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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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円錐山の島

 馬車での旅は、魔窟攻略で通った道なので、特に目新しい物は無いけれど、かなり大掛かりな盗賊狩りをしたので、道中がとてもスムーズだった。結界札は5枚用意してあるけど、全然出番は来なかった。ある程度の妨害を予想していたので、想定外の距離を稼ぐことができた。

「中途半端な時間で宿に泊まるより、ガンガンすすんでテント泊にしましょうよ!」

僕の提案に皆んな乗ってくれて、3泊4日走って、円錐山の島への港がある集落た到着。途中、盗賊の類いとの交戦は一度も無く、様子を伺っている奴らを牽制して通過。魔物も猫達が気配を消さずにいたので、足止めは、街道沿いにチラホラ見かける産地直売の新鮮なお野菜とかだけだった。魔窟遠征の時は、ほとんど無かったんだけど、盗賊が出なくなったので閉めていた所を再開しているんだって。

 

 遅くに港町に着いて、船と宿の手配。ほぼ週イチの船が、明日出るそうなので早速予約。予定通りにここに着いていたら来週迄待つことになってたんだね!

 宿はかなりの歴史を感じさせる建物で、正直なところ、雨露凌げればいいかって見かけだった。大勢で泊まれる宿がここだけなので、選んたんだけど、古いけど立派って言うか、古いからこその歴史を感じる建物だった。昔、鰊漁で栄えた頃の名残りらしい。建て方が、日之出国っぽいので、ちょっと期待したら、お料理も日之出風。冷酒は無かったけど、姉貴がニッコリする米酒が色々揃っていた。潰れない程度に飲んで明日に備えよう。

 部屋は四人部屋で、姉貴、ショコラ、カトリーヌが同室。ずっと走りっぱなしだったカトリーヌは、ご飯の時からウトウトしていたので、おんぶで連れ帰った。布団に寝かせようとすると、目を覚ました。

「馬車、交代で引こうか?」

シフォンが心配して声を掛けると、

「わたしの馬車だからわたしが引くの!」

機嫌よく引いてくれるので、まあ頑張って貰おうかな?シフォンが馬車に合わせたサイズになると、どう見ても猫のカテゴリじゃなくなっちゃうからね。街中なら即パニックだから、やっぱりカトリーヌだね。

 直ぐに爆睡したようで、朝日と共に目を覚ました。出港まではしばらくあるので、お約束の朝湯に浸かってから朝ごはん。馬車を預かって、港まではちょっとしたお散歩。

 目指す円錐山の島を眺めながら港に着くと船はもう準備が、出来ていた。

「雲行きが怪しいから、ちょっと早いけど、出してもいいかな?」

港のおじさんが走って来た。僕らも準備万端であと2時間もどうやって暇を潰すか考えていたので、丁度良く乗船した。

 船はそれ程揺れず、遠くに雲が見える位で、穏やかなお天気に思えた。2時間程で島の港に近づいた。桟橋に着いて、碇を降ろしていると、いきなり空が暗くなり、大雨と強風が襲ってきた。波も高くなり、

「間に合ってよかったな!」

船頭のおじさんが、暴れる船から降りるのを手伝ってくれた。

 この波じゃあ、北の孤島なんて無理だよね。取り敢えず、宿をとった。師匠からの手紙を持って、漁師さんを探しに行った。船頭さんの情報では、時化の時には、港の側の酒場で飲んでいる可能性が高いそうだ。

「こんにちは、武本(たけもと)さんいらっしゃいますか?」

姉貴と二人で訪れた酒場は、イカツイおじさんとお兄さんで埋まっていた。

「よう、ちびっ子!俺に何の用だ?」

偉そうな態度の、小柄なお爺さんが返事をしてくれた。自己紹介して、師匠の手紙を渡すと、差出人だけ見て、

「おう、引き受けたぜ!」

そう言ってから封を開いた。

「・・・やっぱりか!明日は波もおとなしい筈だ、夜明け前に出るから用意しておけよ!」

姉貴はいつの間にか、カウンターで飲んでいた。僕も武本さんのテーブルに招かれ新鮮なお魚で、熱燗を少し飲んだ。

「明日、早いからソロソロ・・・」

帰ろうとすると、

「皆んなも早いから、平気だ!明るいうちに布団入りゃ大丈夫!」

そう言って、お銚子を追加した。


 昼過ぎまで付き合ってやっと解放。宿に帰ると、船頭さんとか船や港で働いている人が集まって宴会。あらたが司会になって、海の男達ののど自慢大会になっていた。皆んな結構酔っている様だった。明日の出発を告げると、如何にも漁師って感じのガッシリしたお兄さんが、

(たつ)ジイが晴れるってんなら晴れだな。二日酔いは無しだ。」

明日は船を出せないので、潰れるまで飲む予定だったらしい。テーブルに出ていた料理を平らげ、開けたお酒を飲み干してさっと散って行った。因みに、龍ジイって言うのは、武本龍矢さん。港の長老って感じかな?天気予報もしちゃうんだね。

 静かになった宿でお風呂に入って、龍ジイに言われた通り、明るいうちに布団に入った。こんなに早寝する事も無いので、眠れないかと思ったけど、今朝も早かったし、適度に酔っていたのですんなり熟睡出来たみたい。

 朝?イヤまだ真っ暗。宿のお姉さんが起こしに来てくれた。隅々まで手入れされたお部屋やお風呂、美味しいご馳走、初め、昨日の宿よりボロいと思ったのが申し訳無く思ってしまった。島の観光はオフシーズンなせいかもしれないけど、宿だけじゃなく、港を上げて歓迎してくれる様に感じた。外を見ると、キラキラの星が輝いていた。本当に晴れたみたいだね。

 朝ごはんを食べて港に向かった。龍ジイはもう船の準備をしていた。

「なんだ、四天王の1人がエライ変わったかと思ったら、他の3人は全然変わってねえな?」

「え?おっちゃん達も知ってるの?てか、姉貴が変身してたのも解ったの?」

「そりゃあ解るだろ?」

どうして解るのか聞いて見たけど、

「解ったのから、解ったんだ、どうしてって言われたってなあ。」

まあ、気にしない事にしておきましょう。


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