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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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デビュー

 現場に着くと、巣が幾つもあり、片っ端から風香の結界と愛菜の氷魔法の合わせ技で凍結させていった。

「長髪の嬢ちゃん、チー坊のナイフに風魔法を纏わせてやってくれるか?」

音がナイフに触れると刃が銀色に輝いた。

「チー坊、真冬に空っぽの巣を取った時と同じ要領だ、巣は魔法で凍って冷たいから、一個ずつな!」

屋根に登って巣を取り外す。風魔法を纏ったナイフは硬い筈の巣が、チーズの様に切る事が出来て、サクサクと外し、ロープを付けた袋で(どれみ)に降ろした。2時間程で8つの巣を撤去。依頼をコンプリートして協会に戻った。


 協会では、おっちゃんの奥さんが待っていた。協会の事務をしているが、受付にいると、ひと目見ようと男達が群がって仕事にならないので、普段は事務室で働いている。美人なうえに上品で、おっちゃんとは結構歳が離れている。おっちゃんが、何処ぞの貴族様から攫ってきたっていうのが専らの噂だ。

「パーティーの準備があるから、測定してお風呂に入って来てね!」

「あっ、いや、協会の登録料、まだまだ足りないから、貯まった時にお願いします!」

「チー坊、いいからカミさんの言う通りにしておけ!」

協会のお風呂は正式に登録した魔術師しか使えないので神妙な面持ちで入って行った。更衣室で身体検査、魔力測定をすると、おっちゃんの奥さんは頷きながら測定値を確かめて、

「ごゆっくりね、お風呂上がったら、これに着替えてね!」

脱衣カゴに鎧らしき物を入れて行った。


 協会の女湯は覗き対策が施されているそうだ、

「僕の入浴シーンなんか全く需要ないけど、仲間になった3人はそれぞれタイプの違う美少女だから、この仕組みは有り難いよね!普通の銭湯だと、ちょっと魔力があれば除き放題だもんね。」

そう呟いてのんびりお湯に浸かった、普段は借家の協同風呂で、ちゃちゃっとすませるので、とびきりの贅沢を味わった気分。それから、お風呂での風香は圧巻で女の子同士の僕でさえ、見惚れてしまい、視線を逸らすのに覚悟が必要だった。音もただのスレンダーじゃなくてメリハリがあるし、愛菜の華奢なカラダと小柄な割にスラリと、伸びた手脚を見ると、僕のプヨプヨはちょっと恥ずかしく感じた。もっと恥ずかしかったのは、

「慈子、あなたソコちゃんと処理しなさい!」

「ソコって?」

「ソコはソコですわ!」

愛菜の視線確かめて、他の3人を見ると、みんなツルツルだった。魔法で処理しておくツルツルにするのがレディの嗜みらしい。誰かとお風呂に入るのは、小さい頃ばあちゃんと入った位だから、そういう常識が抜けていたんだね。

「仕方が無いわね!G子には無理なのかしら?」

愛菜は、普通は他人が触らない所に手を当てた。

「は、恥ずかしいです!」

鏡を見なくても真っ赤になっているのが判る位に耳が熱かった。

「あなたが、そんなに恥ずかしがったら、私がえっちな事してるみたいじゃない!」

愛菜は赤面しつつも、覗き込んで仕上がりを確かめていた。

「コレ、毎日するの?」

「最初は週に1、2回よ!個人差があるけど、2、3ヶ月で生えなくなる筈よ!」

少な目でも10回位はお願いすることになっちゃうの?かなり憂鬱だな。


 お風呂を上がると、風香が魔法で髪を乾かしてくれた。用意してあった鎧は、20年位前のレア物で、Fランクの稼ぎでは一生手が届きそうも無い値段の筈。レプリカだとしても結構するだろうな。当時は魔族との戦いが激しかった頃で、防具としての機能がどの年代の物と比べても優秀な事と、戦で団結した王侯貴族が地盤を固め、華やかな暮らしをしていた時代でもあったので、特に女性の鎧は美術的な価値も高い。見たこともないくらいに手の込んだデザインからすると、王妃様や王女様に寄り添う女性騎士か、王女自身が姫騎士として着用した物だろう。取り敢えず身に纏いロビーに出た。

 普段は殺風景なロビーが、華やかなパーティー会場に変身していた。驚いていると、おっちゃんの奥さんが、

「パーティーの準備って言ったでしょ?」

ニコニコ笑っていると、受付のお姉さんが司会っぽく、

「只今より、ステータスプレートの授与式を開催致します。支部長、ご登壇お願い致します。」

「支部長なんているんだ?ちっちゃい頃から通ってるけど、エライ人なんて見たこと無いよ。って、えっ?おっちゃん?」

「よーし、新人達、上がって来い!」

恐る恐る、壇に近付くと、

「皆んな腹減ってるから、さっさと来い!」

と、おっちゃん、いや支部長が急かした。

浅草(あさくさ)愛菜、Eランク!船橋(ふなばし)風香、Eランク!代官山(だいかんやま)(どれみ)もEだな?うん、おめでとう!あと、チー坊、Gランクのプレート無いから、Fので勘弁してくれ!千代田(ちよだ)慈子、Fランクだ!」

一同大爆笑。晴れて協会の一員になれたみたいなんだけど、登録料払って無いし、授与式なんて聞いたことないよね?全身から『?』を溢れ出していると支部長が、

「チー坊がパーティーを組むって言ったら、皆んなが、お祝いのカンパしてくれてな、登録料はそれで賄ったんだ、余った金でホレ!」

支部長の視線の先には、お下がりをくれたりする、お洒落なお姉さんが、仕事で使いそうなアウトドアグッズを抱えていた。

「俺が選ぶより小洒落たもん買って来ると思ってな。んでパーティーは、皆んなが今日は俺が奢るってケンカしそうだったから、纏めて皆んなで祝う事にしたんだ。よし、パーティーだ、鎧外して来いよ!」

支部長の奥様の手招きで更衣室に行き、ちょっとパーティーっぽいワンピに着替えて会場に戻った。

 美味しいお料理とはじめてのお酒をちょっと飲んで、G子ネタの笑い話で盛り上がっていた。酔った人が増えてきて風香がまたナンパで困っているかと思ったら、お姉さん達とアウトドアのグッズやお洒落の事を楽しそうに話していた。音も仕草から判断すると、剣談議に花を咲かせているようだ。愛菜は受付のお姉さん達を占って和やかに時間が過ぎていった。

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