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世界でひとりだけのGランク  作者: グレープヒヤシンス
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白竜

 小鬼の巣で保護した女性達は、死人としか名乗ってくれなかった。

「元のお名前は、聞きません。生まれ変わったので、新しい名前を名乗ってはいかがですか?」

僕の提案にメンバーも、おっちゃん達も賛成し、当事者も渋々了承したが思い付かないとの事で、おっちゃんが名付ける事になり、『春』『夏』『秋』『冬』に決定した。

 四季の姉さん達は、死に場所を探すと言って聞かないので、おっちゃんは、西国の尼寺に行って、世間と離れての暮らしを提案した。他の提案よりは受け入れ易かった様で、西国に旅立つ事になり、僕らは護衛に付く事になった。おっちゃんは回収した武器や防具で身元は解っているようで、騎士団を襲った小鬼の群れを駆除した報告で処理して、四季達の旅費と僕らの報酬に回してくれた。


 旅の支度をしながら、依頼を捌いたけど、お使い程度の依頼しか無くちょっと退屈していた。高山にしか生えない山菜取りにでかけた時の事、白い何物かに襲われた。風香が結界で護ってくれたけど、結界ごと吹き飛ばされた、運良く草ムラだったので、大きな怪我もせずに済んだけど、襲われた(・・・・)って言うのは間違いだったようで、白い何物かは辺りを飛び回っていた。苦しそうにのたうち回る白い物は、竜だった。僕が起き上がる迄回復した頃白い竜は、おとなしくなっていた。よく見ると、逆鱗の付近に槍が突き刺さっていた。傷の周りは黒いシミの様になっていて、見ている間にも、シミはジワジワ拡がっていた。

「槍を抜きますから、じっとしていて下さいね。」

『来るな!人間の手に負えるモノでは無い!』

「やって見ないと判らないです!」

制止を無視して槍を掴むと、暗く冷たいイメージが脳に流れ込んで来て、嫌な記憶が鮮明に呼び起こされた。両親がいない事を誂われたり、着たきり雀ってバカにされたり、Gランクだってパーティー組めなかったり、デブって言われたり・・・

『じゃあ、チー坊のおかわりは3回までな!』

デブって言われて、凹んだ時のおっちゃんを思い出した。

『僕、おかわり2回だって、滅多にしないもん!』

協会のロビーが大爆笑した記憶で心の中が暖かくなり、親代わりのじいちゃん、ばあちゃんの笑顔や、着たきり雀じゃ可哀想とお下がりをくれたお姉さんが思い浮かんだ。気が付くと、槍は抜けて、竜のシミも傷も消えていた。真っ黒だった槍も僕が握っている所から煤を払う様に銀色に変わって行った。

 竜は眩しく光ると、人間の女性の姿になった。薄っすら光る肌は、全て露出したままで、美しい曲線は同性の僕でも、ウットリ見つめるくらいの魅了を発していた。

「そなた、人間で言うSSランクとか言う者か?」

「いえ、Fランクです!ホントは、Fの魔法も出来ないんで、Gランクって言われてるんですけどね!」

「そうか、人間のモノサシでは測れない何かを持っているようだな。」

そう言うと、竜は自分の小指の爪を噛みちぎった。口の中からの摘み出すと、50センチ程の竜の爪になっていて、

「槍をこちらへ。」

槍を渡すと、爪と重ね合わせ、眩しく光ると槍だけが残っていた。その槍で手の甲を少し抉ると洗面器程の鱗になった。

「助けてくれた礼じゃ、馬車に貼り付ければ装甲車になるぞ。そちらの3人も近う寄れ!」

「槍はその方じゃな。」

音に槍を渡すと、僕を抱き寄せて、

「乳を吸うのじゃ。」

言われるがままにしゃぶり付くと、冷めたミルクティーのような微妙な味が口の中に拡がった。

「竜の生き血を啜ると、不老不死になれると言う話、聞いたことあるじゃろう?あれは嘘じゃ。人に寄っては若返りや老化防止になるようじゃが、主な効能は能力向上じゃ、乳を吸えば同じ効果がある、魔力や体力がかなり上がる筈じゃ!」

交代して4人目に愛菜が抱き上げられると、

「竜って哺乳類でしたの?」

「我は神獣、そなた等に合わせておるのじゃ。」

4人のパワーアップを確かめたが、僕の魔力は相変わらずで、他は格段の違いだった。

「ひとつ、頼みがあるのじゃが・・・」

「僕らでお役に立てるんならなんなりと!」

「小鬼の巣に、我の娘が捕まっておる・・・」

「お助けしましょう!」

「イヤ、トドメを刺して欲しいんじゃ、さっき我に付いたシミを見たじゃろう?あれが脳を染めると、魔族に支配されてしまう。自らが暴れ災厄を起こしたり、小鬼の混血で騎竜を産んで魔族の力にされてしまうんじゃ。我の力で片付ける事も出来るが、国ごと焼いてしまう恐れがあるのと、流石に我が子を手に掛けたくはないのじゃ。」

「さっきみたいに僕が槍を抜いたら元に、戻るかもしれないでしょ?先ずはそっちを試しましょ!」

白竜さんは人の姿でも戦えると言うので、風香の予備の着替えを着てもらって小鬼の巣に向かった。白竜さんと風香に囮になって貰い、僕らは3人で巣に潜入した。見張りの小鬼達は、音の新兵器でサクッと片付けた。檻の中の娘竜は頭を残して真っ黒になっていた。無数に刺さった矢が黒いシミの素で、檻に入って2本ずつ握って、抜いて行った。暗く冷たいイメージは流れて来るけど、さっきみたいに嫌な気分にならないうちに、矢を始末出来た。首に近い所から抜いて、半分位抜いた所で娘竜が目を覚ました。

「小鬼達は外でお母さんと僕の仲間が相手してるから、安心してね!」

全部抜き取って、

「僕位に小さくなると檻から出られるんだけど、変身出来る?」

娘竜は小学生か、もうちょい幼い位の女の子になった。悠々と檻の隙間を抜けた。僕のジャケットをコートの様に着せて巣の外に出ると、小鬼達はすっかり片付けた所だった。竜の母娘は再会を喜んだ。母竜はアンヌといい竜の生息域に帰るそうだ。

「カトリーヌ、お前は人間の世界で修行するが良い。この者達を助けてしっかりした大人になりなさい。」

えっ?すごく可愛いけど、僕らを助けるって無理じゃない?アンヌは僕の反応は予測していた様で、

「カトリーヌ、馬になりなさい。」

フワっと宙返りすると、立派な白馬に変身した。大きくなって驚いたけど、竜の時の3分の1位なのでそんなに驚く事も無いのかな?小鬼の耳と武器を回収して協会に戻った。

 小鬼の耳を提出すると『黒小鬼』って言う種類で報奨金が2倍との事。有り難く頂戴してアパートに帰った。

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