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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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帰国

 翌朝、またまた朝日とともに起きて朝湯に浸かった。関所が開くのは9時なので、ちょっとのんびり。8時半頃関所に行くと、皆さんずいぶん待っていたようで、既に長い行列が出来ていた。見えてはいないけど、北国側にも行列が出来ていると想定して、30分早い開門になったらしい。1時間程で僕らの番になり、関所の人や、出張所の人が見送ってくれた。

 橋を渡った北国の関所での手続きは、ステータスプレートを見せるだけ、エリカさんも出国票で無事通過。今まで前後に馬車が見える状態で走った事無かったので、ちょっと緊張して手綱を捌いた。湖に突き当たり、最短距離の山ルートと海沿いの平坦なルートを選ぶ所まで進んだ。

「エリカさん、お郷寄りますよね?」

「ううん、止めとくわ。あそこは永吉の郷でエリカの郷じゃないわ。山ルート行きましょ!」

地元に帰っても、来ようと思えば来れるもんね、無理に勧めることも無いので、山ルートを選んだ。順調に進んで、他の馬車とはバラけて、また前後の馬車が見えなくなった。普通なら、盗賊関係の心配する状況だけど、僕らの噂は浸透している筈なので、多分大丈夫。どんどん先を急いだ。

「3キロ先に、大きい魔物が3体!」

愛菜が叫んだ。速度を上げると、センサー通り、巨大な猿鬼(えんき)が3体、数台の馬車を連ねた商隊を襲っていた。護衛の人が、馬車から離れる様に誘導しながら戦っていた。馬車から充分に距離を取れた猿鬼の頭部を風香の金の弓が捕らえた。一発で粉砕、1体クリアかと思ったら、首無しで滅茶苦茶に暴れ出した。エリカさんの棒が光ると、首無しの右足は膝から吹き飛んだ。倒れた首無しは寝返りの様に暴れ続け、街道を破壊した。首の跡から愛菜が魔力弾を撃ち込みやっと停止した。他の2体が攻めて来た。エリカさんを倣って、脚を撃って動きを止めてから、頭部を狙った。顔、頭、手首から先、膝下以外は、剛毛で護られ、風香の弓も弾かれてしまう。2体目は脚、頭を飛ばしてから首の跡から魔力弾で決着、3体目は膝下の粉砕には成功したが、長い腕で頭部を護りながらにじり寄ってきた。剛毛を避けての攻撃が手詰まりになり、腕の隙間を狙ったが、ジワジワと寄って来る猿鬼を止めなれ無かった。風香は下って馬車を護り、僕と音はエリカさんの結界の中からチャンスを待った。間近に迫った猿鬼が呻き声と共に倒れた。猿鬼の向こうには、トドメを刺した愛菜が立っていた。

「不本意ですが、赤いお尻を狙わせて頂きましたの。」

「あっ!得意のカンチョ・・・」

「お黙り下さる?」

ご機嫌斜めの愛菜は、猿鬼の角を回収、巨大な身体はなんとか通行の妨げにならない程度に動かして、業者さんに頼む事にした。風香とエリカさんは、商隊の護衛の人達の治療にあたり、残った僕らは道路を直した。なんとか平らにすると、エリカさんは地面に強化魔法を掛け、効果があるうちに急いで通り抜けた。

 護衛の4人は愛菜がいた支部の魔術師で、全員Bランク。愛菜も下請けに付いた事があるそうだ。自分達の手に負えなかった猿鬼を、支部の厄介者だった愛菜が仕留めた所を見て微妙な雰囲気を醸し出していた。風香のヒールで身体は、復活している筈だけど、精神的にはダウンしたままの様だ。目的地が一緒なので同行する事にした。

 しばらく進むと愛菜センサーに何が引っ掛かった。

「ただの小鬼ね。私一人で片付けるわ!」

木の上から奇襲を目論んでいたと思われる小鬼達が、魔力弾でバタバタと落ちて来た。道の脇に魔力弾を撃ち込み、穴を掘ると、サクサクと耳を切り取った小鬼の死骸を放り込んだ。全部入ると大玉の魔力弾を撃ち込み、穴をだいたい塞いでスコップでならした。小鬼4匹を数分で処理。Bランクの皆さんが啞然としていた。

 その後は、何の障害も無く、テントで一泊、翌日も順調に、僕らの街に帰って来た。夜遅かったのでもう閉まっていそうだけど支部に行ってみた。まだ空いていたので、猿鬼の角を提出して報奨金の手続きと、その死体の処理の依頼をしておいた。おっちゃんが気付いてやって来たので、お土産を渡して、北国の古の魔窟以降の報告をした。

「あのう、お嬢さん親戚に恵比寿永吉さんって居ませんか?」

おっちゃんが、珍しくかしこまって尋ねた。

「さあ?知らないわね、ラッシー!」

えっ?知り合い?そう言えばオジサンだったエリカさんって、おっちゃんと同世代かな?Aランカーだし、なんかあるよね?

「もしかして、エリカ?」

「あら、そんなに恋しかったのかしら?」

訳が解らないので、解説をリクエスト。聞いた事を整理すると、おっちゃんとエリカさんって言うか永吉さんは、西国の騎士団の仲間で、永吉さんは当時から身体は男性、心は女性で苦しんでいたそうだ。魔王討伐後、魔物グッズを製作販売して今に至る。当時、女性ならエリカって名前がいいって言っていたのを、おっちゃんが覚えていたみたい。

「永吉の娘かって思ったけど、アイツが子作りする訳ねぇしな、なんて聞くか悩んだぜ!」

おっちゃんに、出国票を見せると何も聞かずに、チャチャっと処理して、

「測定はするけど、Bランク位の方が目立たないだろ?ついでに皆んなも測っとくか?」

エリカさんはメーターを振り切り問題無しでAランク、他の3人はまたまた成長してBランク。

「チー坊も測るか?」

おっちゃんの意地悪を無視して測定器を握った。今回もピクリとも動かなかった。予想通りだっけどちょっとガッカリ。

「これからどうするんだ?長旅だから少しゆっくりするのもいいぞ。」

「途中、温泉とかで息抜きしてたから、それ程疲れてません、準備はいるから何日かはいるけど、東国に行って古の魔窟潜るつもりです!あと、皆んな知りたがってるんですけど・・・」

魔力の持久力が圧倒的に強くなったのと、回復が信じられない位早くなった訳を聞いてみた。

「正直、解らん。ただ魔力同盟のせいならな、あくまで仮設だぞ、こうやって測るのって魔力を出す量なんだ、で、大抵は出す量と貯める量って一緒なんだ。だからフルで使うと一発で空っぽになるんだけど、チー坊が出す量はゼロだけど、貯める量がハンパなく多かったら同盟の仲間にどんどん供給出来るのかもしれんな。」

そうだったら、僕も役に立っている気がするけど、僕が居なければ、Bランクパーティーになれるんだよね。足を引っ張ってる感覚がどんどん強くなっちゃうよね。僕が抜けて下請けになればいいのかな?後で相談してみよう。

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