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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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古の墓

 翌日は男子棟にもいる弟子?達のお喋りを聞いてから、馬車の点検に行った。

「おう、久しぶりだな!確かこんなの持ってたよな?」

おじさんが見せてくれたのは、僕等がチクワって呼んでるバッグとかの容量がグンと増えるお宝だった。日之出国に山でゲットしたチクワを見せると、

「デ、デカイな!それ使ってもいいか?」

大体このパターンなら、なんか素敵な仕掛けを用意してくれてるんだよね!すぐにオーケーして渡すと、奥に消えて行って、あっという間に新しい馬車を引いて来た。銀の馬車のマイナーチェンジかな?一回り大きくなった位かな?

「ここをこうやって、、、」

パタン、パタンと掌サイズに片付いてしまった。

「魔窟のトンネルなんかで役に立つだろ?」

確かに便利!森を攻める時も、馬車に戻る事を考え無くていいので、自由度が増すよね。相変わらず無償提供なので、今回もアイテムをプレゼントした。

 いつものように遠征準備をして、支部に行くと、おっちゃん達も準備万端。協会のじゃない黒い馬車を磨いていた。明日の打ち合わせをして、アパートに帰った。


 翌朝、早起きして弥生さんのご飯を食べて、おっちゃんが来るのを待った。時間通りに蹄の音が響いて、北への旅がスタートした。

 盗賊の類は3年前の遠征で粗方片付いた上、若手の成長で、格段に治安が良くなったみたい。魔物も危険な物は狩り尽くした感じだし、元々猫達が気配を切らなければ、殆ど出て来ないからスイスイ進んで、偶に産直のお野菜を買ったりして、宿のある集落を越えて暗くなるまで馬車を走らせた。

 真っ暗な空き地に、(どれみ)の照明弾が光り、一斉にテントや竈の支度をした。流石に5分では完成しなかったけど、竈と焚き火の灯りで残りを片付けた。僕が眠っていた間に皆んなは、魔力や闘いだけじゃ無く、料理の腕も磨いていた様で、保存食ディナーの新作を作ってくれた。

「もう一生分驚いたと思ってたけど、まだあったんだな!」

おっちゃん達も、またまた絶賛だった。

 2日目もガンガン進む。やっぱり宿を無視して、走れるだけ走った。結局前回を同じように3泊4日で北の港に着いて、前と同じ宿にお泊り。前と違うのは、盗賊の警戒をしなくて良かったせいか、少し早く着いたのと、龍ジイが来てくれていて、明日の夜明け前発で送って貰えるそうだ。サッサと、お風呂に入って、ご飯を食べて夕方にはお布団の中にいた。


 まだ星空がキラキラしているうちに船に乗り込んで、北の孤島を目指した。キレイな星空は朝焼けに変わり、雲一つない青空になった。後に見えていた大陸は水平線に沈み、島の山頂が見えて来た。順調に近づいて、最後はカトリーヌのピストン空輸で上陸した。

 今回はお墓参りが目的だし、魔物は一度倒している種類だろうから、そんなに危険な事はない筈だよね?船で充分休憩しているので、直ぐに登り始めた。

 洞窟や坑道みたいな通路、外に出たり、ハシゴを登ったりして、登り続けた。魔物も前に倒した種類で、安全策を貫いてもサクサクと進めた。魔族(か、魔族の血が濃い小鬼)が襲って来た所はなにも現れず、彼らの住居は廃屋で誰も居なかった。

『魔の頭が生まれ変わった赤子を育てよ、古の墓を詣って、健やかを祈願せよ。』

魔王の先祖の墓と思われる石碑に、

「争いのない世の中になりますように。茜が元気に育ちますように!」

魔王の宗教なんて解らないので取り敢えずお願いしてみた。すると、石碑は粉々に砕け、洞窟の入口になった。

 洞窟内には、薄っすらと黒い力を感じだけど、直ぐに浄化出来る位で魔物の気配も無かった。

「「魔物はいませんわ!」」

愛果と愛葉のセンサーも安全と判断。浄化を始めても、イヤな気分とか不幸な記憶は、流れて来ない。浄化している手応えは有るのに、薄く漂う黒い力は、一向に薄まらない。

 なかに踏み込むと、真ん中の台に、今まで見た中で最大、過去浄化した全部の魔晶石を合わせてもなお及ばない大きさだった。茜はトコトコと歩み寄り、台に乗って石に触れた。急いで離そうとしたけど、魔晶石に当てた茜の手を覆う様に僕の手が重なり、魔晶石からいろんな情報が流れて来た。天族、魔族、人間が共存していた景色に入り込んだ。僕は誰か解らない女の人になっていて、旦那さんなのかな?知らない男の人と暮らしていた。抱いている赤ちゃんは、茜のようにも思えるし、そうで無いとも思えた。いろんな人になり、いろんな人と暮らし、沢山の子供を産み育てた。時には、産む以前のプロセスに赤面ちゃったりもしたけれど、夫婦なので自然な事だよね。

 茜を浄化して眠った時の何十倍も夢の中に居た。目を覚ましたら、おばあちゃんになってるかも知れないな。


 快眠した気分で目を覚ますと、テントの中。波の音と潮の香りが、海の傍だと知らせてくれた。山頂にいた時と同じ戦闘服で手足とか目視確認出来る所は、おばあちゃんになった感じじゃなかった。山を降りた平地のようだ。

「おはよ!気持ち良さそうだったわよ、いつの間に、おとなの嗜み覚えたの?」

姉貴の質問は、夢の中で赤面した場面の事だろうな。会話を聞いて、皆んなテントに飛び込ん出来た。おっちゃん達も事情を把握している様で茜を連れて釣りに出掛けた。

 長く眠っていたとしても数日?実際には4時間位だったみたい。前回とは違って、具合悪そうな感じじゃ無くスヤスヤ眠っていたので、カトリーヌの空輸で降りてきたそうだ。

「なんか幸せな夢みてたでしょう?」

皆んなの視線が至近距離で突き刺さり、隠しても無駄な状況と判断、覚えている限り詳細に話した。

「僕そんなに、えっちな反応でした?」

最後迄ニコニコ聞いて、

「そんな事あらへん、フツーにスヤスヤ寝とったで!」

「お主、起きた時ソワソワしていたからのう、姉御に悟られたんじゃ。顔色を隠す技は、Gランクのままじゃのう。」

「あ、姉貴が顔色読むのSSランクなだけだもん!」

「「どちらも正解ですわ!」」

なんとか開放されて、海岸に釣果を確かめに行った。

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