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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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国境

 少しお寝坊して、朝湯に浸かっていると音が、

「アレ、自分も出来るよ、ソロソロじゃない?」

アレってアレだよね。目を合さないように頷くと、音も目を逸しながら、処理してくれた。なんの躊躇いもなく触る愛菜よりも、ドキドキ遠慮がちの音の方が、心拍数を上げたかもしれない。自分で覗き込んでツルツルを確かめた。

心臓を落ち着かせるようにのんびりご飯を食べて支部に向かった。

 報奨金とCランクのステータスプレートを受け取り、馬車屋さんに向かった。仕上がりの時間にはちょっと早かったけど、カトリーヌが急かすので、周りの商店街で時間を潰してもいいかと思って近くまで行くと、馬車屋のお姉さんに会い、

「おはようございます!丁度仕上がる頃ですよ!こっちから作業場にどうぞ!」

荷物用に改造してあり、容量たっぷり、出し入れスムーズと職人さんが胸を張った。更にオマケでスペア車輪をメインの馬車用と他2台共用の分で大小2つ搭載。より安心して旅が出来そうだね。オマケにしては立派過ぎるので、追加で支払おうとしたら、

「昔、ここのお嬢が攫われたんだ、手口からいくと、昨日アンタ達が捕まえてくれた奴等の仕業だと思うんだ、仇とってくれた例だ、遠慮すんな。」

ボソッと言って倉庫に消えて行った。

 カトリーヌはご機嫌で早速変身して新車を引いた。荷室に無理矢理乗って宿に戻って、荷物を積み直した。四季の姉さん達が馬を連れて来た。黒光りする様な濃い焦げ茶の4頭はすっかり懐いている様子でそれぞれ馬車に繋いでくれた。

「何か魔法?」

昨日は体格がいいだけの汚い馬だったのに貴族やお偉いさんの馬車を引いてもおかしく無い名馬になっていた。

「シャンプーしてブラッシングしただけよ。」

春さんがニッコリ説明してくれた。

 国境へ向って出発。国境の関所に小さな集落があるだけで、そこまで1日半。魔物が多い地域でも無いし、僕らの噂はかなり浸透したはずなので、トラブルに会う確率は低いので、きっと予定通りに走れる。先頭の2頭立ての馭者席にカトリーヌが座り、他の2台は馬だけでついてくる。一応、市街地で無人で走るのは怪し過ぎるので、音と愛菜が手綱をとっているフリをして馭者席に座っていた。

 快調に馬車は進み、魔物の類にも、盗賊みたいな奴らにも会わず、お昼はお弁当を食べて、夜は保存食で簡単に済ませてテントを張った。何事もなく夜が明け、翌日も順調に進んで、お昼には関所に到着した。国境の大渓谷に掛かった橋の両側に出入国を管理する事務所があって、集落と言っても、職員の宿舎と、売店兼食堂しか無くて、食堂のメニューは、保存食や途中に狩った獲物で四季の姉さん達が作ってくれるご馳走と比べると、暖簾をくぐる気にならなかった。まだ胃袋は黄色信号だったので、国境の橋を渡った、向こうの集落に期待する事にした。事務所に行くと、

「西国の国境事務所が魔物に襲われて、橋を封鎖してます、向こうが落ち着く迄は、通れません!」

 昨日、今日とやたら順調過ぎたツケが回ったのかな?山側に行くと、1日のロスで、向こうの事務所へ行けるけど、小鬼の群れの近くを通る必要があるそうだ。海側へ迂回すると、2日は掛かるけど、海岸にもう一つ関所があって、そこを渡れば、海岸沿いの平坦で、比較的安全なルートがあるそうだ。小鬼はたいした事も無いけど、姉さん達に怖い思いをさせたくないので、海岸ルートを選んだ。

 なだらかな下りを延々と進み、夕日を合図にキャンプ地を探した。適当な空き地にテントを張って本日の旅は終了。保存食ディナーを食べて、早めに寝袋に入った。

 翌朝、薄暗いうちに出発。順調に走れば、海岸沿いの関所が開いているうちに辿り着けそうだ。余裕のペース配分で夕方には到着。翌日の渡し船を予約出来た。ここの関所は、ちょっとした街になっていて、旅館もあるし、食堂とかも色々あって、海の幸を堪能して、落ち着いた宿に泊まる事が出来た。迂回で旅が長くなったので、魔力と体力を充填しておこう。

 朝日と共に目を覚まし、朝湯に浸かっていると、ポツポツメンバーが増え、全員が、お風呂に集まっていた。

 朝ごはんを食べて、関所に向かう。渡し船は他にお客さんはいなかった。渓谷の関所で西国側で魔物騒ぎがあった事は、先頭さんの耳にも入っていて、万が一、対岸の関所に魔物が出ていたら、北国に引き返す条件付きでの出港だった。川の半分位まで来ると、

「なんか、怪しい雰囲気だな、引き返して関所で様子を聞いた方が良さそうだな。」

先頭さんが方向転換しようとすると、

「関所を含めて半径1キロの中には、魔物らしき反応は有りませんわ、このまま進めて頂いて結構です!」

愛菜は魔力弾を狙う時に感じる魔物の気配を把握出来るようになっていたので、出まかせでは無いが、先頭さんは信用しなかった。

「じゃあ私、見てくるね!」

カトリーヌは竜の姿に戻って西国側に飛んだ。関所の上空を3周程旋回して船着き場に人型になって降り立った。小さい身体で、大きく丸を作った。先頭さんはあきらめて、西国に向かった。

 入国の手続きをしていると、係のお姉さんが、

「あの船頭、よく引き返さなかったわね!」

初心者っぽい客を乗せると、色々ケチを付けて引き返して、船賃をぼったくるそうだ。経緯を話すと、奥の部屋のオジサンに何か告げると、警備のお兄さん達が先頭さんを連行して来た。ぼったくりの常習で捕まって、釈放されたばかりだったそうだ。

 手続きが済んで、ルートの確認をすると、海岸をずっと走るのが平坦で、比較的安全との事。宿がある集落もあるし、どこでも美味しいお魚が食べられるとオススメらしい。多少のショートカットより、宿とグルメを選択してオススメの海岸沿いのコースを選んだ。潮風に吹かれ快適に馬車を進めた。

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