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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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奈落の谷

 また大昔の誰かの記憶が流れて来た。僕は違う誰かになっていて、魔法の修行を頑張っていた。景色が変わり、師匠も変わり、僕自身も変わって、また修行。そんな事を延々と繰り返し、ふと気付いて目を開けると、風花の膝枕でお昼寝していた感じみたい。膝の上からは、視界が遮られて顔が見えないけど、この遮り具合いは風花だよね?

「今日は、早起きなのね!30分も経って無いわよ!」

清々しい目覚めで、ノビすると、

「今度はどんな、えっちな夢だったの?」

修行に明け暮れていた事を話しているうちに、姉貴の目が輝いた。

「やっぱり、そういうシーンあったのね?」

「あっ、師匠が!」

思い出した途端、耳が熱くなった。女師匠と、お風呂やお布団で普通は他人に見られたりしない所を、いじり合ったりしていた事を思い出すと、耳だけじゃ無く、体温が急に高くなった様に思えた。正直に話すと、質問攻めに会い、自分でも覚えているのが不思議な位、詳細に説明した。

「それなら実践で試せるわね!」

姉貴のハグで心臓が破裂するかと思ったら、

「冗談よ!」

と、開放してくれたけどディープキスのオマケ付きで、ドキドキは収まらなかった。幸い、そこで開放されたので、『女』を使って男を籠絡させるテクを習ったり、男の師匠と夫婦だったりした事は話さずに済んでホッと出来た。

 もう夜の筈なので、魔窟に戻り、最下層でお泊りにすることにして、細い通路を戻った。黒い大蛇が居た階層だけど、今回はなにも出ず、下へ降りた。

「夢の中での修行の成果、披露してね!」

姉貴はニッコリ微笑んだ。

「下の階層は、三ツ首が居るのに、そ、そんなえっちな事!」

思わず反応すると、

「そっちじゃないわよ!闘う技は修行しなかったの?」

「そ、そ、そっちね!うん試して見るね!夢の中の出来事だから、使えるとは思って無かったんだよね。」

38階層の主はやっぱり三ツ首だった。夢で覚えた技を試してみる。魔力を左手の指先に集め、5つの爪が金色に輝くのを確かめて、

雷爪(らいそう)!」

と、左手を振ると三ツ首は6つに裂けた。

「今の技が出来たっつう事は、耳、赤こうした技も会得してるっちゅう事やね!」

あらたは、後から抱き付いて耳元で囁やいた。反応の仕方が思い付かないので、無視して最下層に逃げ込んだ。


 最下層は相変わらず、魔物はいないので、ちょっとした安全地帯。結界、テント、焚き火、竈、お風呂。サクサクと支度をして遅い晩ごはん。奈落の谷の浄化を記念して乾杯。明日も早いので、早々にお開きにして寝袋に潜った。隣は姉貴で、夢の話をぶり返したり、実践ってことにならないかドキドキだったけど、いつもの様にスヤスヤ眠っていた。結局僕は一睡も出来ずに、ねこ達の腹時計が朝を告げたので、朝ごはんの支度を始めた。

 順調に登って、20階層で浄化成功の報告。見張りは別のお兄さんに代わっていた。地上に出て、月極の駐車場を解約して、預けていた馬車を魔石やアイテム一緒に換金して、保存食とかを買い出し。そのまま港に向かって、『太陽丸』で一泊した。停泊の手続きに、船の名前が必要で、『茜』『旭』『日向』とお日様関係の名前が続いていたので、『太陽』にして、日之出国で船の名前に付ける『丸』で『太陽丸』結構気に入っている。

 朝、出航して、夕方には南国。馬車と駐車場の始末をして、温泉プールのコテージでお泊り。おっちゃん達との約束に余裕があるので、ちょっと骨休め。プールで遊んでいると、タカシマ御一行がやって来た。取り巻きの2人は、相変わらずアスリート体型をキープ、タカシマもややポッチャリレベルに絞れていた。急に美女になる訳は無いけど、明るくなった表情のお陰で、印象はかなり良く見えるようになっていた。しっかりトレーニングしていたので安心だね。姉貴は3人を誘って大浴場に行っていた。

「もう大丈夫、普通の女の子よ!」

変身させた責任を果たした感じで、ホッと出来た記念に乾杯だと言って、泡葡萄酒を買って来ていた。

 タカシマ達も乾杯に加わって楽しく飲んだ。みんなから見ても!普通の女の子で、男性の視線で僕等を見ている様子はなかった。視線で姉貴に『変身完了だね!』って投げ掛けると、満足そうに頷いていた。

 翌朝、出航して西国に向かう。地図のマークに1番近い港でおっちゃん達と待ち合わせしている。明日の昼の約束だけど、今夜先に着く予定。船の操縦は皆んな習ったけど、主に(どれみ)が担当していた。今日も軽快に西国に到着した。上陸して宿を探す。残念ながら一軒しかない宿は埋まっていて、港の空き地にテントを張った。いつもの夕食を食べていると、近所のおばあちゃんが来て、

「船旅かい?ここの沖には魔物が居てね、帰って来られないから気を付けるんだよ。特に月の出ない日は危ないからね。」

この集落では、数年に一度位で、特に時化でもないのに、漁船が戻らない事があるそうで、おばあちゃんの旦那さんも50年程前に、息子さんは20年程前に出て行ったきりとの事。その他にも昔話を聞かせてくれて、魚や海草を一緒に漬けた漬物もご馳走してくれた。姉貴と音は、米酒に合うと飲み直していた。

「新月と満月は潮の満ち干きの差が大きいんじゃ、潮の流れがつようなって、新月の暗さと相まって海難事故が起こるのかも知れんな。」

幸か不幸か新月は少し先なので、日中の捜査ならやや安心かな?安心じゃ無くても態々この為に来たんだから、調査っていうか、『黒い力の何か』を浄化しに行くんだよね。

 明日に備え、焚き火を消して寝袋に潜った。

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