戦闘服
ホテルに帰ってシャワーを浴びてからレストランへ。時間通りに着くと蛍先生は先に着いていた。お母さんと一緒だった。別の大陸の料理らしく、初めて食べる物に驚いていた。
「久しぶりね、満ちゃん。」
「離婚以来ね。」
「そうね、色々迷惑掛けちゃって。」
「最初から聞いていた事だから気にしないで!私は蛍を産めた事、感謝してるわ。」
「私がこんなになったから、満ちゃんの再婚話もスムーズになるんじゃないかと思って。」
「なんかね、45でも良いって言う人も居るんだけど、やっぱり気が引けるのよ。10歳位若けりゃね!」
「エリカさん、お願い。」
姉貴が薬瓶を出すと、
「変身の副作用でおばあさんになるのを見越して、若返りの薬を使ったんだよね、計算が違ったみたいで随分若くなっちゃったんだ。」
「そうね、蛍の前にもう一人産んでいたか、記憶を確かめたくなった位だもんね!」
「見掛けだけじゃなく、機能も若返るから、再婚にも自身が持てるんじゃ無いかな?」
「再婚はね、歳を言い訳に断っているけど、ホントは歳がどうのって事じゃ無くて、ただしたくないのよ。でも遠慮なく頂くわ!」
満さんは、薬瓶を手に取ると一気に飲み下した。
「ねえ、ママ、お母さん!お部屋空いていたら3人でお泊まりしない?お母さんの若返った姿、早く見たいでしょ?」
返事を待たずにフロントに走って行った。
翌朝、朝食の会場に行くと蛍先生達が三姉妹の様に登場した。お互いに遠慮して言えなかった事を、思い切って話しあって、ずっと気になっていた蟠りがスッとクリアしたそうだ。これからは、女同士のお友達として上手く付き合えそうだと喜んでいた。
僕らは特に予定も無いので、動物園に遊びに行った。日之出国にしか居ない動物とか、他の大陸の動物を観たり、餌をあげたりして夕方まで楽しんだ。
完成まではのんびり。途中、検査で病院に一度行った。401号室って言うから、1号室から数えて4百と1個目の部屋だと思って驚いたけど、4階の1号室って意味だったらしい。ぼくの勘違いは別にしても、6階建ての建物は、大陸には無いよね。
他の日は近場の観光で過ごした。北国料理の店に入ったりした。かなりアレンジされた物で、ほぼ別物だったけど、違うジャンルの物だと思うと、とても美味しくて、敢えて比べるとコッチの方が好きかもしれないな。それから食べた事無いお菓子とか満喫して、戦闘服の完成日を迎えた。
研究所に行くと、スタッフのお姉さん達は、思ったより効きめが強く、10歳位若返った感じで、ハタチそこそこの雰囲気。かなり好意的に言ってポッチャリだった二人は、その年齢だった頃と体型らしく、同一人物とは思えないアスリート体型に変身していた。二十台半ばから後半位のひかりさんとバランスが取れたと喜んでいた。
「期待って言うか心配してたの、Hカップってどんなんだろうって!」
お姉さん達は、A、C、D、E、Fとイニシャルとサイズがリンクしているので、Hさんのサイズが気になっていたそうだ。結果は、(残念ながら?)僕らはたまたまで、ひかりさんは僕くらいかな?
ひかりさんは、実家に戻ったそうで、満さんとは姉妹って事にするそうだ。不思議な関係だけど、本人達が幸せそうなので、良かったんだよね!
肝心の、戦闘服が登場した。黒のミニのフリフリワンピ。裾や袖口、胸元には白のレースと黒のリボンがあしらわれている。そのうえに白いエプロン。『メイド服』と言うらしい靴下は膝上迄あって、フリルやリボンで飾られていた。
試着すると、サイズぴったりで動きの邪魔にならない。スカート丈が気になるけど、そういうデザインだとのことで、変更は認められなかった。下着も誂えてあって、全て耐魔繊維で出来ているそうだ。面積がかなり小さいのが気になったけど、
「ツルツルにしておいて良かったでしょ?」
風香がニッコリ笑っていた。
靴下も含め下着は洗い替えも充分用意してあって、ずっと臨戦態勢でいられるみたい。
「勝負下着ってヤツですね!」
「ちょっと違うけど、ちーならそうかもね!」
「姉貴!今、僕の事バカにしたでしょ!」
プっと膨れて見せた。
「ゴメンゴメン、可愛がっただけよ!」
黒のパンプスは、ストラップでしっかりフィット、黒革のグローブ同様、薬草で育てた羊の革との事。
ホテルに戻って、魔晶石の浄化にトライ。耐魔戦闘服で身を包み、魔晶石の箱を開けた。愛菜は白い霧を出し続け、他の皆んなはモルミスプレーを持って結界の外から覗いていた。
箱を開けると、箱自体や周りが真っ黒になり1つ取り出して蓋をすると、白い霧が勝り、元に戻った。魔晶石は僕の手のひらの上でぐんぐん黒が薄くなり、5分程で透明になった。もう一つも取り出して浄化。こちらも同じくらいで浄化完了した。
治療と対策が完了して、大陸に戻る。ひかりさんは港まで見送りに来てくれた。魔王を滅してから、ゆっくり遊びに来る約束をして船に乗り込んだ。船出はなかなか視界から消えないので、ひかりさんは、随分長く港で手を振ってくれていた。
姉貴はお気に入りの米酒を買って魔法で冷やしていた。今夜も飲むのかな?デッキではカモメに餌をあげたり、イルカのジャンプを眺めたりして楽しんだ。
しばらく美味しいものを食べ続けていたので、保存食っぽい船のご飯はあまり美味しくは無かったけど、懐かしい味だった。2泊3日の船旅を終え、大陸に帰ってきた。
『味』にお土産を届け、そのまま晩ごはん。またまたご馳走にありついて、襲撃に遭った宿に行った。
宿は浴槽に魔石が沈んだままで使い物にならないので休館していた。宿の人に魔石を片付ければ、泊まってもいいって約束したので、早速お風呂場へ。
水を浄化していって、汲み上げる。魔石が出てきたら1つ1つ浄化を繰り返した。全てを浄化して、浴槽をお湯で満たしてお風呂の復旧が完了した。




