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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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僕の素性

 温泉に向かう前に支部に寄った。レスキューのお礼と、魔石が高く売れたお礼に行くと言う名目で、姉貴の話を聞くつもり。

 支部に着くと支部長さんが迎えてくれた。

「バタバタして話せませんでしたね、総支部長はお元気で?」

「ソウ支部長?」

聞き慣れない名前に『?』を飛ばすと、

「ラッシーの事よ!」

姉貴が教えてくれた。東、北、西の3国でトップの立場らしい。3国にはそれぞれ統括支部長と言う人がいて、その3人が持ち回りで総支部長を務めるそうだ。

「因みに、東国の統括は、目の前にいるローズちゃんよ!」

「その呼び方はご遠慮下さい、永吉さん。」

姉貴はチョット膨れて、

「じゃあバラちゃんで?」

「許容範囲ですね、エリカさん。」

柏原(かしわばら)のバラで、バラちゃん、薔薇なのでローズちゃん。姉貴が勝手に付けて、本人以外には好評だったそうだ。

「トップ3のうち2人と知り合いなんて凄いね!」

「あら、もう一人はパン君よ、あなた達も会ったでしょ?」

「その呼び方も、如何なものでしょう、永吉さん。」

「じゃあ、ナベ君で。」

「ベターです、エリカさん。」

同じく姉貴の命名、田辺(たなべ)、ナベ、鍋からの、パンだそうだ。西国に行った時、おっちゃんの知り合いなのは解ったけどね、元々おっちゃんがそんなVIPだなんて思わないからね。

「慈子さん、鎧の貴公子の四天王は、ご存知ありませんか?」

僕は首を横に振ったけど、愛菜も風香も音も知っているようだ。

「鎧の貴公子の事はおっちゃんに聞いたよ!お伽だと思ってたけどね。」

「アララ、親不孝ね。」

詳しく話を聞くと、鎧の貴公子とは、僕の父さんだった。おっちゃんがGランクの僕を励ます為に考えた作りばなしだと思ってたけど、どうやら本当らしい。今のトップ3と姉貴の4人で四天王とのこと。

「じゃあ、母さんが『癒やしの剣姫』って言うのもホント?」

「えっ?それも知らなかったの?」

姉貴は呆れて溜め息をついた。

 姉貴の事を聞いて冷やかしてみたいと思ったのに、僕の方が居心地が悪かった。予定通りには行かなかったけど、僕の魔力を魔王の封印に使っていて、魔王を完全に滅すれば、魔法が使えるようになれるかもしれないな。

「早速、南の魔窟に行こう!」

「時期尚早ですよ、もう少し技を磨いてからですね。」

バラさんは、東国の魔窟一覧を渡してくれた。ここでの修行がオススメって言う事だよね?湖畔の温泉方面の魔窟に潜る事にして支部を後にした。


 旅支度の買い物をして、馬車を南に向けた。ゆっくり行って夕方着く。魔窟の集落に泊まって、明日潜る予定。市街地を抜けると、胡散臭い馬車が追い抜いた。どうやら盗賊のセオリーらしく、馬車を追い抜いて急停車、ターゲットが停車すると、武装した盗賊達が降りてきて取り囲む。せっかく姉貴から父さんや母さんの事を聞いていたのに、中断を余儀なくされた。

「ちょっと試したいので、私に任さて頂いてよろしいかしら?」

一応、疑問文だった筈だけど、愛菜は回答を待つ事もなく馬車を飛び降りた。

 一発で失神するような魔力弾ではなく、かなりセーブした攻撃で盗賊達を挑発した。ハンマーの様な武器を振り回すヤツが愛菜の正面で振りかぶった。いつもパターンだと、至近距離の魔力弾で片付ける所なんだけど、愛菜は刀を突き出してハンマーを待った。『ゴン』と短く重低音が響くと、ハンマーの男は弾かれ、手が痺れた様子だった。

「私の推測は正しいようですわ!ご協力、感謝いたしますわ!」

そう言って、いつもの殺傷力の魔力弾で全員眠らせた。魔窟には協会の出張所があるので、そこで引渡せばいいか。いつもの様に拘束した盗賊を馬車に積み込み、カトリーヌが指示をすると、馬は言う事を聞くので2台連なって目的の魔窟に向かう。

「試したかった事って、ハンマー跳ね返す技?」

「ええ、この刀って技を吸い取るみたいですの。」

「良く気付いたね、これから育ててってね!」

姉貴は知っていたようだ。

「最初はただの、良く切れる刀だったのよね、火を吹く魔物を斬ってから、切り口が燃えたり、炎の魔力刃を飛ばせるようになったのよね。そのあとの亀が結界で斬れなかったのよ、ただ、甲羅の中で爆発して何か刀から何か感じたの、きっと結界が張れると思ったのよ!」

「えっ?結界の強さを確かめたんじゃ無いの?」

愛菜は、涼しい顔で頷いて、

「いろんな魔物を斬らなきゃならないなんて手間がかかるのね、始めから付いてないなんてやっぱり不良品かしらね!」

そう言いながら、ニッコリ刀を眺めていた。

 盗賊に会ったけど然程手間も取らなかったので、夕方には魔窟のある集落に到着。出張所に盗賊を届け、報奨金の手続きをした。そこで聞いたオススメの食堂に入って晩ごはん。廃屋かと思うほどの建物と、無愛想なオッサンで何処がオススメかと疑ったけど、意外と美味しくてビックリ。ご機嫌で宿に行くと、1軒しか無い宿が満室。テントを張るスペースも少し離れた所しか無い。仕方が無いので、そこを目指す事にして馬車の支度を始めた。

「これ読んで見る?」

風香は馬車の荷物入れに入っていた、

『困った時に読むこと』

という封筒を出した。中には何通かの封筒が入っていて、その中から、

『宿が取れない時』

の封筒を開けると、馬車のシートアレンジの取説だった。パタパタと背もたれを倒すと、フルフラットになり、狭いけれど、寝袋なら何とか5人と子猫達なら寝られるスペースが現れた。車中泊で明日に備える事になった。


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