地図
海岸では、おっちゃん達がまたまた呆れ顔。
「結構頑張ったんだぜ。」
1メートルは裕に超える鮭を担いでいるのに、しょぼい顔だった。おっちゃん達は投釣りで、うんと遠くまで飛ばして大物を狙ったんだけど雑魚ばかりで、茜が投げて?一応海に届いた感じだったのに、いきなりヒットで大物ゲットだったみたい。
ベルは、包丁に魔法を纏わせると、鮮やかに捌いて、イクラを醤油漬けにして身は骨を外して、野菜やキノコを挟んで蒸し焼きにした。日之出国の白陸で人気の料理らしい。茜が釣った(ちょっと竿に触ったくらいだけどね)ご馳走で乾杯。龍ジイのお迎えは、明日の約束なので、孤島のキャンプを存分に楽しんだ。
「自分思うに、これ、奈落の谷です。」
山頂の洞窟で見つけた地図に、3つのマークが書き込まれていて、一つは今居る北の孤島、もう一つが西国沖。で、音が注目したのは、東国にあった奈落の谷。崩落して、今は誰も入れないけれど、黒い力が湧き出す様な池が有るんだよね。今は協会で立ち入り禁止にしてるんだけど、シブトイ悪人がまた黒い力を狙いそうだよね。
「魔窟から行って、根こそぎ潰したろか!」
あらたが拳を挙げると、皆んなもその気だった。龍ジイを待ちながら、キャンプの続きを堪能して、東国遠征の計画を練った。因みに、西国沖にはそれらしき島派は無い筈なんだけど、立ち入ると遭難して帰って来られない海域が、マークの海域らしい。
翌日、約束通りに龍ジイが迎えに来てくれた。大陸に送ってくれると思ったら、
「行きは急いでたのはわかる!帰りは島の旨いもん喰って行け!」
円錐山の島に戻った。ご馳走を食べて、珍しいお酒を飲んだりした。
東国の事と、西国沖の話しをすると、
「それならあの船乗って見ねえか?」
龍ジイは珍しい船があると、倉庫に連れて行ってくれた。不思議な羽根に船が乗ったような乗り物だった。
「設計は完璧なんですけど、動力に必要な魔石が見つからないんです。って言うか、きっとこの世に存在しないと思うので、なんとか改良したいと思ってるんですよ。」
船を開発しているお兄さんが色々説明してくれた。
「浄化した魔晶石、大きいのが有ります!」
古の墓の洞窟から持ってきた石を見せると、
「うわ、魔石としては十分だね、でも、動力にするには、魔力注入が必要でね、そんな魔石を満タンにしたら、魔力枯渇で重体だよ!」
「大丈夫です!」
魔晶石に魔力を注入、船にセットした。
「これなら動く!」
直ぐに港に運んでいた。僕も乗ってみたかったけど、漁師のお兄さん達が呼びに来て、宴会に復帰した。
翌日、港にに行って『水中翼船』に乗せて貰った。物凄い速さで飛ぶように走った。僕等がはしゃいでいると、
「借金が3箱近くあるんです。今もままだと、首括るしか無いんで、買って貰えませんか?5箱は掛かって居るけど、借金が無くなれば、これの小型を作って商売になると思うんです。3箱でいかがでしょうか?」
普通の船がでももっとするよね?箱って気楽に言うけど、金貨千枚だよね!金銭感覚大丈夫なのかな?振り込みでもオーケーって事で購入を決定した。元々は東国の人で、広い作業場とか厳しい波での実験をする都合で、円錐山の島で研究していたそうだ。技術的には小型の廉価版の見通しは立って居るので東国へ戻るそうだ。東国へ向かう間に操縦を教わる事で、取り引きが成立した。
おっちゃん達は、馬車を置いて行けないので、別行動。定期便は明日なので大陸に送ってから、大航海。
「俺達だけになったら、盗賊に襲われそうだな!」
「黒い馬車が売れる様になるかも知れないから、頑張って下さいね!」
「チー坊が言うと、ホントになりそうだな、まあ、生還を祈っていてくれよな!」
おっちゃん達に見送られて大海原へ船を進めた。日中は水中翼で浮いて飛ぶように走り、夜はのんびりプカプカ進んだ。2日目の夕方には東国の港に到着。地図で大雑把に図って計算すると、日之出国なら4時間位で行けそうだ。定期の客船の5、6倍のスピードってこと?気楽に行ける様になったね。
停泊の手続をして、真っ直ぐ古の魔窟に向かった。魔窟の傍の宿にお泊りして、朝から潜る。下層から奈落の谷に行けるので、20階層から下は立ち入り禁止になっている。バラさんのお手紙があるから通して貰える筈なんだけど、見張りが新人とかだっりしたら面倒かも知れないな。バタバタと魔物を倒して20階層。
「おう、あらたじゃないか!」
ラッキー!あらたの兄ちゃん達が見張りだった。バラさんのお手紙を見せて、難無く通過させて貰った。深層に降りて、魔物が強力になっている筈なんだけど、サクサク片付けた。初めて来た時は下から登って来て、かなり手こずったんだけど、初心者向けの観光魔窟みたいに進んで行った。
黒い大蛇なんかは、姉貴と愛菜と僕で大ピンチだったけど、黒い力を浄化とかってプロセスはすっ飛ばして、あらたの登鯉は大蛇に見合ったサイズになって、真っ二つに切り裂いた。
奈落の谷への通路は協会で封印していたけど、愛果と愛葉は赤い魔力刃をクロスして飛ばし、あっさり解除して細い通路を進んだ。愛果と愛葉のセンサーは魔物が居ない事を確かめていた。黒い力が湧き出す池には前はカエルの魔物が居たけれど今回は居ないし、真っ黒だった水が、うっすら濁った程度だった。また眠ったら危険なので風花と姉貴が両側を支えて池に手を浸した。
やっぱり僕は眠ってしまい、池は直ぐに澄みきったらしい。