3年ぶりの帰国
僕等がこの先も、蛇行しながら盗賊狩りで、ブランクを埋める調整するって伝えると、ナベさんは、キリのいい所まで仕事を片付けてから北国に直行すれば、大体丁度いいタイミングじゃないかと、カウンターに入って、テキパキと書類を処理していた。新人の仕事っぷりには見えないので軽く突っ込むと受付のお姉さんに、
「先輩!お嬢様達の宿の手配をお願いします!」
書類の束にを持って、事務室に逃げ込んだ。
ナベさんが手配してくれる宿は、いつも同じ所で、お部屋もお風呂も安心、安全。お料理も美味しいし、前に泊まった時、泡葡萄酒が大好評だったのを覚えていてくれて、今夜も用意してくれていた。ベルも飲める年齢(の設定)になったので、遠慮無く飲めるし、茜も卒乳してるので、皆んな気兼ね無く飲める。
お風呂でリラックスして乾杯。ナベさんも駆け付けちょっした宴会になった。バラさんも、同じ様な感じらしく、仕事を一段落させて、北国に向かうそうだ。当然おっちゃんも行くんだろうな。ナベさんに聞くと、
「えっ、知らせて無かったの?」
そう言えば、新陸の山を攻略してから帰るって言っただけかも知れない。弥生さんとは時々水晶でお話ししてたから、皆んなに伝わってるって勘違いしちゃってた。
「盗賊がガンガン突き出されてたから、そろそろ来るのは解ってたけどな。」
協会の支部とかに、盗賊を捕まえた手続きをすると、(元?)統括支部長に伝わるだろうね。改めておっちゃんに連絡すると、北の孤島に行く話は、バラさんから聞いたそうで、少しイジケていた。
帰ったら、またおっちゃんの家でバーベキューをする約束でなんとか機嫌を直してくれた。
潰れないうちにお開きにして、ナベさんは、また支部に戻るらしい。僕らは大部屋で全員一緒。一部屋に全員は、茜が参加してから初めてで、皆んなのお布団をハシゴしてはしゃいでいた。
西国の都から北側は、殆ど盗賊の被害が無いらしい。海岸を根城にしているヤツらがひと組だけらしいので、先ずはピンポイントでそこに向かう。のんびりの出発で大丈夫なので、早起きはしてけれど、朝湯を楽しんで、しっかりご飯を食べて、新人さんの働きを覗いてから出発した。一日走って海岸のキャンプ場にテントを張った。盗賊出没エリアなので、夜襲を返り討ちにする作戦。
「焼き肉の匂いでおびき出しましょう!」
あらたが言いそうなジョークかと思ったけど、音は本気らしい。盗賊が喰い付くかは別にして、美味しい香りを振り撒いて美味しいお肉を頬張った。
夕方から始めて、真っ暗になった頃、蹄の音と、馬車の車両の音が近付いた。
「釣れました。」
音はそう言って、極光を掲げると、照明弾が飛んだ。
「5分です。」
照明弾が照らしてくれる、5分間で始末するつもりらしい。馬車から4人の大男が降りて来て、それぞれ長剣を抜いた。風香が単独で切り込み、結界で自由を奪うと、明星でかすり傷?台所での包丁傷より小さく斬ると、大男達は風船が萎む様に倒れ込んだ、御者席の男は一人だけで逃げるつもりみたいだけど、カトリーヌの号令で馬は一歩も進まない。風香は明星を振って、雷の魔力刃を飛ばし、最後の一人を眠らせた。照明弾は、まだ煌々と輝いていた。
音は、萎んだ盗賊の中から、ボスらしいヤツを、拘束して喋れるだけのヒールを掛けて、自白の魔法を掛けた。アジトはこの先帰り道に寄れる所に有って、仲間は他に5人いるそうだ。今日は反対方面を物色して深夜に帰還の予定との事。
「「きっとお寝坊でしょうから、お休みの間にお縄がラクですわ!」」
今夜襲われる被害者さんには申し訳無いけど、今から探しても間に合わないので、朝イチで助ける事にして、寝袋に潜った。
日の出と共に起きて、直ぐにアジトへ出発。昨夜のうちに支度していたおにぎりを齧りながら馬車に揺られた。1時間ほどでアジトに到着、一応結界の心得はあるようで、入口を隠していた。
「「結界のつもりなのかしら?」」
愛果と愛葉は、紙テープを切る様に入口を通過した。中には檻に閉じ込められた子供が3人、寝袋が5つ転がっていた、寝袋をそのまま拘束して、目を覚ましたヤツは、雷弾で二度寝してもらった。音はまた自白魔法で、昨夜の犯行を調べた。寝ている子供を攫ってきたらしく、窓を壊した位の被害らしいので、先ずはカトリーヌに乗って、子供達の無事を報告に飛んだ。
子供達を送り届け、出張所に盗賊を引き渡し戦利品を換金した。大金にはならかったけど、窓の修理代には充分だったのでそれに充てて貰うように頼んで、北国へ向かった。
テントでもう一泊して、初めて西国に来た時に乗った渡し船で北国に入る。あの時のぼったくりの船頭がまた客を誘っていた。
「猫はタダやろ?」
あらたはぼったくりの船頭をからかって値引き交渉していた。前の時の事を話していたので、お仕置き代わりらしい。さんざんイジリ倒して、別の船を選んだ。無事に川を渡って帰国の手続き。そのまま海沿いを走ってホームに帰る。途中漁港で海の幸を堪能。盗賊にも魔物にも会わずに帰り着いた。支部に行くとおっちゃんも支部長クビになって、新人からやり直しているみたい。
「パンも夜中には着く筈だぞ、ローズは明日だってさ。」
いっぱい有り過ぎて、どこのか解らなくなったお土産を配ってアパートに帰った。