はこの辺でな、姉の仇は取れた気分じゃ。本当にそろそろ死ぬ病なんじゃ。」

博士は前立腺癌と言う病気で何年も闘病中との事。癌が大き過ぎて手術も魔法治療も出来ないそうだ。博士は病気の事を教えてくれた。

「癌になった所って、男性にしかないんでしょ?魔法で女性になったら消えちゃったりしないのかな?もし上手く行ったら他のコロニー制圧だって参加できるよ!」

「そんなに旨い話って、あるんじゃろうか?」

「そうですわね!仰る通り、女性にしか無い器官が癌になるだけかも知れませんわ!ただ、今の時点で解っているのは、博士の余命が少ししかなくて、変身するともしかしたら助かるかも知れないって事ですわ!」

博士は頷いて、変身に活路を探す事にした。

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