魔窟トンネル
翌日、また魔窟に赴く。この前のガイドのお兄さんがいたので、他の古の魔窟と繋がるトンネルの事を聞いたら、
「伝説では、9階層にゲートがある事になっているんだけど、もう何度もいろんな人達が隈なく探しても見つけられないんだ。神話みたいな物だと思うけど、せっかくだから行ってみる?」
早速潜る。黒猫達は、虎クラスの猛獣サイズになって前後を堅めた。順調に進んですぐに9階層に到着した。グルッと見回しそれらしき所は見つけられなかった。エテ、オートヌ、イヴェールはガンガン魔物を狩って、自慢げに魔石を運んで来る。プランタンは怖がって音の背中に付いて歩いていた。
ふた周り位して魔物が片付いたのでランチタイム。白馬のカトリーヌが運んで来た荷物を広げてお弁当を食べた。食後、午後の予定を相談していると、プランタンが岩壁で爪研ぎを始めた。振り向きながらなので、何かを伝えているのかも知れない、
「プランタン、こっちおいで!」
スペースをとって風香の弓で射抜いて貰おうとしたけど、あっさり弾かれた。魔力を纏わせた音の矢も、愛菜の魔力弾の炎、氷、雷も全然駄目。気のせいかな?あきらめて、音が槍の柄の方で突くとガラガラと崩れ、灰色の岩の空間が広がった。瓦礫もキレイ無くなり、ただの出入り口みたいになっていた。
辺りの様子を窺いながら新しく出来た出入り口を潜った。元の魔窟の新スペースなのか、隣の魔窟への通路なのか、それとも既に隣の魔窟かもしれない。
「ここって、やっぱりガイドマップに・・・」
お兄さんに聞こうとしたら居なかった。まだ潜って無いのかな?と、出入り口を見ると、周りと区別が付かない岩壁になっていた!
音が槍で突いたけど、今度は反応無し。さっきの要領で魔力攻撃の後、槍を試したがビクともしなかった。
「取りあえず、目印付けておくね。」
風香は矢筒から金の矢を取り出しさっき通った場所に目印を書こうと思ったら、壁に矢が触れた瞬間、壁が崩れ潜った時の状態に戻った。もう一度潜ると元の9階層にお兄さんがいて、
「うわっ!出た!」
僕を見てオバケみないな反応をしていた。
「ゴメン、壁に消えたかと思ったら、今度は壁から湧いてでたからビックリしちゃったよ。」
出入り口を振り返ると今度は壁に戻っていない。またまた潜って確かめると、出入り口はそのまま。また戻ってお兄さんに聞くと、やっぱり壁にしか見えないそうだ。1度地上に戻って、キャンプの支度をしてから、新しいエリアを攻める事にした。戻りながらお兄さんに古の魔窟の伝説を聞くと、出入り口を潜った先は既に、隣の魔窟と思われる。魔王が封印されている南国は厳重な結界に筈なので、東か北の可能性が高い。見つかっていない北でも無さそうなので、消去法で東じゃ無いかな?各魔窟の9階層同士が繋がっているそうなので、そこから地上に出たら一気に東国に行ける事だよね?東国の地上を今日の目標に魔窟を潜った。
9階層に降りると、さっきの出入り口はそのままだった。たまたま、別のパーティーが通ったけど、壁にしか見えていない様でスルーしていた。隣の魔窟に移動して、上に進む。
8階層は真っ暗で、黒い力を感じた、愛菜センサーでは魔物は10匹ほど。壁に触って黒い力を排除する。不快な気分になるけど、何度かやっているうちに、受け流し方が身についた様で、以前のようなピンチにはならなくなっている。薄っすら明るくなると、小鬼がこちらを窺っていた。愛菜が魔力弾を連射して一瞬で鎮圧。更に上を目指した。
7階層から上も全て同じ感じで、僕が黒い力を排除して、愛菜が魔力弾で始末。あっという間に地上階層に来られたが、出口が無い。上への階段も通路も無いので、地上階層だとは思うんだよね。何周かしていると、プランタンがまた壁に反応した。
「ここ掘れニャンニャンかな?」
音の槍で壁が崩れ、外に繋がった。
「あれ?ここ、見覚えない?」
頭の中が東国になっていたので、直ぐに記憶の検索が走らなかった。
「自分の記憶が正しければ、北国に帰って来たみたい、四季の姉さん達が囚われていた、小鬼の巣じゃないかな?」
音が冷静に思い出していた。様子が変わっているのは、既に新しい入居者がいるようで、檻があって、女の子が3人囚われていた。どう見ても人攫いのアジトなので、子供達を開放して風香が傷やアザを治して、キャンプの支度。アジトの入口に結界で罠を張った。カトリーヌに竜になってもらい、協会まで飛んだ。
支部に着くとおっちゃんがいたので、
「ラッシー、ただいま!」
おっちゃんは、そう呼ばれるのが恥ずかしいのか、僕の手を引いて事務所に逃げ込んだ。
「ヤンチャな頃の呼び名だから勘弁してくれよ!」
「うん、どうしてラッシーなのか教えてくれたら封印してあげてもいいかな?」
「おいおい、いつの間にそんな、女の話術みたいの覚えたんだ?まあ、隠すこともないからいいんだけどな、おっちゃんな、五十嵐って言うんだ。イガラシのケツのラシからラッシーって呼ばれてたんだ。」
「教えてくれて有り難う!そうそう、報告ね!」
四季の姉さん達を無事、尼寺に送り届けた事や、盗賊や魔犬を退治した事、魔窟のお宝をゲットした事など、旅のダイジェストを一気に話して、
「こっから本題なんだ!四季の姉さん達を助けた小鬼の巣、あそこ魔窟の入口だったんだ!それからあの巣を人攫いがアジトにしているみたいでね、女の子3人保護してるのと、罠を張って置いたから夜には捕まえられそうだよ!寝床を見るとだぶん5人、掛かったら花火を上げるから、引き取りお願いね!」
「なんだ忙しいんだな、どこ行くんだ?」
「西国の魔窟の出張所に手紙出して、人攫いのアジトに戻るよ、こっちの魔窟攻略するから、ちょっと戻らないからね!」
「もしかして、魔窟のトンネル通って来たのか?」
「うん、そうだよ!東国かと思ったら、帰って来ちゃって、ちょっとガッカリしたんだ!じゃあ、今度はちゃんと帰って来るね、おみやげ持って!」
支部を飛び出し、カトリーヌに乗って飛立った時、山で花火が上がった。
魔窟まで飛ぶと、人攫い質は既に拘束済みで、愛菜が懸賞金一覧で、今日のアガリを確かめていた。5人で金貨10枚らしい。捕まっていた子供達は、すっかり元気になって、ペットサイズの黒猫達と遊んでいた。おっちゃん達が迎えに来るので、すぐにおうちに帰れそうだ。
おっちゃんの使いが到着。オートヌが元のサイズで檻ごと咥えて協会の荷車に乗せ、女の子質を引渡そうとしたら、風香達に懐いて離れなかった。仕方がないので、町まで一緒に行く事になった。折角なので、支部で報奨金の手続きをしたり、小鬼の黒い魔石から黒い力を排除して、売れる状態にして宝石店に持ち込んだ。西国のおじ様もそうだったけど、ジェントルマンでいろんなことを教えてくれた。持っていた方が役に立つ筈と、青い石を手元に置く様に勧め、赤い石は東国に持ち込むよう勧められた。今回は9階層より浅い所だけだったけど、金貨百枚を超え、金貨10枚と端数分を現金で貰って振り込みにしてもらった。
支部に戻ると拐われた女の子達のご両親が迎えに来ていて、嬉しそうに帰って行った所だった。風香達は、膝の上が寂しい様子だっので、カトリーヌ達に面倒を見るように頼んだ。
久しぶりにアパートに帰り、じいちゃん、ばあちゃんに挨拶、
「予定外に帰って来ちゃたの、ちゃんと帰って来る時におみやげ持って来るね!」
急な事なので、ご飯は外食と思っていたけど、ばあちゃんが用意してくれた。
部屋に帰って早々にベッドに入った。明日の計画を話しながら眠りについた。
 




