黒猫の本気
魔窟のトンネルを通って、西国に移動。元の姉貴の店に行って、ショコラのお洋服を調達する予定。姉貴はひかりさんに、いろんな生地や糸を貰って来ていたので、カトリーヌ達のお洋服も耐魔効果を追加してくれるそうだ。
古の魔窟は魔石とか色々大漁なんだけど、今日は特に大サービス!トンネルのある9階層までだけど、もうちょい深い所みたいな収穫だった。トンネルを通って西の魔窟に行っても、大盤振る舞いは続いて、アクセサリーに丁度良さそうな魔石が手に入ったので、
「これ似合うわよ!」
姉貴はピアスを開ける様に薦めた。
「えっ!穴開けるんですか?」
「ちー、怖いの?」
僕が頷くと、
「自分の身体よりも大きい剣も怖がらないのに、ちっちゃな針が怖いなんて可笑しいわね!」
色やサイズを合わせてみると、その気になって来た。
「お洋服仕立ててる間に出来るわよ!」
愛菜は速攻でピアスデビューを決めると、風香と音も続いた。僕も思い切る事にした。
姉貴は元の自分の店に行って、アトリエを貸して貰っていた。近所のアクセサリー屋さんを教えて貰ってピアスとネックレスをセットで作って貰った。怖かったピアスホールも魔力を纏わせた針でチクリ、ピアスを入れてヒールを掛けると、あっという間に完了していた。
近くの宿が取れたので、支部に行って、田辺統括支部長に挨拶。と思ったら、極秘任務で出張との事だった。
姉貴のいるアトリエに行こうとして、裏路地をショートカット。一本入っただけて、いきなり治安が良く無いエリアだった。カツアゲの現場を見過ごすのも気が引けるので、短剣で脅しているオッサンに声を掛けた。いきなり斬りかかって来たので、軽く捻って剣を奪った。結構いい切れ味だったので、眉毛で試し斬り。腰を抜かして這って逃げて行った。囲んでいた3人も反撃をあきらめて逃走開始。助けた人達を見ると、魔窟で絡んで来た奴だった。
「あー、オジサン、待って!コイツならカツアゲでもなんでもしていいよ!」
引留めたけど、ちょっと遅かった。
「わたし達で続きって訳にもいきませんからね。」
固まったままの人達を放置して裏路地を通過した。
魔物グッズの店に着いて、裏口からアトリエに直接入った。
「エリちゃん、お姉ちゃん達来たよ!」
ショコラはカトリーヌ達と色違いのワンピだった。耐魔の手直しは済んでいて、ショコラの秋冬物とコートが明日でなんとかなるそうだ。
「往復入れて、1日弱で潜れる魔窟があるわよ、アタシは下まで潜ってるから、4人で行ってきたら?」
無駄に遊んでるよりいいかな?皆んなもそんなノリで明日の予定は決定した。
いつもの馬車は、東国に置いて来たので、レンタルの馬車。カトリーヌはご機嫌斜め。本人が引くって言うから、馬車だけ借りたのにね。プランタンが気を使って、馬サイズになって引こうとしてくれた。最大サイズには、まだまだだけと、巨大黒豹。山奥ならいざ知らず、街中の公道を歩くと、騒ぎになるのは間違い無いよね?カトリーヌはあきらめて、馬車を引いてくれた。
魔窟に到着。やや観光向けかな?登山遠足くらいの装備の人が多かった。悪目立ちしていてのは僕らだった。フリフリのメイド服は、落ち着いて考えたら魔窟には似合わないよね。って言うか、武器自体が似合わないよね。皆んな振り返るし、受付のお姉さんも、『場違いな奴ら』で括って、機械的に初心者向けに上層階層だけが載ったガイドマップを1枚ペラっと渡された。勝手に最下層までのガイドを取って入窟した。
魔窟のなかでも、オジサン達に随分ちやほやされて、5階層まで、武器の出番は無く、結構出たアイテムは全部僕らのバッグに入れてくれた。Fランクパーティの女の子はこの辺までかな?って表情でチラチラ顔色を伺っていた。涼しい顔で潜り続けると10階層に降りると、
「そろそろ、おっかねぇのが出て来っから、引き換えしたらいいど!」
「大丈夫です!次の魔物は僕らが片付けますね!」
現れた牛人は、2メートル50位かな?小振りなヤツだってのでみんなには待機してもらって、1人で斬りかかった。大きな斧を振り上げた両手の手首を落とし、戦力をしっかり削ってから首を落とした。助走を含めて5秒で完了。オジサン達はポカンと口を開けていた。もうちょい大きいのが纏まって攻めて来ると、魔力弾、魔力刃、魔力矢が飛んでまたまた瞬殺した。
その勢いで20階層まで降りた。恐竜っぽいトカゲかな?ちょっと強そうなので、いつもの作戦で挑む。風香の結界の中から飛び道具で狙った。トカゲは、結界を張る力があるようで、魔力弾も魔力刃も弾いていた。こちらの攻め手を見切ったと思ったようで、トカゲは突進して来た。僕らに飛びかかったつもりだろうけど、風香の結界はビクともせず、ひっくり返った所、愛菜が赤く光った東雲で結界を切り裂き、音の魔力刃が、首を落とした。
結界で弾く事はオジサン達にも知らせてあったんだけど、実際に飛んで来ると腰を抜かしたようだった。この階層で引き返すと言うので、トカゲの落とした魔石を持って帰って貰おうと思ったら、黒い力が染みていた。浄化してから、
「お世話になりました!これで飲んで下さいね!」
魔窟から出たあとの一杯が楽しみで潜っていると言っていたオジサン達に渡すと、
「えっ?酒じゃ無くて酒屋が丸ごと買えそうだな!」
オジサン達と別れ、ドンドン潜る。マップにある最下層は黒い力に侵されていた。浄化していると、
「お宝の匂いですわ!三ツ首が待ってましてよ!」
愛菜が指差す所に弓を引いて風香が待機、
「見えたわ!」
浄化が進んでぼんやり見えて来ると、魔力矢が唸りを上げ、三ツ首の真ん中の首が砕け散った。
浄化が終わるとプランタンが、下層への通路を見つけ、更に降りた。キチンとした階段ではなく、岩場にへばり付いて90度に近い壁を降りると、
何かが攻撃して来た。ライオン?ネコ科の猛獣でプランタンが馬車を引こうとしてくれた時ぐらいのサイズの群れだった。風香が結界で護ってくれたけど、結界が完成する直前だったらしく、転んで肘を擦りむいていた。エテ、オートヌ、イヴェールはいきなり最大サイズになって、猛獣達を瞬殺。普段は、相手のサイズに合わせて、戦う事を楽しんでいるように見えていたけど、風香に傷を負わせた魔物の存在が赦せないようで、一撃で絶命。魔物の死骸を咥えて奥に進んだ。直ぐに現れたのは群れのボスらしく、一回り大きくて、タテガミが立派なヤツだった。結界の中で寛いでいる感じだったけど咥えていた魔物を投げ付けると、ボスを直撃。一瞬乱れた結界をこじ開け、ボスはボロボロの肉塊になっていた。他の子分達は、ペットサイズになって、腹を見せて無条件降伏。興奮したままの勢いで僕らに向かって飛び込んて来たかと思ったら、寸前で人型になり風香の膝を心配そうに見入っていた。
「大丈夫よ!」
風香は自分の膝をヒールで傷を治すと、魔法でタオルを濡らして3人の口元や両手の血を拭ってあげた。
うっとり甘える3人と風香を残して、プランタンと下への通路を探した。細長い楕円に近い形状の空間で降りてきた所と反対側の狭くなった部分をプランタンが指した。追い付いた風香が矢筒で突付くと、ガラガラと通路が現れた。
 




