邪竜
おっちゃん達は、流石に百戦錬磨って感じで、至近距離から強い矢を放つ。硬い鱗を貫く矢もチラホラ。多少のダメージは有ったが、羽根を捉えた矢は、有効だった。バサバサと飛んで躱すのも迷惑だけど、羽ばたくと、黒い力が渦を巻くのがとても辛かったので、少しだけ形勢が傾いた。
邪竜は、次の手に出て、黒い息を吐いた。竜巻の様な黒い渦が迫ってきた。ベルが飛竜で払うと、黒い渦は黒い弾丸になり、邪竜の腹をブチ抜いた。もう少しで胴体を2つにするほどの穴を開けたけど、ジワジワと再生し始めた。
愛果と愛葉は白い放水を風穴に浴びせ、再生を妨害した、傷口は塞がらず、黒い力の黒さから、黒光りする鱗に変わっていった。
「コレでどや!」
あらたは、黒さの変わった所を斬り、胴体を二分した。下半部はチリチリ光りながら、尻尾の先まで消えて無くなった。上は腹の部分的からやはりチリチリと光って、消滅して行ったけど、腕を?前足?うん、その付け根の下、胸に当たるのかな?自分の爪を大きくして切り裂いた。胸から下はチリチリと消えてなくなり、残った胸から上には、新しく足と尻尾が生えていた。動き出す前におっちゃん達の矢が、更に間を詰めて撃ち込まれ、動きが鈍い所を姉貴の子午棒が眉間を捉え、ダウンした隙きに浄化、飛び道具の集中砲火でトドメを刺した。
「奥の手も潰したって考えたら、大勝利ね。」
条件つき?姉貴は手放しで喜ぶ状況じゃないと考えている様だった。
「そうじゃな、あんなモノを使役する力があると考えたら厄介な事じゃ。」
ベルも慎重な捉え方だった。
夜明け迄は、まだまだなので、もう一度寝袋に戻った。朝起きてから、魔王の雫を追いかけるので、しっかり眠って体力回復だね。
「いい天気ね!」
夜明けと共に目を覚まし、外で朝ごはんの準備。おっちゃん達、総勢30人も含めて、給食の量を準備する。香りに誘われたナベさんのグループのお兄さん達が起きて来た。
「空いているうちに、ご飯済ませてくださいね!」
森に入って1週間、保存食しか食べて居なかったそうで、簡単な朝食だっけど、凄く喜んでくれた。徐々に起きてくると皆んな同じ反応で喜んでくれた。
「おっ、また腕上げたな!」
おっちゃんも褒めてくれた。一緒に食べながら、
「こんなに精鋭部隊で森に入って、支部は大丈夫ですか?」
心配していたことを聞くと、
「ああ、ちー達が、盗賊を粗方狩ってくれたからな、人里は安心なんだ。あと、『慈子チルドレン』が頑張ってるから、俺達はコッチに集中出来るって訳よ!」
一旦ここで解散して、それぞれ四方に戻って、魔王の雫を調査する事になり、僕等は、来た道を戻る事になった。
大きな魔物の反応も、群れの反応もなく、馬車を隠していた所迄戻った。一旦南国の町に出て、異常が無かったかを確認、漁港にも行って、変な魔物が寄ってきて居ないか聞いてからひと休み。温水プールのある宿で骨休めをした。
のんびりプールに浮かんでいると、トレーニングルームから、お姉さんが二人、息を切らしながらやって来て、更にトレーニングらしく、プールでガチ泳ぎ。しばらくすると、
「あっ!こんにちは、その節はお世話になりました!」
タカシマの取り巻きの二人だった。変身した時はパンパンの身体だったんだけど、見事に絞り込んで、可愛げのあるぽっちゃりさんになっていた。変身の副作用でむくんでいたのが改善されたのと、ここで頑張っている結果だそうだ。タカシマは、むくみが取れても、想像していたキレイなお姉さんには程遠く、自宅に籠もっているらしい。
風香は、お姉さん達を見ると、
「内臓が弱っていますね。」
二人のおなかに手を当てると、薄っすら光って見えて、次の瞬間、お姉さん達はトイレに駆け込んだ。しばらくすると、ポッコリおなかが少し改善された様に見える二人が登場、気分爽快だそうだ。
トレーニングに少し付き合って、のんびりご飯。ベッドでゆったり眠った。
翌朝、買い物をして、音は弟達に差し入れを届け、魔窟経由て北国に戻った。支部に顔を出すと、おっちゃん達はまだ戻っていなくって、魔王の雫の手掛かりは見付けていないらしい。晩ごはんの時間なのでいつもの食堂に行くと、アパートの住人が沢山集まっていて、最近ランクアップした事や、大きな魔物を仕留めた話しとか聞かせてくれた。皆んなたくましくなっていて、おっちゃんが安心して森に来ていたのが納得出来た。
満腹で帰宅。弥生さんに帰着の報告をすると、古そうな巻物を見せてくれた。島の地図らしいけど、書いてある文字が薄くなっているし、何の言葉なのかも解らなかった。師匠の説明によると、先代魔王の墓の地図との事。
「最北端から更に北、水平線よりも北に浮かぶ孤島ってのが定説だけど、その島が実在するかも解らないし、そもそも、墓が有るかってのも確かじゃないんだけどな、復活し損ねた魔王の雫が、大バケするには、先代の亡骸使うしかないと思うんだ!」
魔族の研究とかから考えても、北の孤島説が有力で、魔族の森に手掛かりが無いのなら、島に逃げて力を付けようとしていると考えるのは自然な事に思えた。
「「タカシマのクルーザーで行きましょうか?」」
愛果と愛葉は自分の船を使うような口調で提案した。皆んなその気の様で、おっちゃん達が帰って、森の状況を確かめてから、また南国に向かう事にした。




