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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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西国へ

 いよいよ西国へ向かう。遠征の準備は万端で、四季の姉さん達も前よりは人間らしい受け答えが出来る様になっていた。馬車に乗り込んで始めは僕が手綱を取って、昼まで走った。人里はとうに離れていたので、自炊する事になる。お弁当も考えたけど、長旅なので料理にも慣れた方がいいって、荷車を改造してくれたおじさんが、自炊を勧めてくれた。荷車に役に立つオプションがあるそうだけど、何ができるのか、どう使うのかは教えてくれなかった。

 見晴らしの、いい所に馬車を停め、荷車の仕組みを調べると、簡易キッチンが搭載されていた。但し、使い方は一切解らない。四季の姉さん達は、よく知っている様でちゃちゃっと炒め物を作ってくれた。人型になったカトリーヌも大喜びで食べて、4人の笑顔を初めて見ることが出来た。

 

 午後は手綱を、愛菜と交代して簡易キッチンの使い方や料理の事を、四季の姉さん達に聞いた。相変わらず口数の少ない姉さん達だったけど、美味しそうな話にウットリする僕の表情に釣られ少しずつお話ししてくれるようになって来た。


 休憩の時、晩ごはんになりそうな獲物を探して少しウロウロ。どこででも見掛ける野生化した鶏をゲット馬車に戻ると冬さんが、白猫を膝に抱いていた。

「わあっ可愛い!どこから来たの?」

僕が駆け寄ると、

「もうちょい寝かせて。」

白猫が面倒くさそうに喋って丸くなった。声は、カトリーヌだった。

「甘えるには、丁度いいサイズなんだって。」

風香が笑って猫になったカトリーヌを、撫でた。全くの無視で眠っているかと思えば、春さんと音が、ドーナツを揚げて持って来ると、スキッと目を覚まし人型になった。ドーナツを頬張ると、

「そろそろお仕事ね!」

指に付いた砂糖をキレイに舐めて、馬車を飛び出た。音が追って、馬車に繋いで手綱を取った。

「変身の度に全裸になるのってどうにかならないかな?」

「外で人型になるのがよろしく無いのよ、猫になって馬車に入ってから人型になればクリアですわ!」

愛菜の作戦に一同納得。走っているカトリーヌに説明すると、

「えー、面倒くさいよ!」

裸に対しての羞恥心を理解して居ないようで、変身した時に着せているマントも迷惑そうで、馬になる時には、躊躇い無く脱ぎ捨てていた。

「少し遠回りになりますが、この先の湖の所を、海側に行くと、変身に対応出来る特殊な繊維や生地を作っている集落があるはずです。仕立ても魔法ですから半日もいらないと思いますよ。」

夏さんが教えてくれた。そっちのルートも検討したけど、最速を選んで山側を行くつもりだった。海側の方が、平坦で、街道の整備も比較的に良く出来ているそうなので、ルート変更も悪くない。途中、宿のある集落もあるのでメリットは充分。但しデメリットとしては、盗賊に会う確率が結構高いそうで、四季の姉さん達を怖がらせ無い事を考慮しての山側選択だった。

「あと、コレも必要ね!」

愛菜がいきなり僕の胸を突いた。

「あなた、私と出逢って半月も経たないのに何キロ痩せまして?」

「んと、10キロ位かな?」

「それで、ココだけ残して他が痩せるなんて、反則ですわ!」

愛菜はさっき突いた所を突いた揉み始めた。皆んなは大笑いで、夏さんはサイズを測ってくれた。ホックがしょっちゅう外れて困ってる事を打ち開けると、アンダーを詰めて調整してくれた。

「仮処置ですよ、サイズを合わせて新調する事がオススメですね!」

そうして、海側のルートを選ぶ事に決定した。


 夕方に、湖畔に到着。夏場に水遊びするようなスペースを見つけそこでキャンプ。僕らがテントを張っている間に、四季の姉さん達はさっき獲ってきた鶏をディナーに変身させてくれていた。皆んなが喜んで食べると姉さん達の表情が少しだけ柔らかくなって見えた。

 テントと馬車は纏めて結界を張っているが、念の為に姉さん達2人、僕ら2人で泊まる提案をしたが、夜中うなされて叫んだりする事があると言って、別々のテントにしたいと姉さん達が主張したけど、安全第一で二人ずつ案で押し切った。

「僕らが居るから安心して休んで下さい!」

ランプを消して目を閉じた。

 皆んなすぐに寝付いた様で、スースーと寝息が聞こえて来た。僕もウトウトすると、隣で寝ていた春さんが悲鳴を上げた。秋さんも怯えて泣きじゃくっている。寝袋の窮屈感が拘束を連想させるのかも知れないので、ファスナーを開けて手を繋いだ。少しだけ落ち着いてシャクリ上げるような泣き方になり抱き着いて来た。強くハグすると段々落ち着く様で1時間くらいで泣き止んだようだ。

 そのまま朝を迎え、泣き腫らした顔で、僕に抱きついていた事を凄い勢いで謝っていたけど、いつもは何回と目を覚ますのに、その後はたぶん、落ち着いて眠った様で、少しだけ顔色もよく見えた。

 風香と音のテントでも同じような感じで、気不味さと、打ち解けあえた感覚が微妙に絡み合って朝の支度を始めた。朝ごはんは、ご飯、味噌汁、鶏のソテー。春さんがあっという間に作ってくれた。お昼のおにぎりもあるようなので、安心して先を目指せそうだね。

 道中、休憩がてら狩りをしたり、きのこや山菜を採って食料棚を満たし、カトリーヌのお洋服を仕立てて貰える集落を目指した。


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