女の敵・風香
約束の時間に愛菜が迎えに来た。
「仕方が無いから付き合ってあげる。」
二人で別の支部に向かった。困った顔で下請けの誘いを断っている、グラマラスな美少女を発見。女性魔術師の冷ややかな視線は、傍目で見ても冷気を感じる程だった。
下請け依頼と称してナンパするお兄さん達が絶えないので、女性魔術師限定の下請けをしているそうだが、ヤキモチの対象になって、ほとんど仕事が来ないようだった。
「風香ちゃんですね?僕・・・」
「チカコちゃんと、アイナちゃんね?」
「ど、どうして知ってるの?」
「私、読唇術が出来るの、さっきお話してるの見えたから!」
パーティーのお誘いをすると、
「あそこのお姉さん見える?『ちょっと可愛いと思って調子に乗ってるよね』って言ってるの。わたしと一緒にいたら迷惑掛かるわよ!」
「えっ、お姉さん間違ってるよ!風香ちゃん、ちょっと可愛いんじゃなくて、すんごい可愛いです!」
ふたりが吹き出して風香の参加が決定した。
下請けが無いか聞いて見たが、目ぼしい依頼が無かったので、いつもの支部に移動、顔馴染みのおっちゃんの下請けでスズメバチの巣の撤去に参加した。
「おっちゃん、スズメバチならFランクじゃん!」
「おっちゃん、宿酔いでなあ。」
Aランクのおっちゃんなら、もっとワリのいい仕事が選べる筈なんだけどね。
現場に向かう前に、協会裏の広場で、
「嬢ちゃん達は、どんな魔法出来るんだ?」
「雷、炎、氷の弾が撃てるわ。」
「物騒なもんばっかだな、防御や癒やしなんかは?」
「そんなのカッコよくないじゃない!」
愛菜は、攻撃しか興味無いようだ。
「あのう、私、結界は少々、あと小さい傷くらいなら治せます!」
風香の魔法を聞いておっちゃんは、蜂の巣を結界で囲んで駆除する方法を教えてくれた。結界の練習している間に、愛菜の魔法を試して見た。ビンに入った水を、氷の魔法で凍らせてみる。愛菜は氷の弾を撃ち、ビンを粉々にした。おっちゃんはコツを説明しているが、愛菜は肩で息をして、2発目は撃てなかった。魔力回復剤を渡し、
「ちょっと休んでから、力加減の練習な!」
おっちゃんはそう言って、風香の結界のアドバイスに集中した。
一旦ロビーに戻ってお茶にした。砂糖をスプーンで掬った愛菜に、
「おう、ちゃんとスプーン使えるな!あの弾の勢いなら、スコップで砂糖入れるんじゃねぇか心配したぜ!」
プイとソッポを向いた愛菜だったが、何か納得する物が有った様で、急に表情が変わり、魔力を貯めるコツなんかの事でおっちゃんを質問攻めにしていた。
お茶のあと、広場で練習再開。風香は巣を結界で包む方法をマスター、愛菜も魔力を加減して貯めて、小分けで撃ったり、じんわり時間を掛けて放出出来るようになった。
「便利そうですけど、ちょっと地味ね!」
愛菜の憎まれ口に、
「あんな派手なのは、仲間のピンチまでとっておけ!」
「私自身のピンチではなくって?」
「ああ、そん時は仲間に助けて貰えやいいさ。」
暗くなるまで練習して、現場には行かなかった。依頼が片付かなくて大丈夫か心配したら、
「明日、もう一人連れて来るんだろ?依頼は、今週中が期限だから慌てないさ。今日は上がり無しだから、お茶代で勘弁しといてな!」
返事を待たず、さっさと酒場方面に消えて行った。