登頂
早起きして、朝湯。以前と変わらないんだけど、新しいミッションが追加送料されていた。退院から移動中、毎朝お化粧の訓練をしていて、
「ほな、今日は単独デビューや!」
大体の工程は理解出来たので、一歩から独りで頑張る事になった。鏡とにらめっこをしていると、いつの間にか全員揃って僕を観察していた。
「飲み込みが早いのう、儂はどうも上手くいかん。」
ベルは凄いって褒めてくれたけど、童顔のベルが何処か解らない位にちょっとだけ塗った様なテクニックの方が上級者に思えた。一応、メイクの方は合格って事で、迷彩の戦闘服に身を包んで山に向かった。
馬車を借りて、カトリーヌに引いてもらう。小一時間で登山口の筈なんだけど、途中、水溜りが沼の様になっていて道を塞いでいた。浅かったら強行突破と思って、近く迄寄ろうとすると、
「「沼全体が魔物ですわ!!」」
愛果と愛葉のセンサーのお陰で奇襲に会わず、水面から伸びた触手は、あらたが凍らせた。
「自分が片付ける!」
音は元の姿のプランタンの鼻先に乗って、高く跳び上がると極光を大きく振った。沼の水面に大きな裂け目が出来て、そこに流れ込む様に沼が消えて無くなった。プランタンはクッション役で音を受け止めて、何事も無かったように馬車に戻った。
登山口で受付けをして、馬車を置いて徒歩で登る。なだらかな道は、茜も歩かせて、カトリーヌと挟んで手を繋いだ。急になって来たらおんぶして、夕方テントか張れるスペースを見つけ、今夜の宿にした。
姉貴の結果で安全なキャンプ場にしているけど、その外に気配を感じた。
「大陸から逃げて来た悪党ね!」
新陸は、日之出国だけど、1番近い炎陸よりも大陸の方が近く、貿易とかも盛んで、人の行き来も多い。大陸の悪党が、追手を避けて、ここに潜んでいるってウワサは以前から聞こえて居るけど、かなりの人数だった。魔力刃を飛ばすヤツ等が、結界を襲うけど、姉貴のパワーに敵う筈なのでも無く弾かれていた。
「儂も小手調べさせて貰おうかのう。」
ベルは、飛竜を抜いて結界を出た。
ベルを見つけた悪党達は、魔力刃を束にして襲って来た。ベルは、期待通りの攻撃を飛竜で絡めて跳ね返した。悪党達は、立っていた地面を失って、大穴のそこに重なって倒れていた。
「直撃させたら即死じゃろう、狙いもまあまあじゃ。」
猫達が回収して拘束、音は1人をヒールして起こすと、額に指を当てて、尋問を始めた。アジトはもう少し登った所にあって、仲間はあと3人。2人は人里に降りているらしい、明日には戻るらしいので、登ってくる所を捕まえればいいね。もう一人は、アジトで留守番、攫って来た3人の女性を見張っているそうだ。
「捕まっている人がいるなら、助けに行かなきゃ!」
まだお日様は沈みきっていなかったので、姉貴と音と僕でカトリーヌに乗って
空から急行した。
アジトは洞窟で檻の前で留守番の男は、
「うご、、、、。」
悪党の決り文句を言い切る前に、ノックダウン。因みに、セリフの続きは、
「、、いたら、人質の命は無いぞ!」
って感じかな?
音は、ノビた留守番を尋問して、盗品や、備蓄品をそっくり回収、檻の鍵のありかも聞き出して、サクっと片付けた。暗くなった山道を30分位降りてテントに到着。晩ごはんの支度が出来ていた。
助け出した3人のお姉さん達も元気になって一緒に乾杯。山菜採りに来て捕まったそうだ。ボスが留守だったお陰で、子分たちは手を出す訳にいかず、ただ監禁されていただけで済んだみたい。僕等が山頂に向かう事を話すと、自力で降りるとの事。明日帰る筈のボスともう一人を始末してから別れる事にして、寝袋に潜った。
翌朝、お姉さん達と一緒に山菜を採りに森に入った。珍しいモノ、高価なモノ、薬の調合に便利なモノなどなどたくさん採って、救出のお礼って渡してくれた。待っていた悪党のボスは、すばしっこい魔物を使って僕等を捕まえようとした。愛果の魔力刃と少しずらした愛葉の魔力刃は逃げた魔物をバッチリ捉えてゲームセット。ボスともう一人を拘束して、昨夜の分とひとまとめにした。山菜採りのお姉さん達に、登山口の受付けに届けるように頼んで登山道を上下に別れた。
半日ロスしちゃったけど、急ぐ旅でも無いので盗賊のアジトだった洞窟でのんびりした。急いでも次にテントが張れる所まで、明るいうちには着かない筈だからね。姉貴は大きな岩をコツコツ叩いて何かを調べて、ひとつを選ぶと子午棒を大木サイズにして突いた。
「ウン、まあまあかな?」
子午棒を丸太位にして突付いて、また頷くと大きなバスタブが出来上がり。魔法でお湯を張ってのんびりバスタイム。結局、一日ロスにして、山菜尽くしの晩ごはんで登山二日目を終えた。
三日目は、目立った魔物にも会わず予定のキャンプ地まで登り、四日目には山頂に到着した。山頂付近には洞窟がいくつもあったけど、お宝の祠みたいな所は見つからなかった。
「新陸は数百年前に日之出国になった島だから、勝手が違うのかも知れないわね!」
姉貴は地図を見ながら、これからの計画を考えているようだった。
「奥に何かあるよ!」
プランタンが指差した岩壁を姉貴が突付くと、坑道の様な通路が現れた。




