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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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誘拐

 東の国境を目指して2日目、すっかり当たり前になった日の出起床で出発。途中、狩りや山菜とかキノコを採りながら日の入りまで移動、予定通りの宿泊地に到達した。

 見通しが確保出来ない地形なので派手な打ち上げ花火は上げないで、テントの周りで小さい花火で楽しんだ。花火を始めると、理沙ちゃんの視線が愛菜に集中、堪らずシフォンは人型になって愛菜に貼り付いた。

「あっ、シフォンちゃん、へんしん!」

驚きながら、理沙ちゃんはシフォンを確保。迷惑そうなシフォンだけど、結構仲良く遊んでいた。寝る時間になってもシフォンから離れ無いので、テントのメンバーを変更、理香さん、理沙ちゃん、姉御、愛菜、シフォンにした。カトリーヌは寝袋が足りなのくなったので、ペットモードになって僕の寝袋に潜り込んでいた。

 深夜、辺りが騒がしくなった。またどうせ、盗賊か人攫いだろう。結界の周囲をウロウロしているので、明るくなればあきらめて帰ると踏んで放っておいた。しばらくすると、馬の足音が響いて、更に少しして馬車の音も聞こえて来た。

「なんか、騒がしいわね。」

風香と音が起きて来た、

「東国の方達かしら?皆さん、ライセンスプレート付けてますね、国境警備隊の制服です!」

結界の周りに、グルリと何か刺して周り10本以上で囲まれた。制服のお兄さん達がブツブツ呪文を唱えると、結界の周りに刺していた物が一斉に光って、結界は破れ、風香は気を失った。エテが人型になって風香を支え、オートヌとイヴェールは元のサイズになって、囲んでいた国境警備のお兄さん達を張り倒した。どう見ても人間、しかもお役人様に間違い無いので、盗賊を扱ったように拘束したら、僕らが罪になりそうなので、どう対処すればいいのか解らなかった、取り敢えず峰打ちで敵の戦力を削っていくけど、相手はマジで斬って来るので、どう見たって不利で仕方がない。

「姉上に知恵を授かろう!」

音はプランタンの援護攻撃に助けられながら、姉貴達のテントに向かった。

テントに辿り着くと、姉貴かと思ったら、理香さんと理沙ちゃんが飛び出て来ると、悲鳴をあげながら、敵?襲撃者達に飛び込んで行った。2人を確保した襲撃者達は結界で僕らを拘束し、何も無かったように消えていった。姉貴と愛菜はどうしたんろう?テントを覗くと、連れ去られた筈の母娘が怯えきって震えていた。肩に触れると、やっと声が聞けた。

「エリカちゃんと、愛菜ちゃんが私達の身代わりになってくれたの!バレない様に私達を結界で匿ってくれたの。」

2人の震えが収まるのを待っていると、東の空が明るくなって来た。勿論、二度寝する気になる訳じゃ無いので、テントを畳んだ。

「姉貴って変身出来たんだね!」

「姉上なら何が出来ても驚かないわ。」

「そうね、お姉ちゃんだもんね。」

3人で納得すると、

「実は・・・」

 風香の結界が破られた時、姉貴達のテントの中の話。

「理香さん、家宝の懐剣出して!」

姉貴は懐剣の力を、知っていたようで、影武者の魔法を自分と愛菜に掛けて、身代わりで誘拐されたみたい。

 予定通り、2人を国境の屋敷に届けそのまま東国に向かった。先ずは入国の手続きをして、姉貴と愛菜の情報がないかを探った。ニセモノってバレていなければ、命までは心配無い筈。盗賊や人攫いじゃ無いので、国境領主の奥様、お嬢様が狙われた事は間違い無い筈。国境で何かが起こっているのかな?

 ホンモノが無事に屋敷に帰っている事はバレていないようなので、警備員の中に襲撃の時に居た人が居ないか確かめて見たけど、残念ながら暗かったのでほぼ情報無し。僕が持っている役に立ちそうな記憶は、二の腕の『S』で始まるタトゥー位。音も腕の傷は見えたけど、職業がら、無傷な人の方が珍しい位なので、ほぼ役に立たない。風香はダウンしていたので情報無し。

 風香は警備員達の唇を読んで、2人の監禁されている場所を探った。いつまでも関所に居座るのも可笑しいし、相手も僕らを調べているかもしれないので、もう2、3分だけ粘る。

「風香、あの2人!」

音が指差した2人は、特に変わった感じはしないけど、風香が読み取ったのは、

『女とガキは、奈落の小屋に運んでおけってさ。』

2人をつけた。

「どうしてアイツらだと思ったの?」

「靴が違うの!他の人はピカピカに磨いてあるんだけと、あの靴汚れているし紐がだらしないでしょ?」

確かに、言われてみると薄汚いね。

 汚い靴の男を尾行。警備員の詰め所には寄らず、怪しさ一杯の馬車に乗り込んだ。姉貴達は乗っていない。馬車を持ち込むと、警備員に、あの時の僕らって自己紹介している様な物なので、人型になったカトリーヌと4人で来ている。黒猫達は理香さんの屋敷で護衛を続けている。カトリーヌに馬になって貰った。目立って仕方が無いけど、折角の手掛かりを失うよりはマシだよね?離れてついていった。風香と音は、関所付近で、敵が何をしようとしているのか探って貰った。

 北国の屋敷に残った黒猫達は、理沙ちゃんをガード、理香さんは旦那様と犯人からの連絡を待った。殺さずに連れ去ったので身代金の要求を予想していた。犯人からの連絡は無く、相手も、目的も解らない不安な状況が続いていた。

 関所の調査している二人は、酒場が見える喫茶店を見付けて、客を観察した。夜勤の見張りがアケで飲んでいるようだった。ただし、磨いた靴の人は独りも居なかった。

『これで(いくさ)だな。』

北国の兵に国境を越えさせ、戦の混乱に乗じて悪さを計画している様だ。風香は北国に戻り、誘拐の目的を知らせた。挑発に乗らなきゃ、取り敢えず相手の目論見は阻止出来るからね。

 音は『奈落の小屋』を調べて、馬を借りて追って来た。追って来たって言うより、追い越していた。僕は姉貴達の状況を探りながらだったので、音の方が先に着いて居た。誘拐の目的を聞いて、取り敢えず2人の救出に集中する事にした。

 作戦を考えたけど、姉貴と愛菜の力だったら、別に僕が手を貸さなくても脱出出来るよね?

「愛菜のセンサーって魔物は解かるみたいだけど、僕らが近くにいるの解ってるのかな?」

 馬車からの小屋に連行された2人はまだ変装したままだった。様子を見ていると、ペットモードのシフォンが走って来た。目の前で人型になると、手紙と永吉(・・)のライセンスプレートを差し出した。

「協会の支部に持って行ってってお姉様が!」

 音が受取り、馬に跨がった。小屋から、追っ手の魔犬が飛び出した。音を逃がす為に、カトリーヌとシフォンは元の姿になり犬を遮り、僕はその後から出て来た、人相の悪い男達の相手をした。本丸に控えていたツワモノかと思ったけど、剣を交えてみると、どうやら容姿の問題で警備員になれそうも無い連中が残っていたらしい。軽く眠って貰って、小屋に向かった。カトリーヌとシフォンも加勢して突っ込もうとしたけど、黒い力の結界で近寄る事が出来なかった。

 小屋に踏み込むと、黒い力の籠もった手錠や鎖で雁字搦めになっていた。目隠しと猿轡を外すと、

「愛菜を先に!」

姉貴の言う通り愛菜を解放してから、姉貴の手錠を外すと、

「後は自分で外すから、直ぐ逃げなさい!」

「もう直ぐだから外しちゃおうよ!」

「いいから、早く、逃げなさい!」

初めて見せる形相で、僕らを逃がそうとしたけど、一歩遅かったようで、小屋は爆発した。

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