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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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東の国境へ

 今回は、奥様とお嬢様のお供なので、ゆったり行程で、宿泊はキチンと宿を予約しているから夜と朝はそこで食べられるし、お昼は宿でお弁当をお願いしているそう。

 馬と馬車を引き取りに行くと、

「おう、チー坊の持って来たヤツな、使ってみたら見掛けより質が良くってよ、50じゃ申し訳ねえから、馬車でサービスしておいたぜ!」

 馬車には、新型のサスペンションと防音、断熱効果の高いシールド、それに室内温度をキープ出来る換気扇。荷車はセキュリティアップと除湿、キッチンカーには冷蔵機能が付いていた。

 蹄は、魔力カット効果、軽くて丈夫な上、消音モード付き。乗り手か馭者の魔力が必要だけど、無音走行が出来るそうだ。

 ご機嫌でアパートに帰ると、明日護衛に付く奥様が待っていた。

「どうしたんですか?」

「実は・・・」

奥様は、魔術師になって世界を駆け巡るのが子供の頃からの夢だったそうで、中学校卒業の時には、家出して協会の支部に、飛び込んだそうだけど、その時点で捕まって、屋敷に連れ戻されたそうだ。お嬢さんに冒険の絵本を読み聞かせていると、

「ぼうけん、いきたい!」

母娘で冒険を夢見て、今回はオールキャンプ、オール自炊、出来るだけ自給自足で旅をしたいそうだ。おっちゃんに報告するのを条件に行程変更をオーケーした。姉貴と4人で支部に行くと、おっちゃんは、

「しゃあねぇな!」

しかめっ面で、予定ルートに赤ペンを入れた。宿に泊まる都合でゆったりペースで安全優先で計画したコースをほぼ真っ赤になる程修整して、キャンプ地に丸印、危険地帯にはドクロマークを付けてくれた。

「奥さんもある程度の装備があった方がいいんですけどね。」

嬉しそうな奥様は、大きな買い物袋を開いて、かなり本格的なアウトドアウェアと防具を披露した。しっかり子供用も用意してあった。

「旦那さんは知らないんだろ?」

奥様はペロっと舌を出してウインクしていた。

「じゃあ、これ!旦那からだ。」

懐剣と手紙を渡して、おっちゃんは頭を掻いた。

『にわか魔術師さん、必ず無事に帰って来て下さいね。本物の魔術師さんの言う事を聞いて、決して無理をしないと約束して下さい。家宝の懐剣を預けます。お守りよりは頼りになるはずです。では良い旅を!』

バレてたんだね。まあ、一応旦那様公認と言う事で、僕らとしては少し肩の荷が降りた。


 出発の朝、日の出前に宿まで迎えに行った。

「おはようございます!」

なりきり魔術師の母娘が外に出て待っていた。西国に向かった時は8人で今回は大人6、子供1なので、まだ余裕がある。お嬢様が飽きない様にカトリーヌが人型になって計8人にした。

「あの、『奥様』はやめて下さいね!理香(りか)でお願いね!娘は理沙(りさ)です!」

姉貴が『エリカさん』のままだったら『リカさん』とややこしかったかも知れないね、呼び方変えておいて丁度良かったかも!『理香さん』『理沙ちゃん』で決定。僕らは皆んな名前にちゃんで呼んで貰う。

「じゃあよろしくね、エリカちゃん!」

姉貴はちょっと赤くなっていた。理沙ちゃんも普段は『お母様』の所、僕らと同じく『理香さん』と呼んでいた。思いっきり、遠足気分で旅がスタートした。

 市街地を出ると、いきなり魔物に遭遇。イノシシ系の魔物で、滅多に人里に現れないレア物。かなりツワモノなんだけど、美味しいので攻略ノウハウは浸透しているから、サクサクと片付けた。

 肉の処理をしていると、

「手伝わせて!」

なりきり魔術師の母娘は、結構グロい作業も珍しそうにワクワクしながら手伝ってくれた。ランチは確保出来たけど、魔物ってうちの猫達を恐がって寄って来ないんじゃなかったのかな?

「気配の消し方、教えてあるからね!」

カトリーヌは呑気に笑った。

「えっ!危ないでしょ?理香さん達いるんだよ!」

「このエリアって魔物全員でも慈子に敵わないって、おっちゃん言ってたから安心して!前のままだったら、ひもじい思いしちゃうよ。」

程々の獲物を確保しつつ旅を進めた。

「そろそろお昼ね!」

姉貴は時計じゃなく、切り株を見て正午を把握していた。

「えりかちゃん、それ!とけいなの?」

興味津々の理沙ちゃんに、

「切り株のシマシマが広い所が南で、狭い方が北なの。北の方に影があるからね、丁度お昼なのよ。」

理沙ちゃんは目をキラキラさせていた。

 お昼は、さっきのイノシシと途中で調達したキノコに、山菜。なりきり魔術師達がアウトドアを満喫出来る様に、完全現地調達のランチにした。

 午後も同じ雰囲気で進み、夕方には川沿いのキャンプ場に到着。テントを張りながら、釣りをして晩ごはんは、お魚かと思ったけど、残念ながら、お昼と変わらないメニューになってしまった。

 理沙ちゃんは、僕らに懐いて楽しく過していた。風香に甘えていると、黒猫達が焼き餅を焼くんじゃないかと心配していたけど、なんとなく、上手くシェアして2人と3匹で仲良くしていた。

 ちょっと気になって来たのはプランタンの反応。普段音に甘えているのは、単純に音が好きなのか、他の3匹に敗れての第2希望なのか解るかも知れない。観察していると、3人、いや2人と1匹で遊んでいるので、きっと初めから、音が良かったんだね。

 逆に意外なのは、シフォン。理沙ちゃんが愛菜に接近すると、いつの間にか先に膝を占領したり、自分が理沙ちゃんと遊んだりして、愛菜に近付かせない。見方によっては喧嘩しているみたいなのにね。

 愛菜の花火を楽しんで、早目にテントに入った。理香さん、理沙ちゃん、姉貴と僕、それにカトリーヌ。2人は初めての寝袋に興奮していたけど、今朝早かったし昨夜はワクワクで寝付け無かったそうなので、あっという間に熟睡していた。

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