小鬼工場
更に潜ると角無しは大きくなり、爪とかよく見ないと人間と区別付きにくくなっていた。しかも喋った!表情の無いおじいさん顔だったのも、やや能面っぽいけど人間ぽくなっている。普通の角無しでも、人を斬ったようで、後ろめたいのに、25階層のヤツはほぼ人間で、斬るのを躊躇うくらいだった。
26階層には女の人?角無しってメスもいるの?これまでは鎧の他はボロ布を巻いた程度だったのに、メスは人間と同じような物を着ていた。短剣は3回で切れなくなって、結界、霧でサポートしてもらいながら地道に倒して行った。盗賊や人攫いは斬ったけど、致命傷を与える訳じゃ無く、拘束したらヒールしたりしていたので、バッサリ斬り倒すってシチュエーションはなかったから、人間ソックリの角無しの死骸は精神的にキツいよね。なんとか気持ちを切らずにクリアした。残っていた黒い力を浄化すると、黒い力が滲み出ている岩壁の割れ目があって、一応東国なので、愛菜が東雲の鞘で突いて見たけど、ビクともしない。
「ちょっとどいて!」
姉貴が、子午棒を槍投げスタイルで構えて走って来て、割れ目に投げ付け、リリースと同時に大木のサイズになり、岩壁をブチ抜いた。いつものパターンだと、更に下層へ行く階段やスロープが出て来たんだけど、隣の部屋って感じだった。かなり濃厚な黒い力に満ちていた。
地面を触って浄化、耐魔戦闘服フル装備でも嫌な気分が染みて来た。愛菜は白い霧でサポートしてくれて、なんとか浄化を完了、薄明るくなると奥の方に隠れている、小鬼?さっさと始末しようと近付くと、メスの小鬼が数匹。怯えて重なる様に奥に貼り付いていた。姉貴は子午を光らせ殲滅した。僕らが怯える相手を攻めるのを躊躇うと思って汚れ役を買って出てくれたんだと思うな。
小鬼の死骸が動き出した!ゾンビ?イヤ、小鬼の胎児が腹を破って飛び出て来た。小鬼の姿が3匹、人間の姿が1匹だった。僕は、4匹を切り捨て、まだ産まれそうな死骸の腹を差して周った。
殲滅を確認して、他の部屋とか下の階層への通路を探した。細い通路が見つかり、慎重に進むと分かれ道があり、右を選んだ。直ぐに、広いスペースに出たが、岩壁を壊して進む前の26階層の空間だった。
「無茶しなくても、通路有ったのね!」
姉貴が、ペロリと舌を出して照れ笑い。細い通路に戻りさっきの分かれ道で新しい道を選んだ。
今度の通路は途中結界で侵入禁止になっていたけど、赤い東雲が?合鍵のように、ほとんど手間をかけずに進んだ。おっちゃん達はまた驚くかと思ったけど、
「いい加減、驚くのも飽きちまった。」
と反応は薄かった。
分かれ道を右、右と進んだ。直ぐに、部屋の様な空間に出た。先の通路も罠を無かったので、お昼にした。保存食で胃袋を満たし、休憩の間に皆んなの武器を研いだ。虫メガネで見ると、元の能力がパワーアップしているらしい。
来た道を戻ろうと腰を上げると、その通路から、大量の黒い石が投げ込まれた。魔晶石だ!ポーチから白い袋と耐魔手袋を出して、魔晶石を拾う。白い袋は耐魔繊維出て来ていて、チクワを仕込んであるので、物置位は収納出来る。頑張って拾うけど、黒い力は空間を重く沈めて行く、愛菜は東雲の白い霧で緩和してくれるけど、おっちゃん達は膝を付いてしまっている。急いで拾いきって空間を浄化、モルミを飲ませ、姉貴と風香がヒールを掛けた。なんとか復活。
「パンツだけじゃ足りなかったわね、ブラも作ってあげれば良かったわね!」
姉貴はバラさんの胸を突付いた。
「遠慮しておきます。シャツとかの選択肢はないのですか?」
「却下!」
ニッコリ笑って次を目差した。
通路に戻り、また右を選ぶ。また新しい空間に出た。今度は愛菜が苦労する位の結界で護られていて、かなり大きい空間だった。すり鉢状の壁面に、沢山の穴が開いていた。穴を覗くと、角無しのオスメスが、交尾の真っ最中。サクっと始末して、その穴から様子を伺う。他の穴を覗くと、小鬼、黒小鬼、角無しがいろんな組み合わせで営んでいた。更に経過すると、オスが反対側の通路に1匹消えて行くと、代わって別のオスが入ってきて、どこかの穴に入っていく。また1匹入れ替わる。ずっと繰り返していた。
無防備な相手を斬りつけるのには抵抗があるけど、小鬼の繁殖地なので始末してしまう。灯りが消えている穴は、交尾中らしいので、シラミ潰しで片付けた。1人10ヶ所ちょっとなので100ヶ所位で終了。灯りを付けると、順番待ちのオスが入ってきて順番に処理。ご新規さんが来なくなったので、反対側の通路に進んだ。直ぐに下への階段があり、魔窟の1階層って感じじゃなく、地下の階に降りる感じだった、種類別、雌雄別、年代別に育成?するスペースだった。一般的にほぼオスだけと言われる小鬼だけど、ここの比率は3対1位。オスを間引いたりしているかもしれないけど、奇跡な割合だよね!世話係も含め、殲滅しつつ下の階に降り、6階が行き止まりで引き返した。通路を更に進んで、また強力な結界に阻まれた、愛菜が赤い東雲に渾身の力を込めて突破した。
 




