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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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奈落

 拘束を解いた姉貴は、愛菜を抱きしめ、

「チー坊、オンブよ!」

床ごと落下していた。姉貴の背中にしがみついて、結界の気球に包まれて落下を続けた。何処かにぶつかって弾んだり、貫いたりしながら、かなりのショックを繰り返して、やっと止まった。

「西国の魔窟の時よりは、楽チンです!」

何も無い黒い谷底でホッとすると、

「チー坊といると、絶体絶命でもピクニック気分ね!」

疲れ果てた様子の姉貴は引き釣り気味に微笑んだ。

「今感じている魔物の気配が、シフォン達だとすると、あっち方向に200メートル位ですわ!」

愛菜。腕は斜め上を指していて、仮に30度だとすると、100メートルの深さで170メートル程水平方向に移動したことになると。僕が計算すると姉貴は驚いた。

「三角定規の辺の長さのヤツです!」

「アタシ、算数ダメなの。」

一応平方根(ルート)も使ったから数学って言って欲しかったけど、そう言えばかなりのピンチだった事を思い出した。先ずは脱出の方法を考えなくっちゃね!

 周囲を眺めると、あきらかに人工物のパイプがあった。更に奥に繋がっているので下の様子を見に行く事にした。少し歩くと、真っ黒な水溜りがあって行き止まりになった。パイプの先端はそこに沈んでいた。

「この前の魔窟にいた、泥の魔物みたいのが居るんじゃないかな?」

水溜りの周りの地面を触って、黒い力を、除去していくと、黄土色の岩肌が現れてきたジワジワ黄土色の面積が増えていき、池の周囲から黒い部分が無くなると、水の中から黒い飛沫から上がり、巨大な黒いカエルが出て来た。愛菜の魔力弾であっさり粉砕したが、あっという間に再生した。前回同様に愛菜の肩に手を添えて魔力弾を放つとカエルは、無色透明の水飛沫になって再生しなくなった。


「お姉様!このパイプって、ここの黒い水を汲んでるんですよね?」

愛菜は不思議そうに姉貴を見つめた。

「アタシが変身した時の黒い指輪覚える?」

愛菜が頷くと、

「闇魔法の魔具を作るの。基本、悪さをする人の為だから、違法なのよね。犯罪目的じゃなくても、副作用が酷いから普通は誰も使わないから一般には知られて無いわね。」

僕は引き続き、周りの黒い力を消していた。池の奥まで黄土色になると、隙間を見付けた。1人なら余裕で歩けそうな登りの通路になっていた。落ちて来た所を戻るか、新発見の通路を進むかの2択になった。

「ねえ愛菜、カトリーヌとシフォンはまだ上に居る?はぐれたら北国の黒猫達の所に戻る様に言ってあるんだけど・・・」

「カエルが出て来た頃、2人とも離れて行きましてよ!」

「じゃあ、新しい道を選ぼうよ!」

姉貴も愛菜も頷いて細い通路を進んだ。


 深い谷の途中に橋の様に作った床に建てられた小屋が爆発し、僕らが落ちるのを2人(2頭?2匹?)は、飛び込んで助け出そうとしたが、黒い力に阻まれ、崩れて入れなくなった谷底を覗いた。カトリーヌは、はぐれた時の打ち合わせを覚えていて、竜のままシフォンを乗せて北国に帰った。


 支部に永吉(エリカ)の手紙を届けた音は、北国の支部への手紙を預かり、帰国した。東国の国境領主を倒し乗っ取るクーデターの計画を暴露し、首謀者が逮捕され、国境の平和は保たれた。

 2人と6匹が揃うと、僕らが奈落に落ちて、そこに続く谷が崩れてしまった事を確認して、救出方法を考えていた。先ずは再度、東国に入って地元の支部で情報を仕入れるのが1番と直ぐに関所に向かった。

 支部での情報によると、奈落の谷は古の魔窟のかなり下層に繋がっているという伝説があるそうだ。なんだかんだ言っても、伝説が本当だったから、それをアテにして魔窟に潜る事にした。


「Bランカーですが、パーティーはF+++ですので、あなた達だけでの入窟は認められません。」

支部長さんらしいけと、うちの支部長とは大違いで、魔石商のおじ様みたいな雰囲気で、丁寧にダメ出しした。

「Bランクなら2人でパーティー組めるんですよね?」

「今のパーティーを脱退か、解散して新しく結成するのなら可能です。それか、入窟資格のあるパーティーの下請けなら可能ですね。」

そう言うと、事務に引っ込んだ。少し待っていると、別の扉から武装した支部長さんが登場した。

「ラッシーの大切なお嬢様達を危険な目に合わせたくは無いんですが、止めても無理ですよね?」

支部長さんのパーティーの下請けとして、古の魔窟に潜った。


 細い通路は、緩やかに登り、黒い力が支配しているので、除去しながら進んだ。しばらくすると、大きな空間に出た。

「魔窟です!古の魔窟の深い所です!」

「あなた達、2つも制覇したんだもんね!」

「大きいのが1匹ですわ!」

どんどん黒い力を処理していくと、空間全体が黄土色になり、中央でトグロを巻いた巨大な黒い蛇が鎌首をもたげ、こちらを睨んでいた。姉貴は棒を2つにして、両手で正面に構えた。2本の棒が光ると、黒大蛇は一旦首を垂らし、暴れ出した。目を潰された黒大蛇はただ滅茶苦茶に暴れているので、避けながら攻撃出来るので何とかなりそうなんだけど、愛菜の魔力弾も姉貴の光の攻撃もノーダメージ。 

 暴れるパターンを読んで、斬りつけると傷が付いた。直ぐに再生するけど、黒い蛇の鱗になるけど、元みたいな黒い力に満ちた、光を全て吸い込む様な黒さではなかった。姉貴と愛菜も接近戦に切り替えたけど、効果があるのは僕だけで、何とか鱗が見える部分を増やして行った。広がった鱗の部分に愛菜が魔力弾を撃ち込むと大きく抉れ、再生に時間がかかり、その間は動かないので、頭を斬り続けた。動き出す前に頭に魔力弾、姉貴の光攻撃を集中させて黒大蛇を葬った。

「ワンフロアなら、最下層から18階位迄ですわ、大きいのが1匹ですから、東と北の例ですと、最下層から2階ですわ!下にします?上にします?」

出入り口を2つ確かめて、下への坂を少し降りて見た。

 大きな蜘蛛が巣を張って、入口を塞いでいる。この魔窟のお宝が有れば、簡単に倒せるんだけど、今回はそう上手くいかないので、一旦地上を目指す事にした。引き返そうとした時、蜘蛛の糸が飛んで来て、愛菜の足が絡め取られた。ロープの太さの糸を剣で斬り、何とか捕まらずに済んだけど、蜘蛛の魔物はジワジワと寄って来た。姉貴は触肢と言う触覚代わりの1番前の足を光攻撃で捕らえた。残った足を折り畳んで丸まって再生しようとしている。転がった所、糸の発射口をこちらに向けた。糸での攻撃かと思ったけど、苦しんでたまたま向いただけでのよう。愛菜はそこを狙い魔力弾を撃ち込むと、腹の部分が破裂して、再生する気配は無くなった。

「やったね!愛菜!お得意の、カンチョ・・・」

「次はどうしますの?」

『カンチョウスペシャル』と言われたくない愛菜は、言葉を遮った。

この階層も大きなのが1匹なので、思い切って最下層を目指す事にした。

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