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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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お昼寝、お風呂、ごはん。のんびり過ごして、お宝のレシピを読んだ。カトリーヌは一緒に読んでいて、

「文字も読めるんだ?」

「うん、読めるよ。」

「そう言えば、猫ちゃん達って言葉は理解しているみたいだけど、お喋りしないよね?」

「そうね、魔力がもっとあればお喋り出来るようになるよ!」

魔力アップのレシピもあったよね?レシピ本を捲り必要素材を調べると、魔窟で拾って来たものでほぼ揃っていた。足りないのは赤葡萄酒だけ。早速買ってきて調合。5人分?5匹分?作って、早速皆んなに飲ませた。美味しそうに飲んてくれたけど、特に変化は無かった。5人は、5匹になってお昼寝を始めた。


 晩ごはんの時間になった、魔力アップドリンクで、ちょっとだけ使って、ほぼ一本まんま残っていた葡萄酒を見て、

「折角だから頂きましょう!」

愛菜はグラスを4つ出して葡萄酒を注いだ。パーティー結成の時は麦酒で、全然美味しく思え無かったけど、葡萄酒はちょっと好きかも。でもグラス半分で充分。音も風香も最初に注いだ半分でご馳走様。愛菜はとても気に入った様で、どんどんおかわりして、ボトルが空になると、気を失うように潰れてしまった。3人でお布団に運ぶと、好きな物だけ、ササッと食べて猫になって眠っていたシフォンが、慌てて飛んで来た。

「愛菜、病気なの?大丈夫なの?あたしのヒゲ使っていいから治してあげて!」

猫のヒゲは強壮剤の材料になるらしい。

「大丈夫だよ、酔っ払って寝ちゃっただけだよ!」

「でも苦しそうだよ!」

「それより、シフォン!お喋り出来るようになったんだね!」

返事もせず、浴衣を羽織り、

「氷枕借りて来るよ!」

バタバタと戻ったシフォンは、ずっと愛菜を看病していた。何度もタオルを絞って、少し落ち着いて来た。今度は寒がり出し、シフォンは猫に戻って懐に潜った。

 シフォンが心配する程は重症じゃ無い筈なのでそれぞれ布団に入ったら先に潜り込んでいた黒猫達が目を覚まし、人型になった。プランタンは音にお休みを言って、他の3人は相変わらず風香を奪い合ってキャーキャー言っていた。

 朝になると、二日酔いの愛菜が目を覚ますと、シフォンも飛び起きて、しっかり世話を焼いていた。朝湯に入ってスッキリして来ると言ってお風呂に向かうと、くっついて一緒に行くし、寒いと言えば毛布を持ってきたりと、至れり尽くせりだった。

 帰りは魔窟にも寄らないので、ゆっくり出発。明るいうちに着けばいいかなって感じの緩い計画。しばらくは、シフォンの過保護なお世話を素直に受け入れていた愛菜だったけど、二日酔いが抜けてくると、

「もう結構よ!」

プイッとそっぽを向いた。

「あら良かった、私も飽き飽きしてたのよね!」

さっと離れてペットモードになって馭者席に移った。

「シフォン、ありがと。」

愛菜の呟きに、一瞬反応して、プイッとそっぽを向いた。

 お昼は、宿で用意して貰ったお弁当。

覗き騒ぎの、お詫びとお礼だとサービスしてくれていた。見晴らしの良い所でお弁当を広げると愛菜は

「二日酔いにはキツイわ!」

シフォンの隣に行って、好きな物をあーんしていた。シフォンは嬉しそうに舌なめずりをして、

「残してゴミが増えないように協力してあげたの。」

プイッと自分のお弁当を食べ始めた。


 午後ものんびり移動。明るいうちに街に着いてエリカさんの店に行った。

「い、いらっ・・・ませ。」

シワシワのお婆さんが迎えてくれた。

「エリカさんは?」

「アタシよ。」

よく見ると、面影が有るようにも見えない事もない、紫の魔石のネックレスとピアスが、エリカさんだと証明してくれた。ただ以前みたいに性別不明な感じては無く、完璧にお婆さんだった。

 ヨレヨレの身体で、お願いしていたシフォンのワンピと、魔石のお礼と言って6人分の秋冬物とコートをプレゼントしてくれた。何が起きたのか聞いてみると、

「ちょっと無茶な魔法掛けてね、副作用で急速に老化してるみたいなの。」

詳しく聞くと、性転換の魔法を自分に掛けたそうで、紫の魔石を身に着け魔力を増幅して闇魔法の力を借りてやっと実現出来る特殊な魔法との事。酷い副作用は想定済み、

「一瞬でいいからオンナになりたかったの。お陰で夢が叶ったわ。」

来た時から30分位の間にも更に老けて行った。

「ねえ、紫の魔石がもう一つ有ったら副作用は収まるかな?」

「そうかも知れないわね、でもこれ以上の奇跡なんか起きないわよ。」

そう言うと、パタリと意識は失った。

 愛菜は指輪の包みをバリバリ開けて、有無を言わさずエリカさんの右の薬指に指輪を嵌めた。

「この国の魔窟って、奇跡の特売でもしてるのかしら?」

右手の先からほんのり光に包まれ、全身が暖かい光に包まれた。左手だけ光らないので、よく見ると、闇魔法の黒い指輪が嵌められていた。黒い指輪を外すと、左手も光に包まれた。だんだん眩しくなり、ピカッと輝いてから消えた。目が慣れて来て、そこに座っていたのは、お姫様のように美しく若々しいエリカさん!だったら良かったけど、見掛けはお婆さんのまま。

1時間程すると、『気を失って倒れている』雰囲気が、『スヤスヤ眠っている』感じに変わった。

「なんか、身体が軽いわ!一生外れない呪の指輪、どうやって外したの?」

「別に、普通に引っ張っただけだよ!」

しばらく様子を見ていたけど、さっきのように、どんどん老化する事は、なくなったようだった。

 カトリーヌは、クスリのレシピを広げ、

「これ試してみようよ!」

魔窟で採った素材て足りない物は街で手に入る物だったので音にお使いを頼んだ。

「キッチン貸して下さい!」

手持ちの素材で調合に取り掛かった。

 音とプランタンが帰り、ハチミツと麦酒を投入。完成したクスリをエリカさんに差し出すと、ナニモノかも聞かずに、一気に飲み干した。

「なんか、身体の奥の方が暖かいわ!」

『どっこいしょ』は無しでスッと立ち上がり、ピンと背筋を伸ばした。手足の動きを確かめて、

「元より調子いいわよ!」

調合したクスリは若返り薬で、一応成功と思うけど、容姿には効いていないみたい。死にそうに老いたお婆さんから、元気なお婆さんになったので、一安心して店を出た。

 支部に寄って報告と思っけど、温泉宿の覗きと置き引きの退治や、魔窟の新階層発見と、最深階層制覇の話はしっかり伝わっていた。サクサクと話しを済ませ宿に向かった。

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