武道家・音(どれみ)
4人目のスカウトの日。風香は、真っ直ぐ支部に行って、僕は、愛菜を迎えにいってから合流する予定。
支部に付くと、風香が既にターゲットを見つけていた。背の高い風香よりもう少し高い、スラッとした美少女、これだけの美少女が揃うとナンパも気が引けるのか、遠巻きに様子見しているようだった。
「おはよう!音ちゃん見つけたよ!」
「リーダーの慈子ちゃんと、愛菜ちゃん!で、こっちが音ちゃんね!パーティーの事はオッケーだって!」
いつの間にリーダーになったんだ?
昨日、結界の練習の次いでに性格まで矯正されたのか、1日で急に積極的になった風香は、サクサクと話しを進めてくれていた。
僕等の世代の少しあとに流行ったキラキラネーム、無理矢理な当て字で、可愛らしい名前を付ける。ホントにカワイイと思って褒めたんだけど、イジメのネタになったり、本人にとってはコンプレックスらしい。
「ぉぁぉぅぉぁぃぁぅ、ぃぅンぇょぁっぁぉ?」
「『おはようございます、自分でよかったの?』って言ってるよ。」
音は照れ屋さん?ゴモゴモと喋って、風香が読唇術で通訳しながら、いつもの支部に戻り、おっちゃんに音を紹介した。道中、インタビュー済みで、おっちゃんが聞きそうな事は用意しておいたので、早々に練習に取り掛かる。防具を着けて普通の竹刀で僕と一本勝負。ほぼ互角だった。最近は、Aランクの大人でも圧勝しているので、彼女の太刀にはおっちゃんも驚いていた。その後、竹刀に魔法を纏わせて丸太を斬ったり、およそFランクとは思えない技を披露した。ロビーに戻ってお茶をしてると、
「こんなに凄いのに、ホントにFランク?」
「・・・・・・・・・」
「『測定の時は緊張して何も出来ませんでした』って!」
「お前さんは、皆んなを護る、皆んなはお前さんを護る。仲間がいるんだ、緊張しなくても大丈夫。気休めにコレやっとこうか?」
おっちゃんは小さな折り紙みたいな紙をテーブルに置いて、
「左手出して!」
おっちゃんと同じように、手の甲が見えるようにグーを出すと、おっちゃんはナイフで手の甲を切った。
「右の親指で、血判を捺すんだよ、おっとそのまま!うん、離していいよ。癒やし魔法、出来たよね?」
風香に目配せして、傷を治させた。
「昼までもうちょい頑張るか!」
広場に戻ると、おっちゃんは試し斬りの丸太を運んできて、
「巻き毛の嬢ちゃん、コレ結界で護ってくれるかい?」
風香が結界を張ると、おっちゃんは、丸太に向かってナイフを投げた。ナイフは結界に阻まれ、ポトリと落ちた。ナイフを拾っておっちゃんに返そうとしたら、
「長髪の嬢ちゃん、投げて見て!」
音が投げたナイフは、結界をすり抜け、丸太に突き刺さった。さっきの血判で魔術同盟が結ばれ、連携攻撃になったそうだ。僕は閃いて、丸太の上に水の瓶を置いた。
「風香はもう一度結界をお願いね、愛菜はコレ凍らせてみて!」
愛菜の魔法は、瓶を砕く事なく、中身を凍らせて、氷の膨張で瓶を割った。
「おっちゃん!コレでしょ?」
おっちゃんは頷いて、
「早飯して、午後頑張るか!」
またロビーに行ってランチにした。食べながら、作戦を話して、おっちゃんの反応を確かめた。ニコニコしているので、間違っていないようだ。さっさと食べて午前のうちに、現場に向かった。